2020年の教育改革を前に、非認知能力やEQといった言葉を耳にすることも多くなったと思います。ですが、EQについては、まだ耳慣れない方も多いのではないでしょか。

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心の知能指数とも言われるEQの高い人間は、仕事上の成功だけでなく、人間関係においても円滑な関係を構築できると言われています。

これからの時代、人に代わってAIが台頭する場面も増えていくでしょう。それでも、いくらAIが発達しても、人間でなくてはできない仕事は残ります。これからの時代は、より人間的であることが求められていると言えるかもしれませんね。

『子どもの未来が輝く「EQ力」』の著者である浦谷裕樹さんが主席研究員を務めるEQWELチャイルドアカデミーでは、「自己肯定感、やる気、共感、自制心、やり抜く力」の5つに特にフィーチャーした幼児教育を行っています。

この5つの要素は、単なる頭の良さではなく、たくましさであったり、生きる知恵であったり、どれもこれからの社会を生きていく上での欠かせない要素と言えます。

家庭は最小単位の社会です。となると、EQの高い子どもに育てるには、幼いうちからの家庭での子どもとの関わり合いが重要になってきます。

『子どもの未来が輝く「EQ力」』を参考に、今日からでもできる家庭でのEQ力の高め方をご紹介していきます。

EQとは?

EQとは、Emotional Intelligence Quotientの略で、知能指数を意味するIQに対して、情動指数とも訳されます。

EQという言葉は、科学ジャーナリストで心理学者でもあるダニエル・ゴールマンの著書によって、主にビジネスの分野で注目を集めました。教育の分野でEQの重要性も聞かれるようになってきたのは、近年になってからのことです。

2020年の教育改革に向けて、文部科学省は、教育によって子どもが身につける新たな要素・能力として、「学びに向かう力、人間性を涵養すること」を打ち出しました。

これまで日本の教育は「知能・技能」に重きを置いていました。知能を計るのがIQであることに対し、人間性を計るのがEQになります。時代はIQからEQへと舵を切りはじめた、と本書の著者、浦谷さんは断言しています。

親子で学ぶことが大事

EQWELチャイルドアカデミーでは、6歳頃まで保護者が子どもと一緒にレッスンに参加します。

まず親が子どもとの触れ合いを楽しむことを重要視し、そのためにサポートをするのは「保護者の精神的な安定が、子どもの社会能力の発達に影響を与える」という筑波大学の安梅勅江教授の研究結果をベースにしているからだそうです。

子どもを大事にする風潮は高まっていますが、保護者、特に母親に社会が厳しい目を向けることは珍しいことではありません。

いざという時に保育のプロに相談ができ、そのうえで子どもの情動を育んでいける環境は理想的ですね。

EQ力を育てる8つのメソッドとは?

浦谷さんは、子どものEQ力を高めるために、次の8つのメソッドを推奨しています。

1. 子どもを「否定しない」

子どものありのままを受け入れることです。親はとかく子どもの欠点ばかり目についてしまうものですが、そういう時は、まず深呼吸、そして「まあ、いいか」と言ってください。
短所を責めるのではなく、長所を伸ばすことに力を注げば、子どもの自信につながるでしょう。

2. 「夢中力」を育む

子どもはなにかに夢中になると、我を忘れて没頭してしまうことがあります。そんな時は、「この子は今、EQ力を育んでいるんだな」と、できる限り邪魔しないでいてあげましょう。夢中になった時に発揮する力は、教えて身につくものではないのです。

3. 「ほめ方」「叱り方」のルールを知る

ほめることの重要性はよく聞かれますが、ではどうほめたらいいかについては、あまりよくわかっていない人も多いのでは? 叱り方にしてもそうです。
ほめ方、叱り方が子どもの未来に与える影響については、あとで詳しく取り上げます。

4. 適切な「言葉かけ」をする

浦谷さんは、言葉かけは確信をもって行うべきと書いています。つい、なにも考えずに声を発してしまいがちですが、今のこの子にはどんな言葉が必要なのか、考えてから発する習慣をつけたいものですね。

5. 「賢明な育て方」に挑戦する

子育てには優しさと厳しさの両方が必要です。子どもが高みを目指そうと思えるのは、励ましながら、受け止める親のサポートがあってこそ。

正しい「ほめ方」「叱り方」?

