10日、明治安田生命J1リーグ第3節で今シーズン最初の“神奈川ダービー”が日産スタジアムで行われる。開幕連勝を飾った2位の横浜F・マリノス(勝ち点6)と、王者ながらやや苦しいスタートを強いられている11位の川崎フロンターレ(勝ち点2)。両者にとってシーズンを占う重要な一戦となる。

◆攻撃vs攻撃へと変化を遂げた昨季は王者に軍配
これまで守備の横浜FMと攻撃の川崎Fという構図だった神奈川ダービーは昨シーズン、横浜FMのアタッキングフットボールへの転換によって攻撃vs攻撃のスタイルへと変貌した。

そうした中で迎えた日産スタジアムでのJ1第6節。互いのスタイルをぶつけ合う中、川崎Fが58分にMF家長昭博のゴールで先制。しかし、横浜FMもその3分後、セットプレーから昨シーズン限りで現役を退いた鉄人・DF中澤佑二のゴールで同点に。終盤、川崎F横浜FMから獲得したMF齋藤学をこの試合で初起用したことから異様な雰囲気に包まれるなど、周囲を賑わせた一戦となったが、ゴールレスドローに終わった。

一方、等々力陸上競技場で行われた第20節では、ホームの川崎Fが主導権を握る。34分に味方のパスにボックス左へと抜け出した家長の折り返しをFW小林悠がプッシュ。さらに71分にもMF中村憲剛のスルーパスを小林が押し込んで2-0で川崎Fが勝利した。この勝利で川崎Fが1勝1分けと勝ち越した。

◆三好不在で問われる真価~横浜F・マリノス
ベガルタ仙台戦を2-1で勝利して連勝スタートを切った横浜FM。計5得点と2戦共に攻撃が機能し、主導権を握った展開で勝利を奪っている。また、FWエジガル・ジュニオやMF三好康児といった新戦力もうまくフィット。アンジェ・ポステコグルー監督も「やろうとしているサッカーを理解し、しっかりピッチ上で見せられているのはすごく良い」と語る通り、良い形でチーム作りが進めることができている。

とはいえ、今節は真価が問われる一戦となる。この2試合で横浜FMのスタイルに合致することを証明した三好が契約上の理由から出場不可。すでに攻撃陣をけん引し、周囲を活性化させる存在だっただけに痛手だ。ただ、同じ攻撃サッカーを伝統としている連覇中の王者・川崎Fにどこまで通用するか。その試金石となることは、間違いない。昨シーズンは未勝利。現在の勢いを持って2014年シーズン以来のリーグ3連勝を飾り、大きな自信を掴みたいところだ。

◆決定力不足を打破できるか~川崎フロンターレ
好発進の横浜FMとは一転、王者の滑り出しは苦しいものとなっている。開幕節のFC東京戦をゴールレスドローで終えると、前節の鹿島アントラーズ戦(△1-1)では勝ちきれず、6日に行われたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の上海上港戦でも0-1と敗戦。3戦とも内容やシュート数では相手を上回っているが、ここまでのゴール数はわずか「1」。それも直接FKによるもので決定力不足が目立っている。

そんな不安を抱えたまま今節を迎える。しかし、ダービーである以上負ける訳にはいかない。ましてや昨年、攻撃的スタイルに転換したばかり。撃ち負けることなど許されない。ミッドウィークに行われた試合をターンオーバーで臨んだ横浜FMとは逆に主力を起用した分、コンディションはやや心配。それでもチャンスを作り続け、今節こそしっかりとゴールを奪い切りたい。ダービーでの勝利を浮上のきっかけとしたいところだ。

横浜F・マリノス[4-3-3]

(c) CWS Brains, LTD.
GK:飯倉大樹
DF:広瀬陸、チアゴ・マルチンス、畠中槙之輔、高野遼
MF:喜田拓也、大津祐樹、天野純
FW:仲川輝人、エジガル・ジュニオ、マルコス・ジュニオール
監督アンジェ・ポステコグルー
前節からの変更点は1つ。契約上の理由により出場することができないMF三好康児の代わりにFW大津祐樹がインサイドハーフの右に入る。最前線はここまで3ゴール中と絶好調のFWエジガル・ジュニオ。リーグ戦3試合連続ゴールを奪えるか注目だ。

川崎フロンターレ[4-2-3-1]
(c) CWS Brains, LTD.
GK:チョン・ソンリョン
DF:マギーニョ、奈良竜樹、谷口彰悟、車屋紳太郎
MF守田英正、大島僚太
MF:小林悠、中村憲剛家長昭博
FW:レアンドロ・ダミアン
監督:鬼木達
6日に行われたACLの上海上港戦からは2人変更。同試合で負傷交代したDF馬渡和彰に代わり、DFマギーニョが開幕戦以来の先発復帰を果たすことになりそうだ。また、MF長谷川竜也が務めた左サイドの位置に家長、右に小林が入り、1トップはFWレアンドロ・ダミアンが務める。

【注目選手】
◆仲川輝人(横浜F・マリノス)
(c)J.LEAGUE PHOTOS
開幕3連勝のカギを握るのは、昨シーズンに横浜FMの右翼として確立したFW仲川輝人だ。入団前の大ケガ、2度の武者修行を乗り越えたハマのスピードスターは昨年、プロ4年目にしてついに主力の座を奪取。昨シーズンは公式戦37試合13ゴール7アシスト。今シーズンも1ゴール2アシストと躍動している。川崎Fはスクール時代から在籍していた古巣。自身初のホームでの神奈川ダービーで小さい頃から育ったクラブからゴールを奪い、横浜FMを勝利に導けるか。

家長昭博(川崎フロンターレ)
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一方、リーグ戦初白星を目指す川崎Fの注目選手は、MF家長昭博だ。家長は昨シーズン、公式戦41試合7ゴール9アシストを記録した他、類い稀なるサッカーセンスと強靭なフィジカルで圧倒的な存在感を放ち、JリーグMVPに輝いた。しかし今シーズンは、レアンドロ・ダミアンの加入で右サイドハーフから左サイドハーフに回ったことで現時点、DF車屋紳太郎との連携が噛み合わず、ここまで不発。本領を発揮できないでいる。昨シーズンの対横浜FM戦では、1ゴール1アシスト。良いイメージを持っている相手に対して手応えを掴むことができるか。

◆得点数は「5」vs「1」…対照的な矛が激突
リーグ開幕3連勝を目指す横浜FMと、今シーズンリーグ戦初白星を目指す王者・川崎F神奈川ダービー。両者の対決は、今回で31回目を迎える。通算成績は川崎Fが13勝5分け12敗で上回っている。

注目ポイントは両者が掲げるスタイルによる攻撃vs攻撃だ。横浜FMは昨シーズン、リーグ2位タイの56得点を記録。一方の川崎Fは、リーグ最多の57得点を記録した。迎えた今シーズン、攻撃スタイルへの転換から2年目を迎えた横浜FMは2試合で5得点と得点力は健在。しかし、対する川崎Fはわずか1得点と不発だ。それでも川崎Fはこれまでもチャンスを多く創出し、内容では圧倒。攻撃スタイルがぶつかり合う展開になることは間違いないだろう。

好調・攻撃陣の横浜FMが王者相手に爆発するか、それとも川崎Fダービーできっかけを掴むか。神奈川ダービーは10日の14時にキックオフを迎える。
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