米国の市場調査会社(IDC)がこのほどまとめたレポートによると、スマートフォンの世界出荷台数は、今年(2019年)も前年実績を下回る見通しだ。

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出荷台数、今年も減少、13.9億台にとどまる見通し

 スマートフォンの世界出荷台数は、一昨年、前年比で0.3%減少し、同社が統計を取り始めて以来、初めて前年実績を下回った。そして昨年は、同4.1%減の14億400万台となった。

 かつて80%近くあった伸び率は、その後急激な右肩下がりで推移し、ついに減少に転じた(ドイツ・スタティスタのインフォグラフィックス)。

 IDCによると、今年の出荷台数は、同0.8%減の13億9400万台にとどまる見通しで、3年連続のマイナス成長が見込まれている。

スマホ市場に吹く逆風

 同社はその理由として、スマートフォン市場に吹く3つの逆風を挙げている。

(1)消費者の間で広がっている、買い替えサイクルの長期化。(2)世界スマートフォン出荷台数の約3割を占める中国市場の低迷。(3)地政学的リスクの高まり、である。

 また、同社は先のレポートで、先進国市場における普及率の高さや、上昇し続ける端末価格に対する消費者不満の高まりといったことも指摘していた。

 別の調査会社である米ガートナーも、スマートフォンは世界的に低・中価格帯のモデルが好調だが、米アップルの「iPhone」のような高価格モデルは不振が続いていると指摘。技術革新の速度が遅いにもかかわらず、価格が上昇し続けているからだという。

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市場は転換点を迎えるか

 ただ、今年は、高速大容量の5G(第5世代)移動通信に対応するスマートフォンが発売される年である。また、大手メーカーである韓国サムスン電子と中国ファーウェイ華為技術)が先ごろ、折り畳み式端末を発表し、話題になった。

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 IDCは、「これら新端末が消費者に受け入れられるのか、5G通信サービスが、どのように消費者の買い替え行動につながるのか、今のところ分からない」としながらも、今年は市場にとって転換点の年だと述べている。

 とりわけ、5Gは、重要な技術革新であり、今後の市場成長に大きな役割を果たすという。IDCが推計する今年の5G対応端末の世界出荷台数は、わずか670万台で、全体の0.5%程度。しかし2020年以降は、5Gの普及が加速するとしている。

 2023年における5G端末の世界出荷台数は、4億130万台で、スマートフォン全出荷台数の26.0%を占める見通し。これに伴い、5Gを含むスマートフォン全出荷台数は同年に、15億4000万台に達すると、IDCは予測している。

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