JR九州 門司港駅の駅舎が復原、グランドオープンするのにあわせて、“鉄分濃いめ”のスターバックスがその内部に誕生。この「鉄分」、「鉄道」だけではなく、日本の発展を支えた北九州市の歴史に深く関係しているのもポイントです。

スタバ看板もレールの上

JR九州 鹿児島本線門司港駅北九州市門司区)に2019年3月10日(日)、“鉄分濃いめ”のスターバックス店舗がオープンします。

壁に飾られている歴代のスターバックスロゴマークは、かつて寝台特急などが先頭に掲げていた、列車名と絵柄の入ったヘッドマークを模したもの。

店内にある「STARBUCKS COFFEE」のサインは、蒸気機関車ナンバープレートをイメージ。そして、店内の各所に九州で使われた本物のレールを配しているほか、店頭のスターバックス看板もレールの上にあります。

1891(明治24)年に開業した門司港駅はかつて、対岸の本州・下関から連絡船で到着した人々が列車で九州各地へ旅立っていく「鉄道の要衝」であり、「九州の玄関駅」でした。

現在の門司港駅舎は、1914(大正3)年に完成した2代目で、1988(昭和63)年、鉄道駅として日本で初めて国の重要文化財になります(現役の駅で国の重文である駅舎はほかに東京駅丸の内駅舎のみ)。

しかし経年劣化のため、2012(平成24)年から駅舎の保存修理、復原工事がスタート。そしてまもなくの2019年3月10日(日)、大正時代の姿でよみがえる「グランドオープン」を迎えます。

このように、「鉄道」が地域の歴史と文化において重要な存在である門司港の駅。その復原グランドオープンにあわせて駅舎内(かつての三等待合室)に誕生するこのスターバックスが“鉄分濃いめ”なのには、そうした背景があります。

店舗内にはこうした歴史を伝える鉄道関連の写真も掲示されているほか、ボックス形のイスやテーブルも、かつて門司港駅の待合室で使われていたものがモチーフ。ちなみに、門司港駅の隣には「九州鉄道記念館」も開設されています。

「鉄分」は「鉄道」だけじゃなかった! 鉄鉱石入りカウンターのワケ

このスターバックス コーヒー 門司港駅店が“鉄分濃いめ”なのは、「鉄道」によるものだけではありません。

北九州市には、日本の産業革命と近代化を支えた八幡製鉄所、工業地帯が存在。それに由来し、「コルテン鋼」という鉄板がバーカウンターの壁面に使用されています。

この鉄板は経年で風合いが変化する特徴があるそうで、それも楽しんでいただければ、とのこと。ちなみに、八幡製鉄所を持つ新日鉄住金の製品だそうです。

また、バーカウンター、コミュニティテーブルの人工大理石には鉄鉱石、コークス、スラグという製鉄の原料や副産物が入れられており、物理的に“鉄分濃いめ”。八幡製鉄所から入手したものといいます。

この店舗のデザインコンセプトは「Storyteller」。門司港駅の復原された駅舎や鉄道とともに、「コーヒーを通じて地域の語り部として、歴史や先人たちの情熱を伝えていきたい」という思いを込めたとのこと。スターバックスによると、まず地元の人に愛着を持ってもらえるよう、こうした「北九州の歴史」を感じられる店舗にしたそうです。

なお、2019年3月10日(日)の門司港駅グランドオープン当日には、かつてこの駅で営業していた洋食食堂を現代に再興した「みかど食堂 by NARISAWA」の開店、8620形蒸気機関車の特別展示、マンガ家のわたせせいぞうさんによるイラストをあしらったラッピング列車の出発式などが行われる予定。

ちなみに、「鉄道」をコンセプトに含むスターバックス店舗は道後温泉駅舎店(愛媛県松山市)もありますが、門司港駅はさらに“鉄分濃いめ”かもしれません。

寝台特急のヘッドマークのように、歴代のスターバックスロゴマークが飾られている門司港駅店内(2019年3月7日、恵 知仁撮影)。