2010年以来、様々なアプローチで女を描いてきた、ペヤンヌマキ主宰の演劇ユニット「ブス会*」。その新作『エーデルワイス』が2019年2月27日に東京芸術劇場シアターイーストで開幕した。本作品は、「ミューズ募集」とうたったオーディションに現れた鈴木砂羽が見事選ばれ、主演を務める。

(写真:宮川舞子)

(写真:宮川舞子)

中世のお城をイメージした舞台セットに、緑のドレスを着た鈴木砂羽が現れ、まるでおとぎ話が始まるかのような幕開き。その後、舞台は現在になり、スランプに陥っている漫画家アキナ鈴木砂羽)の代表作である『たたかえ!いばら姫』のドラマ化について、大切な作品を他人の手に渡すのは嫌だと言うアキナ編集者・竹山(高野ゆらこ)が説得しているシーンから始まる。竹山が去り、アキナが本を読み始めると、舞台は平成7年になり、美大に通いながら東京のカフェで働く18歳のミユキ(藤井千帆)が登場し、物語はアキナの生きる「現在」と、アキナの作った物語の登場人物であるミユキの生きる「物語」が同時に進んでいく。

(写真:宮川舞子)

(写真:宮川舞子)

カフェで一緒に働いているウェイトレス・セイ子(高野ゆらこ)に、半ば騙されるように連れて行かれたクラブで、小説家を目指す大学生マサヤ(大和孔太)と出会う。二人は同棲を始める。幸せな二人を愛おしそうに見つめるアキナ。しかし、幸せは長く続かない。ミユキが20歳になったときには、マサヤは大学を中退しバイトもせず、家賃を滞納し昼ご飯代までミユキに出して貰うようになっていた。挙げ句の果てに風俗に通っている事が分かってしまう。マサヤは、ミユキの思い描いた王子ではなく、魔物だった。

(写真:宮川舞子)

(写真:宮川舞子)

一方「現在」のアキナは、竹山に紹介された20歳近く年下の役者志望の青年・コウキ(大和孔太)と何やらいい感じに。物語と現在がリンクしながら話が進んでいく。

23歳、編集者になったミユキは、マサヤと別れ、憧れの漫画家ガンダーラ金子(金子清文)と付き合うが、ガンダーラ金子には妻子がいて…。ミユキとアキナの物語は、さらにたくさんの男達と出会いながら進み、思わぬ結末を迎える。

(写真:宮川舞子)

(写真:宮川舞子)

18歳、20歳、23歳、29歳、43歳と、様々な年齢で出会う男達。その男達に振り回され、焦りながらも「何者でもない私」が、「何者にでもなれる私」になるために強かに生きていく物語。物語の最後、劇場は澄み切った愛情で包まれた。劇場を後にする時、きっと真っ直ぐと前を向く力をもらえる、そんな作品である。

漫画家として地位を確立し、本公演のキャッチコピーでもある「高嶺の花とは、崖っぷちに咲く花。」と言う女性像を惨めだが、愛おしく美しく演じるアキナ役の鈴木砂羽。独立した女性の見せるふとした弱さや、醜さがどうしようも無く愛おしい。

ミユキ役の藤井千帆は、初々しい18歳から、経験を重ね、女性としての焦りを感じさせる29歳までを見事に演じ分けている。編集者の竹山と、セイ子役の高野ゆらこの放つ言葉には、物語の中での重要な要素が含まれていて、重みがある。高野演じる二人の女性もまた、強かだ。

(写真:宮川舞子)

(写真:宮川舞子)

脇を固める男性陣もキャラが濃く、バラエティ豊かである。小説家志望のマサヤと役者志望のコウキ役の大和孔太は、綺麗な顔立ちに似合う好青年から、心にフラストレーションを感じる青年になる二人を好演している。刑務所帰りの木村役の水澤紳吾はコミカルな演技で笑いを誘う。出版社の後藤と夫候補今市役の後藤剛範は鍛え抜かれた肉体を披露し、ある場面では後藤にしか出来ない一芸で客席を沸かす。テレビプロデューサーの伊達と、エロ本の編集者役の土佐和成は、男の生々しさを感じさせながらも独特の色気で舞台に色を添えている。ブス会*出演経験のある、カフェマスター漫画家役の金子清文は、大人の色気とさすがの存在感を感じさせる。

(写真:宮川舞子)

(写真:宮川舞子)

ペヤンヌが、「ファンタジーでコーティングした」と言う本作は、「大人のおとぎ話」として進行する。エンタメの要素も含んでおり、ミユキがクラブに連れて行かれるシーンでは、客席が舞台を囲むように置かれているため、まるでクラブの中にいるかのような感覚になる。他にも、役者が客席前を縦横無尽に動き回ったり、どこからともなくマイクが登場して歌い出したりと、見所満載だ。鈴木砂羽と最強のタッグを組み、ブス会*として新たな挑戦になるというペヤンヌマキ渾身の新作『エーデルワイス』は、3月10日(日)まで東京芸術劇場シアターイーストで上演中。

<ペヤンヌマキ開幕コメント

鈴木砂羽さんとご一緒することに決めた時、正直最初はビビってました。怖そうだなあ。怒られたりするのかなあ。それもブス会*っぽいなとも思いつつ。ところがどっこい、待っていたのは創作することの喜びに満ちた共同作業でした。 『エーデルワイス』は私ペヤンヌマキと鈴木砂羽さんの人生をエンターテインメ ントに昇華させることを目指して作りました。そして素敵なキャストスタッフの 皆さんのおかげでとてつもない力を持った作品が今誕生しようとしています。 ブス会*版大人のおとぎ話、どうぞご期待ください。 観た人が、自分でかけた呪いから解放され少しでも生きやすくなるようになればと願っています。」

(写真:宮川舞子)

(写真:宮川舞子)

取材・文=一ノ瀬ふみか

第7回*ブス会『エーデルワイス』