6. 「触れ合い」を効果的に使う

特に幼児期の子育てでは、触れ合いは必要なだけでなく、お互いに幸せな気持ちになれますよね。言葉がなくてもすぐにできるところも素敵な点です。

7. 「やり抜く力」を育てる

困難なことに立ち向かい、諦めずにやり抜く力こそ、EQ力そのものです。

たとえ能力があっても、自分に自信が持てなかったり、がんばっても報われないと思い込んでいるマインドセットでは、やり抜くことはできません。そのためには、子どもの頃から柔軟なマインドセットを育てることが重要になります。

8. 「率先垂範」の姿勢を学ぶ

子どもは親の背中をみて学ぶもの。親みずからが勉強したり、新しいことを学ぶのを楽しむ姿を見せることが、子どものなによりの学びになります。

正しい「ほめ方」「叱り方」を知るべし

人の脳は、何かをすることでほめられると、快感(ドーパミンが放出される)を得て、またその快感を味わいたいがためにまたその行動を繰り返したくなる、という性質があります。このプロセスは「強化学習」と呼ばれています。

まずは、子どもが自分から興味を持ったことから始めてみてはいかがでしょうか。子どもの、関心のあることへののめり込みはすごいものがありますよね。

さて、ほめることは大事ですが、ほめ方にも、さらに子どもを伸ばすほめ方と、そうでないほめ方があります。

どちらのほめ方が、子どもの学力を上げることに効果があると思いますか?

正解は、一時間勉強したらほめる方です。

なぜか。前者が子どもの「努力」をほめるのに対し、後者のテストの点数をほめるのは、「結果」をほめることになります。

努力をほめられた子どもは、ほめられるという報酬を得るために何をすべきかが明確にわかっています。本を読んだり、宿題をしたり、具体的なことをすればいいのです。

それに対し、結果をほめられた子どもは、何をすべきか具体的な行動は示されていません。始めに努力せずにいい点数を取れてしまう子どもが、後々伸び悩むことがありますが、これは結果ばかりほめられた弊害かもしれませんね。

そして、ただやみくもにほめればいいというわけではありません。時には叱らざるを得ないこともあるでしょう。そんな時は、次の4つの指針を覚えておきましょう。

  1. 叱る基準を明確に
  2. 叱るのは1分以内に
  3. 昔のことを、持ち出さない
  4. 間違った「行為」を叱る

感情的に叱るのは叱るのではなく、怒っているだけです。子どもに対して感情的になってしまいそうな時は、少し時間をおいて落ち着いてからにした方がよさそうですね。

特に4は、子どもの人格を否定するような言い方だけはしないように気をつけたいところです。

忙しいパパを巻き込むには?

パパを巻き込むには?

子育てでありがちなのが、仕事に忙しいパパが蚊帳の外になってしまうこと。たまに子どもと一緒にいても、言うことがママと違ったりすると、子どもは混乱してしまいますよね。

しかし、パパにはパパしかできない役割があるのです。

あるサルの研究では、子ザルが成長してもいつまでも母親ザルが密着していた場合、人間でいうマザコン状態になり、同性とはなじまず、積極的に異性にアタックすることもしなくなってしまったそうです。

パパならではの子どもとのスキンシップと言えば、肩車や「高い高い」といった遊びではないでしょうか。

これらの遊びは、大人と同じ目線、あるいは上からの目線を体験することで、物事をさまざまな角度から見る能力や空間認識能力を、子どもにつけさせます。

あるいは「俯瞰力」ともいえるこの能力は、多くの物事に秀でたり、人の上に立つ人が持ち合わせている能力と言えるでしょう。

さらに、パパにとってもいいことがあります。子どもとじかに触れあうことで、パパにもオキシトシンというホルモンが増えます。

このホルモンは、通称愛情ホルモン、もしくは幸せホルモンとも呼ばれ、母乳を分泌させることでも知られています。オキシトシンが増えたパパは、より我が子に愛情を感じると同時に、父親としての自信が深まり、その結果、より子育てに積極的に関わるようになります。

子どものEQ力を高めるためには、パパにEQは大切という知識を知ってもらうよりも、子どもと触れ合う時間を増やすことから始めるといいですね。たとえば休日は思い切って、子どもをパパに任せてしまうのも一案です。

子どものEQ力を高めるには、難しく考えるよりも、親自身が、子どもと一緒にいられる時間を楽しむことが大切なようです。

まずはいろいろやってみて、うまくいかなかったら、夫婦で相談して別の方法を考えるなど、試行錯誤してみてくださいね。

子どもにただ「勉強しなさい!」と言っていた時代は終わりました。

子どものEQ力を育むことで、親のEQ力も高まると、浦谷さんは本書で言っています。どうせなら、楽しんで、親の可能性も伸ばすような子育てをしてしまいましょう!