オトナの土ドラ『絶対正義』フジテレビ系・土曜23時40分~)第7話。

殺人しておいて「正義は私たちにある」のか?
高規範子(山口紗弥加)を殺してから5年。

親権を取り戻し、息子と暮らせるようになった西山由美子(美村里江)。

不倫相手の妻が亡くなり、誰はばかることなく交際できるようになった女優・石森麗花(田中みな実)。

妊活が実を結び、自分の子どもを妊娠することができた理穂・ウィリアムズ片瀬那奈)。

そしてノンフィクションの賞に続き、範子の事件をモチーフにした小説でも賞をゲットした今村和樹(桜井ユキ)。

それぞれ、範子が死んだおかげで幸せに暮らしているようだが、差出人「高規範子」と書かれたパーティーの招待状が届いたことから、再び「範子が生きてるんじゃ……」と疑心暗鬼になる。

特に、同級生中屈指のインテリ・理穂が色々とヒドい。

「殺すきっかけを作ったのは由美子だよ。最後に落としたのは麗香」
「由美子は私たちよりも失うものが少ない」
「だって由美子だけが罪をかぶってくれれば、生活力のある私たちがあの子の家庭を援助できる」

貧乏人を見下し、人身御供にしようとする発言の数々。頭がいいだけに、ただただテンパる他の3人たちとは違い、冷静にヒドイことを言ってくる。

範子を殺したことに関しても、こんな風に正当化していた。

「みんなが乗ってる遭難したボートに無理やり乗り込んできたから範子を落とした。落とさなかったら全員死んでた」

……うーん、このたとえ、よく分からない!

それに乗っかった和樹の発言もビミョー

「範子も分かってるはず。だって正義は私たちにあるんだから」

あるか、正義!?

とにかく「絶対に負けない」(勝ち負けの問題か!?)ということで、4人でパーティーに向かうことになる。

時計に撮影機能って……
パーティー会場で待っていたのは、高校生になった高規律子(白石聖)。母・範子の高校時代にそっくり……というか同一人物だ。

範子を偲ぶ「思い出の会」だと聞かされて、ホッとした4人だったが、「母が最期に私たちに残してくれた置き土産です」ということで、ある映像が上映される。

範子の遺体はまだ見つかっていないものの、遺品として時計が発見された。なんとその時計には「動画撮影機能」が搭載されており、最期の瞬間が記録されていたのだ。

時計に動画撮影機能!? Apple Watchにもそんな機能ついてないよ!

まあ「サンコーレアモノショップ」あたりで売られていそうなシロモノではあるが、そんなレアなガジェットを常時装着していたとは……範子、かなりのギークだ。

原作では、範子の遺体もろとも崖から突き落としたクルマのドライブレコーダーにすべてが記録されていた……という設定だったので、ものすごく納得いったが、時計で撮影されていたというのは少々強引。

そういえば、崖から突き落とされた範子が最期の力を振り絞って意味深に腕時計を外していたが、犯人の証拠を残すためだったのか。

「自首します、ごめんなさい!」

謝罪をする由美子だったが、律子は、

「はあ? 自首なんて許しません。彼女たちは罪を犯しました〜、その代償を払ってもらいます」

麗香の不倫相手を含むテレビクルー&警察官たちを呼び込み、4人を地獄に突き落とす。

警察に連行される由美子に対し、「これがネットにアップされれば、お子さんは壮絶ないじめに遭い自殺を図るかもしれません」とダメ押し。

「私が万引した時も、あなたもそうしたじゃないですか」

母親を殺されたことに対する復讐というよりも、あの時、万引きを告発されたことに対する復讐なだろうか?(あれ、母親に構って欲しくてやった万引きじゃなかったのか)

範子の行う「正義」とも、また違う理屈で「正義」を振るっている。

最高級の豚は一番幸せな瞬間に殺される
結局、懲役20年の判決がくだった由美子たち。

ここから、若干話がよく分からなくなってくるのだが、死んだと思われていた範子が意識不明の状態で発見されたようで(?)20年のはずの懲役が早く切り上げられる。

意識不明のまま5年間も発見されずに生きていたの!? とか、途中で事情が変わったからって、そう簡単に刑期が変更されたりするの!? ……などなど気になるところは色々あるが、ひとまず置いておこう。

出所した4人を山荘に集めた律子は、例のチキンスープを作りはじめる。

「最高級の豚です。これをチキンスープに入れますね」

チキンスープに豚!?

「知っていますか? 最高級の豚って一番幸せな瞬間に殺されるんですよ」
「一番脂の乗った幸せの絶頂を迎えた時、殺されるんです」

ミートハンマーで肉をボッコボコに叩きながら恍惚の表情を浮かべる律子は完全にクレイジーの顔だ。

「私、そこに一種の正義を感じるんです。 だって豚は食べ物として生まれてきたんですから、その死に方は理にかなってると思うんですよね」

完全にイッちゃった人の理屈なので、まったく共感できないけど、由美子たちが範子を殺した(未遂だったが)のを最初から知っていて泳がせておき、幸せの絶頂で地獄に突き落とそうと計画していたということだろうか。

神回と、粗が目立つ回と、かなり脚本の出来にムラがある本作。

今回も穴がボコボコ空いていたが、とにかく白石聖ちゃんの演技に引き込まれた。

ピュア故に、行きすぎた正義を振りかざしていた高校時代・範子の演技もスゴかったが、「正義」云々というのは建前で、他人の人生を踏みにじること自体を楽しんでいるように見えるクレイジー・律子の演技はそれに輪をかけてスゴイ。

かつての範子は、自分の「正義」のせいでホームレスが死んだと知り、ピアノを演奏しながら泣いていたが、由美子たちを地獄に突き落とした律子は、ピアノを弾きながら大爆笑。

アゴの傷以外、見た目はまったく同じなのに、キッチリ範子と律子を演じ分けている。

ラスト、5年振りに意識を取り戻した範子が、シーツを身体に巻き付けた『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』の時の土方巽みたいな格好(分かりづらい!)で道を走っていた。

ここから、律子と一緒になって由美子たちに復讐するのか? それとも範子 VS 律子の母娘バトルが勃発するのか?

「土ドラ史上、予測不可能の最終回」ということなので、どんなことになっちゃうのか期待だ。
(イラストと文/北村ヂン

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『絶対正義』(フジテレビ)
原作: 秋吉理香子『絶対正義』幻冬舎文庫刊)
脚本:仁志光祐、谷岡由紀、政池洋佑
演出:西浦正記、浅見真史
主題歌:嘘とカメレオン「ルイユの螺旋」(キングレコード
音楽:木村秀彬、佐藤浩一
企画:横田誠(東海テレビ
チーフプロデューサー:市野直親(東海テレビ
プロデューサー:浅野澄美、郷田悠(FCC)
制作著作:フジクリエイティブコーポレーション
制作:東海テレビ放送

イラストと文/北村ヂン