保育園幼稚園から「お子さんの行動が気になるので、専門機関を受診してください」と言われ、「うちの子を障害児扱いした」と激怒する保護者がいます。わが子ではない他人の子を「発達障害かもしれない」と心配し、勇気を奮って進言してくれているにもかかわらず、耳を傾けようとしないのです。

早期支援が子ども救う場合も

 筆者は、知的障害のある18歳自閉症児を育てながら、子育て本の執筆や講演活動をしています。日頃「保護者への伝え方」というテーマで、園の先生に向けた研修の依頼を受けることが多いのですが、先生たちによると、気になる行動をする子どもを持つ保護者から、次のような言葉を掛けられることがあるそうです。

「似たような子はたくさんいるじゃないか。個性の一つだ。行政に訴えてやる」「先生の指導力がないから、うちの子が椅子に座っていられない。子どもの問題にすり替えないでほしい」「障害児加算を目当てにしているんですか?」

 このように言われると、「親御さんが傷つくので話しにくい」と感じ、それ以降、口を閉ざしてしまう保育士幼稚園の先生もいます。しかし、裏を返せば、保育士や先生自身が「傷つきたくない」のではないでしょうか。

 園の先生は「子どもを育てる」という責任のある仕事をしています。一方、診断名を言うのは医師の役目ですから、園は専門機関で診てもらうよう、背中を押すだけでいいのです。

 保護者も園も「子どもの幸せ」という同じ方向を見ているのですから、「親からどう思われるだろう」と考えるのは、やめてほしいと思います。保護者との関係悪化を恐れて問題を先送りしたり、「長い目で見ましょう」と曖昧な言い方をしたりすることで“放置”につながることもあります。そうすると、子どもは親にも周りにも理解されないまま、いばらの道を歩み、苦しむことになるのです。

 小学校の選択も、知的発達の遅れがなければ通常学級に通うケースも多いです。この場合も、園からの申し送りで障害特性を伝えれば、合理的配慮を受けることができますが、それがなければ、子どもは担任から厳しい叱責を受けたり、同級生からいじめに遭ったりする恐れがあります。

 中には、知的発達の遅れが見られ、問題行動が激しいにもかかわらず、小学校から特別支援教育を一切受けることなく、16歳になってようやく特別支援学校高等部に入学する子もいます。もし、この子が6歳から支援学級や支援学校に通っていれば、“個別の教育支援計画”に沿ってきめ細かく手厚い指導を受け、日常生活における基本的な事柄がもっと身に付いていたであろうと感じます。

 保育士や先生の言葉は、必ず保護者の心に突き刺さります。行動に移しやすいよう、専門機関の名前・電話番号・担当者名に加えて、「○月○日までには行ってほしい」と具体的に伝え、早期診断・早期支援につなげてあげてください。

母親をサポートする姿勢で

 一方、母親は子どもと接する時間が長いので、わが子の行動の異変にうすうす気づいているというケースもあるかもしれません。

 しかし、例えば、夫から「お前のしつけの仕方が悪いから、園で集団行動が取れないんだ」、姑(しゅうとめ)からも「○○家にこんな子どもが生まれるわけがない。あんたの家の血筋が悪い」などと責められていたとしたら、どうでしょうか。外にも家庭内にも居場所がなく、孤立無援の状態になってしまいます。実際に、うつ状態に陥っている母親もいます。

 そこへ、「○○君が部屋から出ていくので困っています」「周りの子に迷惑をかけています」と、園側の都合を押し付けるような言葉を掛けられたら、母親はもっと心を閉ざしてしまいます。

 園側も、話すときはあくまでも家庭の背景を知り、「ご主人は理解がありますか? お子さんのために、困り事を少なくしていきましょう。全面的にサポートしていきます」といったスタンスを貫くことが大切です。

第一歩は「親が受け入れること」

 では、親はどうすればよいのでしょうか。

 子どもの将来に夢や希望を持っていたのに、「専門機関を受診してください」と言われたら、奈落の底に突き落とされます。「はい、分かりました」とすんなり受け入れる親は、まずいません。

 筆者も、医師から「お子さんは自閉症です」と言われたとき、相手が専門医であるにもかかわらず、「やぶ医者だ」と思い、医師を恨みました。怒って診察室を出て、次回の予約をキャンセルし、その後しばらく、医療機関を訪ね歩く「ドクターショッピング」をしました。医師に言われてもこうなってしまうのですから、園から言われたら、なおさら動揺し、怒りを覚えるのも無理はないでしょう。

 しかし、私の場合は、最初にその医師に言われたことが心に突き刺さっていたため、最終的には息子の障害を受け入れることができました。どんなにつらくとも、まず「親が受け入れること」こそが、初めの第一歩だと思うのです。

「親亡き後」の人生が長い

 仮に30歳で出産したとすると、親が80歳のとき、子どもは50歳です。発達障害に気付かないまま、不登校引きこもりに発展し、親の年金で暮らしていた子どもが、親が亡くなった後に孤独死というケースもあります。

 親亡き後の人生は長いです。福祉の網の目からこぼれ落ちないよう、療育手帳や精神障害者保健福祉手帳、受給者証を取ることで福祉とつながり、一人で抱え込まずに「SOS」を出して周りに助けてもらいましょう。

 保育園幼稚園側は「自分たちが一時的に恨まれても構わないから、担当している子どもの将来の幸せのために進言しよう」と勇気を奮って伝えてくれているのです。子どもが幼いと、親はなかなかそこまで考えられないかもしれませんが、園側のメッセージに耳を傾けてほしいと思います。

子育て本著者・講演家 立石美津子

保育園から「専門機関を受診して」と言われたら…(写真はイメージ)