2年ぶりに帰ってきた「ひよっこ」とは  
朝ドラなのに夜放送?」 予告でナレーションの増田明美が注意を喚起している「ひよっこ2」。
2017年前期(4月〜9月)に放送された連続テレビ小説ひよっこ」が、2年ぶりに復活。2019年3月25日(月)〜28日(木)、4日連続で続編が放送される。夜7時30分から8時までの30分間の放送だから、お間違いなく。

ひよっこ」は高度成長期の日本が舞台。有村架純演じるヒロイン・みね子が茨城から東京へ集団就職で来て、最初の就職先・向島電機が倒産するも、洋食屋・すずふり亭で職を得て、たくさんの人たちと触れ合っていく、4年間に渡るほのぼのストーリー。
出稼ぎに出たお父さん・谷田部実(沢村一樹)が記憶喪失行方不明になったり、初恋の人・島谷(竹内涼真)が実家・佐賀に帰ることになって別れなければならなくなったり、ちょっぴり哀しい体験もしつつ、最後には、お父さんも戻ってくるは、新たな恋人ヒデ(磯村勇斗)にプロポーズされるはで、みね子はささやかな幸せを手に入れる。
おそろしい戦争体験をもつおじさん・宗男(峯田和伸)が「勝ったんだよ、勝ったんだ たった今、悲しい出来事に幸せな出会いが勝ったんだよ」「どうだあ、人間は強えぞ」と物語を締めると、最終週のサブタイトルは「ナミダクン、サヨナラ」にもかかわらず、涙、涙であった。
基本、ほのぼのあったか。ベースはペーソス。それらがみごとに絡まって、おいしくできたミートソースパスタのようなドラマだった。

脚本家の岡田惠和に以前、インタビューしたとき、制作意図をこのように語ってくれた。
朝ドラでは、ふつうの女の子が後にひとかどの者になることが定番ですが、それは、言い方を変えると極めて特殊な人ですよね。そういう人はクラスのうちの10人もいないわけで。それを、ドラマだから、朝ドラだから、という理由で、主人公は夢のある人というふうに決めるのも、ずいぶん強引な話だなって思うんです。高度成長期だからと言って、全員が上を目指していたわけじゃないし、目指さなきゃいけないわけでもないし、夢をもたないなんて何もない人生だ、みたいなアイデンティティの捉え方ではなかったと思います。ナンバーワンオンリーワンもとくに求められてなかったと思うんですよ。そういう考え方が、いま、生きている子たちの枷になっている気がするんです。一番になるとか、変わった人になるとかってことを、そんなに重いプレッシャーに感じることはないし、ふつうに生きているってことは、そんなに恥ずかしいことじゃなかったのではないかと思うんですよ。「何もない」と思われるみね子が、大志をもって生きている人と比べて、そんなにマイナスな存在ではなく、「ふつう」だよと思って書き続けました。”(otocotoより)
ほんとうにふつうの人生が心地よいドラマだった。

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スピンオフとは何が違うのか 
ひよっこ2」は、「ひよっこ」から2年後、みね子がヒデと結婚して、谷田部みね子から前田みね子になっているところからはじまる。朝ドラの続編というと、スピンオフドラマが思い浮かぶが、それは本編撮影中に制作するおまけドラマのようなもので、脚本家が監修をして、違う作家が書くことが多い。でもそれを好まない作家もいて、「半分、青い。」の北川悦吏子もそうで、岡田惠和もそう。岡田は「ちゅらさん」(01年)のときもパート2のみならずパート4まで続編を書いた。ほかに続編があったのは「私の青空」(00年 内館牧子)。
 
予告編や「もうすぐ! ひよっこ2」という番宣番組を見ると、あらすじとしては、みね子とヒデが茨城に里帰りすると、妹・ちよ子(宮原和)がなにか決意を語ったり、すずふり亭の鈴子さん(宮本信子)の様子がおかしかったり、みね子の幼馴染で無二の親友・時子(佐久間由衣)が夢をかなえて女優になったもののスキャンダルを起こしたり、いろんなことが起こる。実お父ちゃんの記憶回復はどうなっているかも気になる。

驚いたのは、「ひよっこ」に出てきたキャストがほぼほぼ登場しそうなことだ。朝ドラは長期にわたるので、「茨城編」とか「東京編」とか、東京でも「乙女寮編」とか「すずふり亭編」とかに細分化され、キャストも入れ替わっていく。

ドライなドラマだと、一度消えた登場人物はそのまま出てこなくなってしまう。それは「使い捨て」とも言われる。俳優のスケジュールの事情もあるので仕方ないが、そんななかでも、ときどき、台詞で消息が伝えられたり、あとになってサプライズ登場させたりして、盛り上げるというテクニックもある。
ひよっこ」の場合、使い捨てほぼほぼなく、キャラのファミリー感が極めて強かった。そもそも、4年間という朝ドラにしては短い期間しか描かなかったのも、子役を大人役に交代させず、同じキャストでやりたいという岡田の希望から。2でも、ちよ子も進もかなり成長した同じ俳優。そして、工場にいた松下(奥田洋平)や和夫(陰山泰)、茨城の先生・田神(津田寛治)、バスの車掌でいま村長候補の益子次郎(松尾諭)、親切な警官・綿引(竜星涼)なども出てきそうで胸アツ。
気になるのは、ふっくら陽気なタカちゃん役の佐藤仁美がこの2年の間に、ライザップ効果できれいに痩せてしまっていること。キャラ変してしまった彼女の扱いはどうなるのだろうか。

