夫が同じチームの部下と不倫関係に陥っていたーー。怒りが収まらない女性から「不倫相手の女性の部署は変えられないのか」と弁護士ドットコムに相談が寄せられています。

夫いわく、2人でチームを組んで出張に行く事が多く、何度も同じホテルに泊まっているうちに不貞関係になったそう。不倫発覚後、夫は「別れる事になった、不倫相手も会社を辞める事にする」と説明してきました。

しかし、部下は未だに退職もせず、夫と同じチームで働いており、女性は「同じ部署で働いてるのは私としては気に入りません」と憤っています。

そこで、女性は夫の上司に違う部署に変えてもらうよう個人的に相談しようとしています。こうした行為は、問題ないのでしょうか。氏家信彦弁護士に聞きました。

●上司に相談「問題になる可能性」

ーー妻が夫の上司に個人的に相談する行為は問題になりますか

はい。問題になる可能性が高いので、夫の上司に相談するべきではないと考えます。

ご相談者の女性にとって、夫と相手の女性との不倫は許しがたい上、相手の女性が辞めないで同じ部署にいるままであれば、憤るのも当然であり、夫の上司に相談したくなる気持ちはよく分かります

しかし、この場合、女性は、夫らに対し、慰謝料請求ができるものの、相手の女性の配置換えや退職を求めるなどの法的請求権はありません」

●夫などのプライバシーなどを害する恐れ

ーー上司に話すことでどんなリスクがありますか

「不用意に不倫のことを夫の上司に話すのは、夫及び相手の女性のプライバシーその他の法的利益を害し、紛争が深刻化して解決から遠ざかるおそれがあります。

夫との婚姻を継続するからこその要望とお察ししますが、相談者の女性が、夫の出世に支障となり得る情報を夫の上司に伝えることにより、夫の減収、ひいては相談者自身の家計の悪化に繋がるおそれがあることも、考慮していただく必要があります」

●念書「退職を義務付けるものではない」

ーーでは、部下本人に念書を送るのは有効な手段ですか

「相手の女性に、『一定の期限までに会社を辞める』等を誓約してもらうために念書を送るのは、一定程度、有効な手段であると思います。

しかし、退職するか否かは相手の女性の意向次第です。仮に念書にサインを得ても、それに違反したからといって、退職を義務づける法的請求権までは認められません」

ーー妻に打つ手はないのでしょうか

「退職しない場合は精神的苦痛の軽減が不十分であるなどの理由で、慰謝料の増額を求めたい等の要望を相手の女性に伝えて、再考を促すことが考えられます。

また、婚姻を継続する夫に対し、自らの苦しみが続いていることを率直に伝えて、夫を通じて相手の女性に真摯に検討するよう促すことも、一つの方法であると思います。

もっとも、退職をするかしないかは個人の自由のため、強制的に退職をさせることまではできません」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
氏家 信彦(うじいえ・のぶひこ)弁護士
東京大学法学部卒。東京と新潟で法律事務所に勤務後、平成24年に現事務所を開設。平成29年新潟県弁護士会副会長。遺言・相続、交通事故、離婚等の個人案件のほか、契約書作成、労働問題、企業法務、不当クレーム対策、民事介入暴力対策等まで、幅広く対応している。
事務所名:新緑法律事務所
事務所URL:http://www.shinryoku-law.com/

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