妊活中、持病の片頭痛薬を使ってもいい?

先日、イクシル編集部に2人目を妊活中の女性Nさんから以下のような悩み相談が寄せられました。




【20代前半から片頭痛があり、吐いてしまい動くこともできない状態になります。1人目の産後から片頭痛が急激に悪化し、ひと月に10日ほど頭痛で動けなくなるようになってしまいました。このままではいけないと断乳をしてから、病院を受診したところ、毎日服用する予防薬の使用を勧められました。 2人目を考えるようになり、毎日飲んでいる薬が妊娠に影響するのかが不安になり始めました(ミグシスとランドセン)。もし、妊娠した場合、それまで薬は飲み続けていても大丈夫でしょうか?それとも、妊活中は頓服薬に切り替えた方が安全なのでしょうか?】というものです。




3人に1人が妊娠していることに気付かず薬を飲んで不安に

Nさんだけでなく、妊活中の薬の服用については気になるテーマですね。「妊活するなら、服薬中の薬はやめたほうがいい?」「風邪薬を飲んだ後に妊娠がわかって心配」など、不安に思う女性は少なくないようです。ある調査では、3人に1人が「妊娠に気付かず薬を飲んで不安になったことがある」と回答しています。(*1) 妊娠中であれば、かかりつけの医師に相談しやすいのでしょうが、妊活中となるとそうはいきません。



まずは医師や専門家への相談がベスト

前述のNさんのケースを医療法人オーク会 産婦人科医 田口早桐ドクターに尋ねたところ




片頭痛がひどいとのことで、つらい状態ですね。頭痛で通院している病院で担当の先生に妊娠を考えていることを伝えて相談してください。通常は妊娠が判明してからお薬を変更したりやめたりすることが多いですが、それも担当の先生の判断になります。(田口先生)】とのことでした。




Nさんの場合、かかりつけの医師がいらっしゃるので、薬について心配なことがあれば、まず医師や薬剤師などの専門家に相談するのがベストということです。適切にアドバイスを受けて、ぜひ不安を解消してくださいね。 では、市販の薬についてはどうでしょう?妊活中の薬とのつきあい方について紹介します。



妊娠3週目までは薬の影響はほとんどありません

妊娠前から3週目の妊娠1か月は、薬の影響はほとんどないといわれています。多くの薬は、飲んで1日ぐらいで体内から消えます。もし、妊娠を知らずにこの時期に市販の薬を飲んでしまってもクヨクヨ心配することはありません。それでも、どうしても不安が解消しない場合は医師や薬剤師に相談しましょう。 また、厚生労働省では「妊娠と薬情報センター」を設置して全国の協力医療機関で相談を受けられる体制を整えています。相談のすすめかたについては、ホームページまたは電話でご確認ください。 持病があって妊娠を考えている方も、薬の服用について相談できるので、ぜひ活用してください。




●妊娠と薬情報センター 受付時間:月曜日から金曜日(祝日を除く) 午前10時から12時、午後1時から4時 電話:03-5494-7845 ホームページ:http://www.ncchd.go.jp/kusuri/index.html 所在地:〒157-8535 東京都世田谷区大蔵2-10-1 国立成育医療研究センター内』




主な病気の時に飲む市販薬の注意点

妊活中、普段の生活の中で市販薬を飲むこともあると思います。一般的な病気と薬について説明します。

花粉症 妊婦さんで、花粉症の薬をがまんして症状が重くなっている方もいらっしゃいますが、安全性が確認されている薬もあります。また、点鼻薬や目薬は飲み薬より赤ちゃんへの影響が少ないため、飲み薬より安心して使えます。



●かぜ 短期間の服用であれば、薬の成分が赤ちゃんに影響することはまずありません。しかし、市販の総合感冒薬はさまざまな症状に対応した成分が入っているため、できれば医師にかかり「せき」「熱」「鼻水」など各症状の薬を飲むことをおすすめします。妊娠していても大丈夫かどうか確認することを忘れずに。 高熱の場合はインフルエンザの可能性があるので、早めに病院を受診してください。



