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Point
■光ピンセット技術を発展させて、光だけを用いて遠く離れた物体を空中に浮かせ操作する方法が発明された
■物体の表面に入れた特殊なナノスケールの模様が、物体が進行方向から逸れた時に修正する復元力として働く
■宇宙船にこの技術を応用すれば、燃料を運ぶ必要がないため、より高く速く飛行できる

まるで手品のような新技術の誕生です。

ある研究チームが、光だけを用いて物体を空中に浮かせ動かす方法を編み出しました。物体の表面に特殊な模様を施すことが鍵なのだとか。現段階では理論上の話ですが、光の力だけで宇宙船のような巨大な物体を動かすことも可能なのだそうです。

研究を行ったのはカリフォルニア工科大学のチーム。論文は雑誌「Nature Photonics」に掲載されています。

ナノスケールの模様で「光ピンセット」を進化

数十年前、「光ピンセット」の開発が始まりました。レーザー光が生む放射圧を使って、ナノ粒子などの微小物体を動かし操作する技術です。

光ピンセットを発明し、生体システムを解明するツールへの応用につなげたことなどが評価され、2018年に3人の研究者がノーベル物理学賞を受賞したことは記憶に新しいでしょう。ところがこの光ピンセット、かなり小さな物体をほんのわずかの距離しか動かせないという難点がありました。

Credit: Courtesy of the Atwater laboratory

そこで研究チームは、数ミクロンから数メートルにわたるさまざまな形状・大きさの物体を、ある処置を施すことでレーザー光で操ろうと試み、それに成功しました。その処置とは、物体の表面に特殊なナノスケールの模様を入れることでした。この模様が、物体が進行方向から逸れた時にそれを修正し、光の中にとどまらせる復元力として働きます。

つまり、レーザー光をピンポイントで照射するのではなく、物体の表面に入った模様が物体そのものの安定性を「符号化」するということ。このため、物体が光源からどんなに離れていても、物体が宇宙船のように大きくても支障はありません。

燃料不要 地球からのレーザー光で操作する未来の宇宙船

宇宙船への応用はまだ先の話ですが、その第一歩はすでに踏み出されました。理論上は、宇宙船の表面にはナノスケールの模様が施され、地球から照射するレーザー光で操作されます。燃料を運ぶ必要がないため、宇宙船はかなりの高度まで上がるだけでなく、光の速さに迫る速度で飛行して天体間を行き来できる可能性さえ秘めています。

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この先20年以内に、光を動力とする宇宙船が、太陽系外縁天体に到達するのも夢ではなさそうです。小さな模様で大きな物体を動かすこの技術…。実用化が楽しみですね。

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