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統計不正問題に関する国会での議論から感じる政府の危機意識の鈍さに、苛立ちとも言える不安を抱いているのは、メルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』の著者でジャーナリストの引地達也さんです。引地さんは、自身も関わる福祉の分野では、統計的な裏付けが仕事の必要性の拠り所となっていると指摘。「自衛隊員募集を6割の都道府県が協力拒否」のような不正確な安倍首相の発言が、現場に不穏な空気を作り出すと警戒を強めています。

統計不正と宰相の不正確な言葉と議論できない空気

厚生労働省の「毎月勤労統計」で、2004年から15年間も続いていたルールに反する抽出調査等の統計不正問題は、国会で野党が政府を追及するものの、政府側の危機意識は鈍く、議論はかみ合わない。

統計はこの国のかたちをデータで示すもので、それを根拠に精緻な議論を積み重ね国の制度設計をするための基本となる。統計結果はプロセスに左右されるのが当然であり、誤謬があってはならないのだが、それが長年間違っていた。そして、政府による徹底的な自己反省はない、のである。

与野党の思惑など度外視して、経済政策にしても福祉政策にしても、統計結果というエビデンスをもとに、最大幸福を実現するために多くの人が仕事をしているはずなのに、徹底的な自己検証と反省がなければ、自分の仕事の拠り所とする必要性への信頼は揺らいでしまう。私も国の片隅で最大幸福を目指して働いているつもりなのだが、いいかげんな政策決定の中での仕事であってほしくない、と心から思う。

この不正は官僚による正しい統計により正しい政策が導き出されるという本来の統計の在り方に対する自覚のなさの結果であり、プロとしての意識の欠如の現れでもある。

同時に最近の安倍晋三首相が自衛隊募集の自治体の非協力に関する言及と重なってくる。正しく秩序立てられた議論よりもぼんやりした雰囲気の中で忖度が行き交い、大切な約束が反故にされ、大事な政策を決定してしまう空気ともいる現象だ。 安倍首相は2月の自民党大会で、「自衛隊の新規隊員募集に対して、都道府県の6割以上が協力を拒否している」と指摘したことに、事実誤認の声が上がっている。

防衛庁による2017年度の1741の地方自治体の調査によれば、「適齢者名簿を自衛隊に提出している」地方公共団体が36%あり、安倍首相は、これ以外の地方自治体が「拒否している」との論法だ。