“マーベル・シネマティック・ユニバース”(通称MCU)の21作目となる最新作『キャプテン・マーベル』がついに公開! 最強との呼び声も高いキャプテン・マーベルの戦いを、最強の女性の代表といえるロンドン五輪メダリストの松本薫が鑑賞し、日々勝つために努力を続け、世界の頂点に立った彼女だからこその感想を語り、現在の挑戦についても明かした。

【写真】カッコイイ! 松本薫の「キャプテン・マーベル」風コーディネート

 MCUを観たのは初めてという松本だが、「めちゃくちゃ面白かったです。主人公が覚醒したところなんかは、強すぎて衝撃で笑っちゃうくらいでした。しかも気持ちひとつであんなに強くなって!! 正直、羨ましかった」と笑う。

 しかし同時に、記憶を失い、自分が何者か分からない不安や孤独にさいなまれながら、強くなる努力を重ねたうえで覚醒したキャプテン・マーベルの姿は、共感するものがあったとも。

 「いろんな経験をして、真の自分の信念、彼女自身の芯を強くしていったんだなと感じました。やっぱりどんなに強くても人なんだと。“自分とは”と悩む時期や挫折した経験があって、それを乗り越え、自分を見つけたことでたどり着く強さ。それは、普通に悩みながら暮らしている私たちにも響くものです。最強のヒーローの話ですが、結局は“自分探しの物語”なんだと感じました」。

 そして自身を振り返って続けた。「私は天才ではなかったんです。凡人です。世界を取れるのは、才能のあるトップ選手だけ。私のように才能がない選手が天才たちと同じことをしていても、決して世界の頂点にはたどり着けない。よく柔道は、“心技体”と言いますが、凡人は視点を変えて、別のところで勝負する必要がある。そこで私は、“強く見せる方法”を研究して、駆け引きをしていく“野獣スタイル”という自分の戦い方を見つけていったんです」。

 「実際の試合では、相手を睨んだり、不気味さが増すようにちょっと笑みを加えたりして、相手の反応や力の入れ具合を見る。相手の感情を読み取って、さらに相手の感情、考え方をコントロールしていくんです。それが私のスタイル」と戦略を明かし、「凡人には凡人の戦い方がある。私が金メダルを取れたのは、私の戦いを見つけられたからです。今だから自分は凡人だったと言えますが、現役当時は周りには天才だと思わせてきました」と告白。キャプテン・マーベルについても、「彼女はめっちゃ強いけれど、自分の戦い方を見つけたという部分は同じだと感じました」と語った。

 そして、世界の頂点に立ったときのことを「最初は夢か現実か分からない感じでした。よく死ぬ前に走馬灯が見えるといいますが、あんな感じでこれまでのことが脳裏に流れて、そのとき初めて涙が出ました。大きかったのは、やっとこられた、やっと両親を連れてこられたという安心感でしたね」と思い返した松本。

 今年2月に行った現役引退会見では「アスリートも食べられるアイスを作りたい」との発言が話題を呼んだ。実際に現在は、高田馬場にあるアイスクリーム店「ダシーズ」で接客の日々を送っている。

 「最初は帰りの電車で頭痛の毎日でした。これまでは1日最大でも6試合しかなかったので、6人と向き合っていればよかったのが、一気にお客さんという相手が増えましたからね。試合数が多すぎる(苦笑)。相手を見るという点はこれまでの経験が生かされていますが、今はどう笑顔になって帰ってもらえるかが大切なので、勉強の連続です」。

 ちなみに『キャプテン・マーベル』はMCUの中で、初の女性単独ヒーロー映画となる。その点を松本に投げると、次の答えが返ってきた。「そうなんですね! 世の中、まだまだ男性社会だと思います。だから、遅い、早いじゃなくて女性でもヒーローになれるという映画が作られた、1本の道を作ったというのが大きいと思います」。

 「私も、男性は結婚してもそのまま(現役を)続けられるのに、どうして女性アスリートが結婚してからも続けることは、タブーになっているのだろうと思っていました。だからリオ(五輪)のあと、妊娠しても柔道を続けました。自分が経験して、発信してみようと」。

 そして松本だからこその重みある言葉でこう結んだ。「『キャプテン・マーベル』は、何かに頑張っている女性や挑戦している女性に是非観てもらいたいですね。勇気をもらえると思います。そして、この映画の公開でヒーロー映画もこれからどんどん女性が活躍する場に変わっていくと思いますし、そうなることを期待しています」。(取材・文:望月ふみ/写真:高橋ゆり)

 映画『キャプテン・マーベル』は全国公開中。

『キャプテン・マーベル』を鑑賞した松本薫にインタビュー クランクイン!