赤塚不二夫の名作ギャグ漫画「おそ松くん」を原作とし、2度にわたって制作・放送されたTVアニメ「おそ松さん」。その完全新作となる劇場版「えいがのおそ松さん」が3月15日(金)より、いよいよ全国劇場にて公開される。

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松野家の6つ子の中でも一番卑屈で、しれっと毒を吐くことが多い四男・一松を演じる福山潤にインタビュー。劇場化についての思いや、自身の高校時代を振り返っての話を聞いた。

■ 喜びは一瞬、すぐに頭は作業のことでいっぱい

――まずは劇場化が決まってのご感想をお聞かせください。

福山:お話自体は結構前に聞きました。第2期が終わった後くらいかな。「いつですか?」が最初の第一声でした(笑)。ちゃんとみんなで収録できるのか、いつ収録がくるのか…嬉しい、楽しいだけではやれないのが、この作品なので(笑)。どのタイミングで公開されるかも含めて、いろいろ考えないといけないことが頭をよぎりました。

――喜びもあったけれども、そちらの方が頭を占めていたと。

福山:最初はもちろん「嬉しい!」「やったー!」という気持ちでしたが、一瞬でしたね。どういう内容になるのか、どういう形式になるのか、尺は90分なのか120分なのか…、そういうことばかり考えてしまいました(笑)。

――劇場化されること自体は予想されていましたか?

福山:劇場化されてもおかしくはない作品だとは思っていました。第2期までやったので、「どうするのかな? 終わるのかな?」と思っていたところ、劇場版と聞いて「なるほどね」と納得しました。そして、併せて、劇場アニメ化にむけて気が引き締まりました。

――気が引き締まるというのは?

福山:劇場版は宣伝まで含めて本当に多くの方々にご協力いただかないとできない作品ですから。見にきてくださる方にも直接劇場まで足を運んで、チケットを買って、時間を割いていただくものなので、面白いものを作って受け入れられないとその先はないと思っています。

完全新作の劇場版ではありつつも、TVアニメシリーズからの劇場化ですから、そういったものは「おそ松さん」に限らず緊張感が生まれます。「これで終わりですよー!」と銘打つならいいんですが、そうではないですし、僕らもまだ先を見たいですからね。そういう意味では僕らも頑張らないと、と気が引き締まる思いでした。

■ 藤田監督と脚本・松原節のきいたストーリー

――初の長編ということで、どんなストーリーを予想されていましたか?

福山:6つ子のうちの誰かが子宝に恵まれない大富豪の家に拾われていって、ニートの状態で多大なる富と名声を手に入れるんです。それを他の5人にひけらかしに行き、悪態をつかれながらも1人になって寂しくなっているところを、みんなが迎えに行ってドンチャンドンチャン…というのが誰でも思いつく話だと思いながら想像していました。

でも、全く違いましたね(笑)。冒頭から最後のシーンまで通して、「藤田陽一監督と脚本の松原秀さんならこうするのか!」というものになっていました。

――その点においてはある意味予想通りだったと。

福山:元々、一筋縄なものにはならないというのは分かっていました。あの2人なら、映画を1回見て「あ、こういうものだね」と分かるものにもしないだろうなと。分かるようには作られているんですけれど、「あれ、もしかしてこれって…?」というものにもなるだろうなという予想でした。

実際に映像を見て、最初の数カットで「あ、そういう話なのね」「また難しいところに切り込んだなぁ」と思いましたし、ただただ面白かったですね。

■ 年齢によって感じ取るものが違うかもしれない

――いろいろな世代に刺さる内容のように感じました。

福山:これは年齢によって違うと思うのですが、30代の人が見たら「いいなぁ…」と思うかもしれない。でも、リアルに10代の多感な時期の人が見ると、痛々しく感じることもあるんじゃないかなと。その落差を見事に現在と過去とで作っていただけたのは、TVアニメシリーズからパワーアップした部分ではないかと思います。

これを知ったうえでTVアニメシリーズを見ていただくと、また感じ方も違うんじゃないかな。後から外堀を埋めるような形にはなりますが、これも実際にあったことであり、ただそれが見えたことで見方が変わるだけ、新たに知るだけの話。無理なくつけ足されていると思います。

■ 6つ子たちの成長は一切なし!

