プレミアリーグ第29節、トッテナムvsアーセナルの“ノースロンドンダービー”が2日にウェンブリー・スタジアムで行われ、1-1のドローに終わった。

今季2度目の連敗で優勝戦線から脱落した3位のトッテナム(勝ち点60)と、3連勝で復調気配を漂わす4位のアーセナル(勝ち点56)による、トップ4争いの行方を左右する重要なダービーだ。

リーグ戦4連勝に、チャンピオンズリーグ(CL)ラウンド16初戦でのドルトムント相手の快勝と勝負強さを発揮してきたトッテナム。だが、奇しくもエースFWケインが復帰した直近のリーグ戦ではバーンリー、チェルシー相手に痛恨の連敗。首位のリバプールと2位のマンチェスター・シティとの勝ち点差が8ポイント以上に広がり、優勝争いから脱落。その一方で、4位以下との勝ち点差が大きく縮まっている。3位死守に向けてリバウンドメンタリティが求められるホーム開催のダービーに向けてはチェルシー戦から先発3人を変更。ベン・デイビス、ウィンクス、ラメラに代えて負傷明けのヴェルトンゲン、久々先発のワニャマ、ローズが起用され、[3-4-1-2]の布陣で臨んだ。

一方、アーセナルは直近の公式戦10試合で4敗と安定感に欠けるものの、リーグ戦ではハダースフィールド、サウサンプトン、ボーンマスと格下相手にきっちり勝ち切って3連勝を達成。とりわけ、前節のボーンマス戦では悩めるMFエジルの約4カ月ぶりのゴールを含む今季最多タイの5ゴールを奪っての大勝を飾り、チーム状態は上向きだ。そのボーンマス戦からは先発5人を変更。右サイドバックにムスタフィを起用したほか、オーバメヤン、エジルらをベンチに置きラカゼットラムジーらを先発起用。システムも[4-2-3-1]に変更した。

互いに相手の布陣を窺いながらの入りとなった中、開始2分にアウェイのアーセナルにファーストチャンス。ボックス手前でイウォビが入れたパスが相手DFにディフレクトしてゴール前にこぼれると、これをフリーのラカゼットが反転からダイレクトボレーで狙うが、これは枠の右に外れる。

その後は球際でバチバチとやり合いながら互いに要所で守備のギャップを突きながら徐々にゴール前でのプレー機会を増やしていく。その流れの中でミスから試合が動く。16分、アーセナルの自陣深い位置からの長いクリアボールをハーフウェイライン付近のDFダビンソン・サンチェスが頭で撥ね返しに行くが、やや当たり損ねたボールがラカゼットに渡る。ここでラカゼットがすかさずスペースに走り込むラムジーにラストパスを通すと、そのままボックス内に持ち込んだラムジーがワニャマ、GKロリスを冷静にかわして無人のゴールへ流し込んだ。

チェルシー戦に続く守備陣のミスから先制を許したトッテナムはリスクを冒して前に出る。24分には相手陣内中央右で得たFKの場面でエリクセンからのクロスをケインが頭で合わせてゴールネットを揺らすが、これは惜しくもオフサイドの判定に。その後は中央を締めて堅固な守備ブロックを築くアウェイチームに対して “持たされる”状況が続く中、31分にはボックス左でエリクセンがようやくファーストシュートを放つが、これは枠の左に外れる。

前半終盤にかけても緊迫感のある攻防が続く中、41分には久々にカウンターを成立させたアーセナルがボックス左に侵入したイウォビのシュートでゴールに迫るが、ここはGKロリスビッグセーブで阻止。その直後の44分にはトッテナムに続けてビッグチャンス。ボックス手前右でボールを持ったケインの浮き球パスに反応したエリクセンがDFの背後を取ってゴール前に抜け出しボレーシュートもGKレノがビッグセーブ。さらにこぼれ球をムサ・シソコが枠に飛ばすが、再びレノが驚異的なワンハンドセーブではじき出して前半はアウェイチームの1点リードで終了した。

迎えた後半、先に動きを見せたのはアーセナル。コンディションの問題かグエンドウジを下げてトレイラを同じセントラルMFのポジションで起用した。

後半もトッテナムがボールを持つ展開が続くが、先に決定機に持ち込んだのはアーセナル。53分、イウォビを追い越してボックス左ライン際に抜け出したモンレアルがマイナスの折り返し。これをゴール前のラカゼットが右足インサイドで面を作って合わせるが、シュートは枠の右に外れる。すると、直後の55分にはトッテナムに決定機。FKの流れからボックス右でクリアボールに反応したアルデルヴァイレルトがボレーシュートを狙うが、これは枠の右に外れて30歳のバースデーゴールとはならず。

こう着状態が続く中、流れを変えたい両ベンチは60分付近に動きを見せる。リードを守りつつカウンターの脅威を強めたいアーセナルはラカゼットを下げてオーバメヤンを投入。対して攻め手を見出したいトッテナムはワニャマを下げてラメラを投入。ラメラをトップ下、エリクセンセントラルMFに下げる交代で攻勢を強める。

この選手交代後も試合展開に大きな変化はなし。それでも、68分には右サイドを突破したラメラの浮き球クロスに守備のムヒタリアンが被ると、ゴール左でフリーのローズに絶好機が訪れるが、ここはファーストタッチがうまくいかず、打ち切れない。

互いに攻め切れない状況の中、アーセナルはラストダービーで大仕事をやってのけたラムジーを下げて72分にエジルをピッチに送り出すが、この直後に試合が動く。74分、トッテナムのFKの場面でキッカーのエリクセンのボールに反応したケインがDFムスタフィに後ろからプッシングで倒される。ケインはボールが出た時点でオフサイドラインを越えているように見えたが、主審はPKを宣告。これをケインが冷静に決め切って微妙な判定からホームチームが試合を振り出しに戻した。

その後は再び試合に熱気が戻ってきた中、互いに攻め合うシーンを作るが相手の集中した守備を上回るような攻撃を見せられず。だが、89分にはムヒタリアンのスルーパスに抜け出したオーバメヤンがボックス内でDFダビンソン・サンチェスと交錯。やや厳しい判定ながらも先ほどのPKの帳尻合わせかアーセナルにPKが与えられる。

残り時間を考えると、これを決めてアーセナルのシーズンダブル達成かと思われたが、トッテナムの守護神がチームを救う。キッカーのオーバメヤンが左隅を狙って蹴ったシュートをGKロリスが見事に阻止。さらにこぼれ球を拾ったイウォビの左からの折り返しオーバメヤンが反応も、今度はDFヴェルトンゲンの決死のゴールカバーで防いだ。

その後、試合終了間際にローズへの足裏を見せた危険なタックルでトレイラが一発退場となるダービーらしい一幕もあったが、1-1でタイムアップ。守護神の活躍で辛くもリーグ3連敗を逃れたトッテナムが今季初のドロー。一方、試合展開を考えれば、勝ち点3がほしかったアーセナルは痛恨の勝ち点逸となった。

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