シービリーブス杯に参加している“なでしこジャパン"が、初戦で世界ランク1位のアメリカと2-2の引き分けに持ち込んだ。アメリカはラノピーやモーガンといった主力選手のゴールで2度のリードを奪ったが、日本もベテランの中島と途中出場の籾木のゴールで同点に追いついた。

俊足FWのモーガンは日本の天敵でもあるが、アメリカ相手に敵地で引き分けたことは6月のフランスW杯に向けて明るい材料と言っていいだろう。高倉監督は新戦力を試しながら結果も求め、フランスW杯のメンバーを試行錯誤していると思われる。監督が人選に悩むような活躍を、ブラジル戦(3月2日)とイングランド戦(3月5日)でも期待したい。

そのフランスW杯(6月7日~)に先だって行われるのがU-20W杯(5月23日~6月16日)で、今年はポーランドで開催される。まだメンバーは決まっていないが、2月25日の組み合わせ抽選の結果、日本はグループBメキシコイタリアエクアドルと戦うことになった。

チームは3月中旬に海外遠征を予定していて、4月のトレーニングキャンプを経てメンバーを決めることになっているが、中心選手として期待のかかる久保建英について、FC東京長谷川監督は2月23日川崎F戦後にこんなコメントを発した。

「堂安(律)がヨーロッパに行く前ぐらいのレベルには来ている。Jで経験を積んで、U-20W杯でプレーできればすぐにヨーロッパから声がかかるぐらいのレベルに来ていると思います」

今シーズンは右MFとしてレギュラーに定着しそうな久保にもかかわらず、指揮官はチームからの離脱を認めた。そこで、たまたま2月27日FC東京を取材する機会があったので、長谷川監督に「久保だけでなく、今シーズン獲得した田川亨介、さらには平川怜と3人も呼ばれる可能性があるけど、それでも出すのか」と聞いてみた。

すると長谷川監督は「海外にチャレンジできるなら、いいんじゃないですか。もうクラブで止められないですし、しょうがないです。そのために外国人選手を獲りました」とU-20日本代表に全面的に協力する意向を示した。

そこで、6月14日(~7月7日)からはブラジルでコパ・アメリカが開催される。田嶋JFA(日本サッカー協会)会長は「Jクラブには23歳以下の選手の出場をお願いする」とアジアカップ期間中に話していた。そこで同様の質問を長谷川監督にぶつけたところ、意外にも「クラブにはクラブの事情がありますから」と否定的ともとれる言葉を残した。

推測するに、アジアカップAFC(アジアサッカー連盟)の、U-20W杯などはFIFA(国際サッカー連盟)の公式大会である。それに比べてコパ・アメリカCONMEBOL(コンメボル=南米サッカー連盟)の公式大会ではあるものの、日本とカタールはゲストにすぎない。過去には1999年に初出場し、2011年は東日本大震災のため辞退したこともある。

11年に辞退した経緯はまた別の機会に譲るとして、リーグ期間中での大会だけに、参加選手はJ1リーグなら最大4試合の欠場となる。AFCFIFAの公式大会ではない“ゲスト参加"の大会だけに、23歳以下とはいえ主力選手の出場をためらう監督も多いことだろう。

すでに大迫の所属するブレーメンは出場を拒否しているし、当初は森保ジャパンに初招集かと話題を提供した香川も新天地ベジクタシュで結果を残しつつあるため、オフシーズンのコパ・アメリカに参加するかどうか微妙なところだろう。

参加メンバーにしても、GKなら誰を呼ぶのか(呼べるのか)。23歳以下でJ1クラブのレギュラーGKは1人もいないのが現状だ。日本代表GKの東口(G大阪)やシュミット・ダニエル(仙台)、元代表の中村(柏)は主力選手だけにクラブも招集を拒むだろう。消去法からいくと、U-23もしくはU-20の日本代表候補からの選出となるが、そうなるとポーランドでのU-20W杯から連続出場になる。

GKのポジション1つをとってみても人選の難航が予想されるコパ・アメリカ。果たしてJリーグの開催中に参加する意義やメリットがあるのかどうか。そしてJクラブはどこまで協力できるのか。いまから難航が予想される森保ジャパンのメンバー選考である。


【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
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