今季、悪夢のようなスタートとなった橋岡 ACLブリーラム戦で2ゴールと活躍

 浦和レッズU-20日本代表DF橋岡大樹は、6日のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)のグループリーグ初戦、ブリーラム・ユナイテッド(タイ)戦で2ゴールの活躍でチームの3-0勝利に大きく貢献した。昨季にユースからの昇格で即レギュラーをつかんでいた逸材だが、今季は苦しいスタートをバネにして這い上がっての結果を残した。

 橋岡は昨季、浦和が監督交代を繰り返す厳しいシーズン序盤を過ごす中でチャンスを得た。現在の大槻毅ヘッドコーチがユースチームの監督からトップチームの暫定監督に昇格した4月にチャンスを得ると、すぐに「守備はプロのなかでも計算できる」という高い評価を得た。元より、昇格時に「ロシアワールドカップを狙っていけ」という檄を飛ばすほどに評価していた教え子だっただけに、起用に躊躇もなかっただろう。そのうえで、橋岡はオズワルド・オリヴェイラ監督の就任後もレギュラーの座を守った。

 そうしたなかで、今季のスタートは悪夢のようなものだった。16日の富士ゼロックススーパーカップ川崎フロンターレと対戦すると、対面した昨季のリーグMVPであるMF家長昭博にいいようにやられた。チーム全体の低調さがあったにしても、マッチアップの劣勢は際立った。その結果、リーグ開幕戦ベガルタ仙台戦はベンチスタートで出番なし。次節の北海道コンサドーレ札幌戦ではベンチ外という苦境に立たされた。

 浦和は今季、横浜F・マリノスから左利きのDF山中亮輔を獲得。MF宇賀神友弥を橋岡の務めてきた右サイドに回すことを、オズワルド・オリヴェイラ監督は「5月のU-20ワールドカップで橋岡がいないこともある。そのオプションもある」と話していた。しかし、その起用は随分と前倒しになった。橋岡はその状況を「改めて気づかされたもの」だと話している。

DF槙野に掛けられた言葉どおり… 危険なエリアに飛び出して生まれた2ゴール

「こうやってベンチ外になって2試合出場機会がなくてとても悔しいなか、目に見える結果が出せたのは嬉しかった。チームにも迷惑をかけるところがゼロックスの時には正直、あったと思う。練習から1本ずつ取り組むことが本当に大切だと気づかされたし、それまでいくら悪いプレーをしていても出してもらっていた自分がいて、監督にもいろいろな人にも気づかされた。謙虚さを忘れちゃいけない選手だと思ったし、チャンスを与えられて結果を残せる人は少ないから胸を張って良いと思うけど、図に乗ることでもないと思う」

 橋岡がプロ初ゴールを決めたのが昨年10月のベガルタ仙台戦で、シーズンを通して唯一のゴールだった。それが、このACLのデビュー戦ではいきなりの2ゴールだった。ハーフタイムには日本代表DF槙野智章から「もっと中に入っていろいろなアイデアを出していい。もっと自信を出せ」という言葉を掛けられたのだという。MF長澤和輝のシュートのこぼれ球を押し込んだ1点目も、MF汰木康也のクロスに合わせた2点目も、ゴール前の危険なエリアに積極的に飛び出していったからこそ生まれたものだ。

 浦和だけでなく日本サッカー界としても期待の逸材は、昨季のコンスタントな出場で大いに経験を積んだ。そして、今季のスタートの苦境もまた、橋岡をさらに成長させる糧になり、それを乗り越える結果を残したアジアの舞台は、大きな意味を持つゲームになるはずだ。(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)

ブリーラム戦で2ゴールを挙げたDF橋岡【写真:Getty Images】