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 また髪の話をしてしまうわけだが、人生の万が一に備えて、様々な保険が運用されている。この度新たなる保険に加わったのが髪の保険だ。

 万が一に備えて、今ある毛包を摘出してヘアバンクに預けておき、ハゲてしまったときの治療に使うのである。

 生命保険、傷害保険、火災保険、そして今後は髪の毛に保険をかけることが常識になるかもしれない。 

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将来の髪への保険「ヘアバンク」

 イギリスのヘアクローンHairClone)社は、頭皮から毛包を摘出・保管するというヘアバンクを構想している。

 ヘアバンクに毛包を預けてしまえば、万が一、髪の毛が薄くなってしまっても心配無用だ。培養・増殖させた元気な細胞を移植し、髪の成長を促すことができるからだ。

 こうした類のバンクとしては初となる試みで、ヘアクローン社は「その後の人生の保険」と宣伝している。

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image credit:HairClone

不測の事態に備えられる!


 ヘアバンクは、自分自身の毛包をいつでも、在庫切れを気にすることなく利用できるようにするシステムだ。不測の事態への備えとしての保険と呼ばれるのもそのためである。

 ヘアクローン社のメディカルディレクター、ベッサム・ファージョ(Bessam Farjo)博士は、「こうした治療のポイントは、薄くなる髪を若返らせ、必要なだけの毛を再生させることです」と説明する。

 ファージョ博士によると、これまで同じようなシステムが構想されたこともあったが、培養した毛包がすぐに機能を失ってしまうという難点があったのだという。

 ところが、最近の研究によって、毛包の機能を損なうことなく培養・増殖することがついに可能になった。

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image credit:HairClone

毛包に含まれる真皮乳頭の細胞を増植して移植


 ヘアクローン社が採用する方法では、毛包に含まれている真皮乳頭という細胞を利用して髪を増殖させる。

 真皮乳頭は毛包の下の方にあり、皮膚表面の細胞と一緒に機能して毛幹(つまり髪の毛)を形成する機能を担っている。

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 ハゲが徐々に進行するのは、真皮乳頭から細胞が失われて毛包が小さくなり、髪が細く、短くなってしまうことが原因だ。

 そこでまず、患者の頭皮から毛包を100個ほど摘出し、これをマイナス150度に保たれた特別な容器で保管する。

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 そして将来的に患者の髪が薄くなり始めたら、毛包を解凍し、真皮乳頭を増殖。

 それから、真皮乳頭細胞を痩せ衰えてしまった頭皮の毛包に補給してやる。こうすることで、患者の頭皮を若返らせ、髪の成長を促すのである。

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髪の保険をかけるなら若いうちがオススメ


毛包の摘出は、患者が将来に備えておきたいと思ったときにいつでもできる。

 だがファージョ博士は、30代や20代の人はおろか、人によっては10代後半にもなれば毛包の摘出を受け、将来への保険をかけておくことをオススメしている。

 毛包がまだ元気な若いうちにこれを保存しておくことが望ましいからだ。

 博士は、早いうちに髪の若返りの準備を行っておけば、きちんと効果があるだろうことを確信しているが、摘出の時点で毛包があまりにも痩せてしまっていた場合には、効果が期待ができないケースもあることを認めている。

 よって若ハゲの家系の人なら急がねばならないということだ。

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数週間以内に認可取得を目指す


 ヘアクローン社は、数週間以内に人体組織管理局(Human Tissue Authority)から認可を得て、すぐにでも患者へのコンサルティングを開始したいと考えている。

 一応言っておくと、ヘアバンク・システムは1度手続きをすれば完了という類のものではない。保管してある毛包を利用するにはいくつかの手順を踏まねばならず、その都度結構なお金がかかる。

 たとえば、きちんと髪をふさふさに保つには、年に3~5回ほど治療を受ける必要がある。

 またヘアクローン社が提案する予定のお値段は、最初の施術に2500ポンド(約37万円)、その後保管料として毎年100ポンド(約1万5000円)である。

 さらに肝心の移植にかかる費用はまだ明らかにされていない。だが、少なくとも最高レベルの植毛を受けるよりはお得なお値段になるだろうとのことだ。

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 男性型脱毛症は男性の8割、女性でも5割がどこかの時点で進行すると考えられている。

 ファージョ博士によると、植毛手術の市場は2023年までに2兆6000億円まで拡大するだろうと予測されており、今まさに急成長中の分野なのだそうだ。


References:HairClone – Capital Cell/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52271676.html
 

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