●頭痛 痛み止めの薬(解熱鎮痛剤)は、妊活中にむやみに飲むのはやめ、医師や薬剤師に相談してからにしましょう。「アセトアミノフェン」という成分の薬は、妊娠中でも比較的安全性が高いとされていますので相談時の参考に。 妊娠後期に、痛み止めを飲むと赤ちゃんの健康に大きな影響を及ぼすることがあり、服用には注意が必要です。



●便秘 妊活中であれば、薬に頼る前に、まず運動や食生活、生活習慣の改善で自然な排便習慣をつけるのが大切です。それでも困ったら、医師や薬剤師に相談しましょう。漢方薬なら大丈夫というイメージがありますが、刺激が強い成分もありますので自己判断で飲まないようにしましょう。



●肩こり 湿布薬やステロイドなどの成分が含まれた塗り薬、症状のある部分だけに作用する局所薬のため吸収量も少なくまず心配ありません。しかし、一度に大量に使うのは避けましょう。



●目の病気 目薬は、少量な上、ほとんど体内に吸収されないため、用法・用量を守って使えば基本的には問題ありません。疲れ目やコンタクト用の目薬は妊娠しても使い続けることができます。 しかし、目のかゆみやアレルギー症状を抑える目薬に含まれる「プラノプロフェン」という成分のものは、妊婦さんへの安全性が確立されていませんので注意が必要です。注意書きに「妊婦または妊娠していると思われる人」は使用しないようにと注意書きがあるものは使用しないように注意しましょう。



インフルエンザ予防接種 妊娠中はインフルエンザにかかりやすく、症状が悪化しやすくなります。そのため、適切な時期に摂取することをおすすめします。 日本産科婦人科学会のガイドラインでも「インフルエンザワクチン接種の母体および胎児への危険性は妊娠全期間を通じてきわめて低いと説明し、ワクチン接種を希望する妊婦には接種する。」(診療ガイドライン産科編 2014、日本産科婦人科学会編)とされています。



●風疹予防接種 妊娠20週頃までに母体が風疹に感染すると、赤ちゃんの健康に障害が出る可能性があります(先天性風疹症候群)。赤ちゃんが欲しいと思ったら、すぐにでも医療機関で風疹の抗体の有無を調べてもらいましょう。 抗体がない場合、妊娠していないことが確実な時期(生理期間中かその直前直後)に、早めに予防接種を受けましょう。この時、パートナーと共に摂取するのがおすすめです。摂取後は、2ヶ月間は避妊が必要です(2回生理が来るまで)。



薬を飲むメリットとデメリットをどうするかの判断は専門的知識が不可欠です。 妊活中、市販の薬は慎重に。そして持病をもちながら妊活している方は、妊娠後の治療方針を含め、治療を受けている医師に早めに相談することが大切です。



〔参考資料〕 *1:一般社団法人くすりの適正使用協議会「妊娠・授乳と薬に関する調査」(インターネット調査2016年) (参考) 妊娠・授乳とくすり



回答協力:医療法人 オーク会 田口 早桐(たぐち さぎり)医師 日本生殖医学会生殖医療専門医、日本産科婦人科学会専門医、臨床遺伝専門医、母体保護法指定医。1990年川崎医科大学卒業後、兵庫医科大学大学院にて抗精子抗体による不妊症について研究。兵庫医科大学病院、府中病院を経て、現在、オークなんばレディースクリニック院長。国際学術誌への投稿、国内外学会での研究発表を数多く行う。 監修:医療法人 オーク会 不妊治療を中心とした女性の医学を専門とするクリニックグループ。 本院のオーク住吉産婦人科(大阪市)は24時間365日態勢で、高度生殖医療を扱う「リプロダクションセンター」や、婦人科手術を行なう「サージセンター」、入院施設を完備。
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