shima20190320

今年2月、首相連続在任日数で吉田茂を抜き歴代2位となった安倍総理。短命政権が続いた平成にあって「異例の長期政権」とも言えるわけですが、何がここまで長きに渡る政権運営を可能にしたのでしょうか。ジャーナリストの嶌信彦さんが、自身の無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』でその要因を探っています。

異例な安倍長期政権のわけ

安倍政権が発足してから5年が過ぎた。歴代政権の中では、74ヵ月目に突入し、戦後二番目の長さだ。日本の政権はくるくる変わり、一つの政権が70ヵ月を越したのは極めて珍しく戦後では佐藤栄作首相の2,798日に次いで二番目、異例の長期政権といえる。第一次安倍政権は体調不良で、わずか366日で身を引いているだけにこれほど長期になるとは驚きだ。

第二次安倍政権が誕生したのは、ひとえに菅義偉氏の巧みな根回しによるところが大きかった。菅氏が安倍氏を御輿として担ぎ、政権の座にいた民主党が落ち着いた安定的な政治を出来なかったため、再び安倍氏に出番が廻ってきたのだ。

結果的には1993年に野党勢力だった細川護煕連立内閣、1年後の1994年に自民・社会・さきがけの自・社・さ 村山富一社会連立内閣が成立したが、結局長続きしなかった。自民党はその後、公明党と組んで再び1996年から橋本龍太郎小渕恵三1998年)、森喜朗(2000年)、小泉純一郎(2001年)、安倍晋三(2006年)などと自民党政権に逆戻りすることに成功していったのである。

2009年から2012年まで民主党が政権をとるものの、第二次安倍政権になると公明党と組んで安定多数を確保し、アメリカのトランプ政権と親密さを演出することで外交的な安定感も得て長期政権の基盤作りに成功した。

ただ景気拡大の期間は長かったがかつての「岩戸景気」「オリンピック景気」「列島改造景気」などの6~7%成長と比べると1%前後で景気拡大の実感に乏しいのも事実だ。

しかし、このだらだらと低成長で長く続いているアベノミクス景気が安倍政権を長持ちさせているともみえる。民主党政権の失敗はまだ記憶から消えていないし、自民党内にも5年間続いた安倍政権を倒すエネルギーがほとんどみえてこない。対抗馬とされる石破茂氏には国民を沸かす人気やエネルギーが感じられないし、宮澤派の岸田文雄氏も自ら立ち上がって政権を取りに行くガッツがみられない。そうそうしているうちに安倍氏海外で顔を売りすっかり日本の代表としての存在感をみせてきてしまった。