事情があり、高齢の家族を介護施設などに入れなければならないという家庭はどこの国にも存在するが、施設に入居した高齢者が地域社会から断絶され、孤独な時間を過ごすというケースも決して少なくない。このほどイギリスで、そうした高齢者たちに少しでも喜びや楽しみを与えようとある慈善団体が主催するプロジェクトが紹介され、104歳になる施設入居者女性の「逮捕されてみたかった」という願いを叶えることに成功した。『BBC News』『LADbible』『ITV News』などが伝えている。

イギリスの介護施設や老人ホームにいる高齢入居者たちの余生を豊かなものにするためのサポートを行う慈善団体「Alive Activities」が行っているプロジェクト“Wishing Washing Line”により、このほどブリストルの介護施設で暮らす104歳の女性が念願の夢を叶えた。

“Wishing Washing Line”は地元スーパー「Co-op(コープ)」との合同プロジェクトで、参加している各施設に設置した箱に投函された入居者らの願い事リストがCo-op内の洗濯物干し用ロープに吊るされると、そのリストを見た買い物客らが願い事を叶えるために立ち上がるという仕組みだ。施設にいる高齢入居者らが地域との繋がりを持ち、様々な創作活動に参加してもらうことで孤独や退屈さを感じないようにしてもらいたいという目的をもって運営されている。最初にエセックスで行ったこのプロジェクトは、多くの高齢者らの願いを叶えたことで大好評となり、このほどブリストルでも実施されることになった。

ブリストルのストーク・ビショップにある介護施設「Stokeleigh Residential Home(ストークリー レジデンシャルホーム)」の入居者アン・ブロークンブロウさんは、このほど願い事リストに「逮捕されてみたい」と綴った。この風変わりな願い事は、地元エイボンアンドサマセット警察ブライドウェル警察署の警官らによって3月20日に叶えられたのだ。

同署から施設へとやって来た数人の警官らは、アンさんに「今日、あなたを逮捕します。あなたは104年、善良な市民で居続けた。それが容疑です」と話しかけた。アンさんは認知症を患っているが、この時はしっかりと「わかりました」と答え、警官らに手錠をかけられパトカーへと連行された。

ランプを点滅させサイレンを鳴らしたパトカーに乗せられ、軽くドライブしたアンさんは、人生でこれまで味わったことのない経験をした興奮を次のように語った。

「とても素敵な一日だったわ。手錠もかけられたの。私はこれまで罪など犯したことがなくまじめな人生だったけど、今回は犯罪者になる気持ちを味わったわ。そうね、今度からもっと自分の言動には気をつけなくちゃいけないって思ったわ。警察官たちはとても親切だったし、初めて逮捕されて興奮したの。」

施設に入居して10か月になるアンさんは、孫たちはみな元気で、よく自分のもとを訪ねてくれるという。このプロジェクトの発案者であり最高責任者であるAlive Activitiesのサイモンバーンステインさんは、「施設の居住者は退屈で孤独になりがちです。施設職員らは多忙のために、居住者たちにこのようなアクティビティを促す時間がないという場合もあります。そこで我々が、高齢の居住者たちの願いを叶えるために立ち上がったのです。パブにビールを飲みに行ったり編み物をしたりなど、願い事はなんでもいいんです。中には、エルヴィスに会いたいというリストもありましたが、全ての願いを叶えることはできなくても、できるだけ実現できるよう地域住民らと協力して実行しています」と話している。

今回、104歳にして初逮捕の経験を味わったアンさんも、一生の思い出を作ることができたに違いない。

画像は『LADbible 2019年3月20日付「104-Year-Old Gran Is Arrested After Saying It Was Her Greatest Wish」(Credit: SWNS)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)

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