芸能界では、出産後も、育児などの私生活を発信しながらタレント活動をする“ママタレント”の活躍が目覚ましい状況です。2016年からは「好きなママタレントランキング」(オリコン)が発表されるなど、ママタレは“バラドル”などと同じく、タレントの一カテゴリーとして台頭しています。

 実際に、同ランキングで2年連続1位に輝いた小倉優子さんの他、辻希美さんやスザンヌさん、熊田曜子さん、木下優樹菜さん、ギャル曽根さん、安田美沙子さんらのママタレは、テレビ番組などに多数出演。家庭的なイメージから、小倉さんは柔軟剤のCMに起用され、スザンヌさんは知育玩具のアンバサダーに就任するなど活躍の場を広げています。

 イベント出演も盛んで、それぞれが台所用洗剤やフライパン、ネットスーパーなど“ママ”と関わりの深い商品やサービスのPRイベントに登壇しています。

かつて恥とされていた“家庭のこと”

 テレビ解説者、コラムニストの木村隆志さんによると、以前の芸能界では、家庭のことなど身近なテーマをテレビで発信することは、自ら芸がないと言っているようで恥ずべきこととされていました。

 しかし、近年では、「子育てや家事が親近感や好感度につながっています。結婚によって女性タレントとしての商品価値が下がるのではなく、商売ができるということが分かり、芸能事務所も力を入れ始めました」(木村さん)。

「『はなまるマーケット』のような生活に密着した情報番組から、ママタレというタレント性が誕生しました。ワイドショーなどでは、事件に対する母親目線の意見が重宝され、堀ちえみさんやハイヒール・モモコさんなどがその象徴でしょう」

 ママタレの活動には、テレビ出演だけにとどまらないビジネスチャンスの可能性もあるといい、「人気があれば、タイアップ商品の開発やオリジナルのグッズ販売も可能です。さらに、企業イベントなど仕事の幅も広がります。赤ちゃん関連の商品は専門で作られているものが多く、企業の数も多いので、見逃せないポジションになっています」。

 女優やアーティストなど確固としたスキルを持つ芸能人は、“母親”イメージが作品の妨げになるケースがあることから、育児期間は休養することが多いもの。ママタレに転身するのは、どのようなタレントでしょうか。

「アイドル出身のタレントなど、ビジュアルを売りにした戦略の人がママタレとして活動する傾向があります。彼女らは、結婚や出産によりファン層を変えなければならず、主婦層をターゲットにしています」

“通過点”としてのママタレ

「しかし」と木村さんは続けます。

「そのポジションにも限りはありますし、いずれ子育てを卒業するので、ママタレとして生き残ることは不可能であり、芸能活動を続ける上での“通過点”に過ぎません」

 趣味を生かしてパンアドバイザーの資格を取得し、料理本をプロデュースして大ヒットを収めた小倉優子さんや、出産後もグラビア活動を継続している熊田曜子さんは、他にはない付加価値を身につけることで熾烈(しれつ)な競争を勝ち抜いた勝者と言えます。

 芸能界では、アイドルグループ出身者などの結婚や出産が、絶えず報道されています。次から次へとポジション争いが起こる中で、確固たる地位を築くためには、狭い意味での“ママタレ”を脱する必要があるのかもしれません。

オトナンサー編集部

(左から)辻希美さん、木下優樹菜さん