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 これはコウイカの世界の話である。

 右利きのコウイカのオスは、交尾相手に恵まれ、さらに戦いにも強いことが判明したそうだ。

 コウイカのオスは、交尾の時と戦闘の時に使用する利き手が異なるようで、交尾の時は多くのオスが右利きとなる。一方戦闘時はその逆で、多くのオスは左利きとなる。

 なので両方右利きのオスが無双状態となるようだ。

 その理由は、少数派でありながら人間の左利きが現在まで存在していることと関係しているのかもしれない。

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交尾は右利き、喧嘩は左利きが多数派

 フランスカーン大学のアレクサンドラ・K・ファスト氏ら研究チームは、南オーストラリアスペンサー湾のコウイカの交尾の成功例と失敗例を観察してみた。

 交尾をしようとするオスのほとんどは「右利き」で、その方が成功確率が高いことが判明した。つまり、交尾前に右目でメスを品定めし、メスの右側から接近していたのだ。

 一方、オス同士の戦いとなると、ほとんどのオスは「左利き」で、左側から接近していることも判明した。そしてこの場合、右利きのオスのほうが勝ちやすかった。

 ちなみに、これらの行動は野生で観察された後に、実験室の中でも確かめられている。交尾でも喧嘩でも、やはり右利きのオスが上手くやってのけていたのだ。

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メスに右側から接近するコウイカのオス image credit:royalsocietypublishing

動物界に見られる利き手のアンバランス

 どうやらこのことは、人間の10人中9人までが右利きでありながら、ちゃんと左利きの人も残っていることと関係しているようだ。

 じつは動物たちには、圧倒的多数派の利き手というものがある傾向にあり、これを「側性化」という。

 不思議なのは、進化の観点から見た場合に片方のほうがうまく適合できるのだとしたら、なぜその利き手だけにならないのか? ということだ。

 さらに、その逆にもし右利きだろうが、左利きだろうが、生存する上で特に意味がないのであれば、利き手の偏りが生じるのはなぜか? という疑問もある。

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コウイカのオス同士の戦闘 image credit:royalsocietypublishing

多数派が有利になるケース、少数派が有利になるケース


 今回のコウイカの研究は、利き手の多数派のほうが有利な状況(交尾)がある一方、個々で見てみると、普通とは違うことをやったほうが有利な状況(戦闘)になるということを実証している。

 たとえば、交尾について考えてみよう。

 仮にコウイカのオスの大半が右利きであれば、メスはオスの行動を予測しやすいために、行動を合わせるのも楽だろう。結果、右利きのオスは交尾相手に恵まれる。

 反対に左利きのオスの行動は予測しにくいため、メスは行動を合わせづらい。そのために左利きのオスは苦労することになる。

 だがオス同士の喧嘩となるとまた状況が異なる。少数派(右利きのオス)のほうが有利になるのだ。交尾のときと同様に、相手から行動を予測されにくいからだ。

 
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photo by istock

 このことは左利きのスポーツ選手が優れた成績を収める傾向にあることと同じである。

 つまりコウイカも大抵は周囲に合わせて、無難に行動するほうがお得なのだが、たまに変わり者がいて、そのおかげで有利な立場に立てることがあるということだ。

 この研究は『Proceedings of the Royal Society B』に掲載された。

References:Righty Male Cuttlefish Are Better at Sex and Fighting/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52272412.html
 

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