『博士と彼女のセオリー』(14)や『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(16)などで知られるフェリシティ・ジョーンズが、85歳でいまも現役の米最高裁判事として活躍しているルース・ギンズバーグの半生を演じた『ビリーブ 未来への大逆転』(公開中)。本作で描かれるのは、いまも語り継がれる“世紀の男女平等裁判”で、『ディープ・インパクト』(98)のミミ・レダー監督がメガホンをとった。来日したフェリシティを直撃し、本作に懸けた思いを聞いた。

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本作の舞台は、女性の社会進出が難しく、ほとんどの女性が結婚後、専業主婦になる道しか選べなかった1970年代のアメリカ。若手弁護士ルース・ギンズバーグは、結婚し、子どもを産んでからも、男性社会のなかで奮闘していく。そして、法律の専門家たちから「100%勝ち目がない」とされた男女平等を巡る裁判で、歴史的勝利を収める。フェリシティは、そのドラマティックな道のりを描いた脚本に心を揺さぶられ、「私は何年もこういう役を待っていた」と、主演のオファーを快諾した。

本作を、女性であるミミ・レダーが監督したことも功を奏し、現場ではより固い結束力が生まれたというフェリシティ。「やはり監督自身もまだまだ男性社会と言える映像業界で、いろいろな葛藤を抱えながらやってこられたそうです。監督の話を聞いて、私もよりルースの気持ちを理解できたし、監督の存在は私にとってとても心強かったです」。

フェリシティは撮影に入る前にルース本人と直接会ったり、過去の映像を観たりして、徹底的に役を作り込んでいった。「ルースさんに直接お会いして質問をすると、少し間を置いて、すごく慎重に言葉を選んで答えてくれます。彼女は万事においてすごく熟慮して行動する方。姿勢もとても良く、歩き方もすてきだし、まるでフクロウのような観察眼を持っているという印象でした。私は今回、そんな彼女に100%寄せようと思って演じました」。

夫のマーティンとの夫婦関係も良好なルース。マーティンを演じたのは、『君の名前で僕を呼んで』(17)などの作品で知られるアーミー・ハマーだが、彼については「本当にすてきな方で、裏表もなくて真っ直ぐな方でした。チームとしてお互いを支え合いながら、一緒に作品を作れました」と、現場でも良き関係性を築き上げていたようだ。

フェリシティ自身も、昨年6月30日に、映画監督のチャールズガードと結婚したばかりということで、結婚相手に求める要素についても聞いてみた。「やっぱりユーモアのセンスが大切で、一緒に笑える人。そしてお互いにリスペクトできて、良いコラボレーションができるかどうかが、真のパートナーになれるかどうかの分かれ目だと思います」。

クライマックスで、ルースが最終弁論をするシーンは、本作のハイライトの1つだ。5分32秒にわたるロングスピーチは、アメリカ映画史上で最も長いものだとも言われている。「脚本で5ページくらいのボリュームがあったので、最初は『これは大変だ』と不安になりました。でも、監督ともたくさん話し合い『物語がこの段階に行くと、きっと観ている人がルースのスピーチを聞きたいと思ってくれるはず』となったんです。それに、このシーンは映画の要とも言えるので、撮影に入る3か月くらい前から準備をし、法廷記録で残されている彼女の声を何度も聞いて、台詞を体にたたきこんでから本番に臨みました」。

本作は、年々、多様性を叫ぶ声が大きくなっているハリウッドにおいて、作られるべくして作られた作品だったのではないか。フェリシティ自身も「“#MeToo運動”以降、ハリウッドでは、男性も女性もパワハラを経験している方がたくさんいることが明るみに出たことで、働く環境においては透明性が増し、以前よりも健康的な業界に変わりつつあります。でも、まだまだ闘わなければいけないと思っているし、その変化がずっと続いていってほしいとも願っています」。

いまやハリウッドのトップ女優となったフェリシティに、女性が成功をつかむための秘訣についても聞いた。「壁にぶつかってしまっても、決してめげたりしないで、ルースのように心を強くもって、仕事を続けていくことだと思います。あとは自分を支えてくれる人や環境を整えることかと。何事も決して1人で成し遂げることはできないから、常に自分の味方になってくれる人を作っておくことだと思います」。(Movie Walker・取材・文/山崎 伸子)

『ビリーブ 未来への大逆転』のフェリシティ・ジョーンズにインタビュー