――劇場版を通して、6つ子たちの成長を感じましたか?

福山:誰一人、成長はしていないです(笑)。18歳の頃が描かれると聞いたとき、「おそ松はきっと変わっていないんだろうな」と思ったし、その予想通り全く変わっていなかったんですよ。でも、実際にそれを音で聞いたときに、ちょっと狂気を感じまして…。

クズでニートで一番のバカな彼が、あの状態のまま変わっていないんですよ、一番の狂人じゃないですか!?(笑) まず、どんな精神状態であの状態になるのか…。学生の間はまだいいですが、あの状態のまま今もそうだと考えると…おそ松はバカじゃなくて、狂人だったんじゃないかと思うようになりました(苦笑)。

■ 無茶な遊びを試した高校時代

――今回の劇場版には「俺たち いつから大人なの?」という素敵なキャッチフレーズがつけられていますが、福山さんはどんなときに大人になったと感じましたか?

福山:喋りたいなと思ったことや、切り込みたいなと思ったことの取捨選択を、ある程度できるようになったのが大人になったことかなと思います。若かりし頃は喋りたければ喋る、切り込みたければ切り込むということを無作為にやっていたので…。

特に、デビューして間もない新人の頃は、自分の台詞の3分の2を変えてみるという無茶なことをやって、先輩に「お前だけ違う台本もらっているだろ」とツッコまれたこともあります(笑)。それがちゃんとした理性の下、「面白いならやるけれど、全部やればいいってものじゃない」ということにようやく気が付きました。

――ちなみに気がついたのはいつ頃?

福山:30歳くらいですかね。…気がつくまで結構長かったな(笑)。恐らく関わったことのあるスタッフの方がこのインタビューを読んで、「あれで!?」と思うかもしれませんが、これでもちゃんと取捨選択しているんです(笑)。

業界の中ではこのように振る舞っておりますけれど、20歳の頃から大人びておりました。ただ、今は人間力の限界は感じましたね(苦笑)。今考えると、昔の方が大人だったかもしれません。だんだん子供になっています。

――子供時代はどんな子供でしたか?

福山:同い年から見れば「嫌なヤツ」、先生から見れば「不思議なヤツ」に映ったかもしれません。小学校・中学校・高校と、悪ガキでした。

悪ガキグループと遊ぶタイプでしたが、いわゆるヤンキーたちとは遊ばないし、悪いことも基本しないけれど、正しいことしかしないってわけでもない。高校では3年生で進路を決めた途端、学校に通う意味を見出せなくなって無茶な遊びをしましたね。

――一体どんな遊びを…?

福山:隣のクラスで授業を受けてみたり、登校はしているけれども、授業にでていない科目もあったりして、でも出席したことになっていたこともあるという事とか(笑)。1学期はちゃんと勉強してテストも受けるけれど、2学期からはテスト範囲を知らずにテストを受けたらどれだけ成績が下がるかという実験をしたりとか。

そういう自分の中での実験をたくさんやっちゃった高校生活でした。その結果、テストでミスって赤点になってしまい、卒業が延期になるという事もありました(苦笑)。卒業式には、「在校生として参加していいですか?」と先生に聞いてみたら、めちゃくちゃ怒られましたね(笑)。

【「えいがのおそ松さん」アフレコ現場は学級崩壊を起こした男子校!一松役・福山潤インタビュー後編 へと続く。同記事は3月15日(金)昼12時アップ予定】(ザテレビジョン

劇場版「えいがのおそ松さん」が3月15日(金)より、全国劇場で公開される