生活全般におけるキャッシュレス化が進む中国発の電子決済サービス「アリペイ(支付宝)」。日本でもここ数年、訪日中国人向けにコンビニや百貨店、家電量販店など至るところで水色の「支」マークを見かけるようになった。運営するのは中国ネット通販最大手のアリババ集団傘下の金融会社、アント・フィナンシャルだ。

 東京で先ごろ、主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に先立ち経済界のトップが集う「B20東京サミット」が開催された。中国国営新華社通信によると、アント・フィナンシャルの井賢棟(エリック・ジン)会長兼CEO(最高経営責任者)も参加。同社の中国におけるモバイル決済や中小零細企業向けローンなどの事業を紹介し、「中国発モバイル決済の海外進出は徐々に進んでいる」と胸を張った。

 その言葉通り、アリペイはインドフィリピン、韓国など9カ国で現地提携先と組んで、現地版「アリペイ」を展開している。ただ、「日本版」はローンチの目途が立っていないようだ。アント・フィナンシャルは18年春にも日本版の開始を計画していたが、提携を受け入れる銀行が見つからず、延期を余儀なくされたという報道もある。だが、今サミットで井CEOは「アリペイのデジタル体験を日本にも、そして世界にも広めていきたい」と語っており、「日本版」ローンチに前向きであることに変わりはないもよう。

 そんな中、日本のキャッシュレス化を促すべく、みずほ銀行が1日、スマホ決済サービス「J-Coin Pay」をスタート。全国の約60の地方銀行も導入するという。これに先立ち、ソフトバンク系の「Paypay」が100億円還元キャンペーンを実施して話題を集めたことも記憶に新しい。いずれも、加盟店で訪日中国人が「アリペイ」を使って精算することができる。

 ボストン・コンサルティング・グループによると、日本では現時点で現金払いの割合が65%を占める。一方の中国は、調査会社イプソスによると、18年第3四半期のモバイル決済普及率がモバイル端末ユーザーの9割を超える。ただ、日本人は、現金払いは無駄遣いを防ぐという「現金信仰」が根強い。スマホ1台で何でも買える便利さをどこまで受け入れられるか。日本のキャッシュレス化実現に向けた取り組みはまだ始まったばかりである。(イメージ写真提供:123RF)

「現金信仰」が根強い日本人、中国のようなキャッシュレス化はどこまで進む?