というわけで、「ひよっこ2」がはじまる前に、登場人物とその関係を簡単におさらいしておこう。

魅惑の登場人物たちのおさらい 

◯奥茨城
谷田部みね子→前田みね子(有村架純)…奥茨城村出身。東京に出稼ぎに来て、前田秀俊と結婚。すずふり亭で働いている。

谷田部実(沢村一樹)…みね子の父。東京に出稼ぎに出て、泥棒に殴られ記憶喪失になり、女優・世津子に世話になっていた。記憶はまだ戻ってないが、奥茨城に戻った。

谷田部美代子(木村佳乃)…みね子の母。帰らぬ実をじっと耐えて待っていた。

谷田部茂(古谷一行)…みね子の祖父。頼りがいのある人。農業をやっていたが、現在は実とともに花も作っている。

谷田部ちよ子(宮原和)…みね子の妹。歌合戦に応募して、家族で参加。

谷田部進(高橋來)…みね子の弟。

小祝宗男(峯田和伸)…みね子の叔父。インパール作戦に参加しトラウマを抱えながら、ビートルズを愛し、笑顔で生きている。

小祝滋子(南海キャンディーズ 山崎静代)…宗男の妻。こわそうに見えるが夫を愛している。男子3人の母。

前田秀俊(磯村勇斗)…みね子の夫。すずふり亭の料理人。

助川時子(佐久間由衣)…みね子の親友。女優になる夢をみごとに叶えた。

助川君子(羽田美智子)…時子の母。ものすごく娘思い。「ツイッギーそっくりコンテスト」に娘に内緒で勝手に応募していた。

助川正二(遠山俊也)…時子の父。母に比べておとなしめ。

助川豊作(渋谷謙人)…時子の兄。奥茨城青年団副団長。

角谷三男(泉澤祐希)…みね子の親友。時子に恋していたが、就職先の米屋の娘に慕われて、「ひよっこ2」の予告によれば晴れて結婚している。

角谷きよ(柴田理恵)…三男の母。バイタリティー旺盛。美代子と君子と「母の会」を結成、おしゃべりに花を咲かせる。

角谷征雄(朝倉伸二)…三男の父。

角谷太郎(尾上寛之)…三男の兄。東京に出たくても長男として家のリンゴ農家を継いでいる。奥茨城青年団団長。

角谷高子(佐藤仁美)…元・朝倉高子。すずふり亭で働いていたが、ひょんなことから角谷家に嫁入する。

綿引正義(竜星涼)…茨城出身の警官。故郷が同じだったことから、実探しに協力する。

田神学(津田寛治)…みね子たちの高校の先生。集団就職を斡旋する。

益子次郎(松尾諭)…元バスの車掌、いまは村長候補。


◯赤坂・すずふり亭 
牧野鈴子(宮本信子)…赤坂に古くからある洋食屋の店主。愛情にあふれた人。

牧野省吾(佐々木蔵之介)…鈴子の息子。妻を亡くしてひとり、洋食屋の料理長としてがんばっていたが、愛子と再婚する。

牧野愛子(和久井映見)…乙女寮の舎監だった。戦争で亡くした恋人を忘れられず独身だったが、省吾と結婚する。   

牧野由香(島崎遥香)…省吾の娘。母が過労死したのは鈴子と省吾のせいと思って、家を出ていた。
素直じゃない性格。  

井川元治(やついいちろう)…すずふり亭コック。ひょうきん者だが、「ひよっこ2」の予告編では「戦災孤児」だったことを明かしている。

安部さおり伊藤沙莉)…本名・米子だが勝手に「さおり」と名乗っている。三男がとても好き。

安部善三(斉藤暁)…米子の父で、米屋の店主。娘と仲が悪い。

◯赤坂・あかね荘とその近所
立花富(白石加代子)…あかね荘の大家さん。元赤坂の芸者で、客から恋人になった人物を思い続けていた。

島谷純一郎(竹内涼真)…みね子の初恋の相手。佐賀の製薬会社を継ぐため故郷に帰る。

久坂早苗(シシド・カフカ)…おしゃれなOL。恋人とともにアメリカに行く。

坪内祐二(浅香航大)…漫画家。貧乏だったが、やがて売れっ子に。

新田啓輔(岡山天音)…坪内とコンビで漫画を描いている。

竹内邦子(白石美帆)…バー月時計のママ。お客さんの出身地に合わせた方言で話すことを心がけている。

河本世津子(菅野美穂)…人気女優。記憶を失った実を家に住まわせていた。

福田五郎(光石研)…あかね荘の近所。福翠楼の店主。

福田安江(生田智子)…五郎の妻。

福田茜(上杉美風)…五郎と安江の養女。

柏木一郎(三宅裕司)…あかね荘の近所。和菓子屋・柏木堂の店主。

柏木ヤスハル(古舘佑太郎)…一郎の息子。アンコが嫌いで、歌が好き。

イチコ…薬局のマスコットキャラ。リニューアルしたあかね荘の制服はイチコのボディカラー。17年紅白歌合戦にも登場した。

◯向島電機 乙女寮
青天目澄子(松本穂香)…福島から集団就職して来た。のんびりしたメガネっ子食いしん坊おばあちゃんっ子。

兼平豊子(藤野涼子)…青森から集団就職して来た。学業優秀で、クイズ大会で優勝する。

秋葉幸子(小島藤子)…乙女寮のリーダー格でちょっぴり不良なところも。結婚して高島幸子に。

夏井優子(八木優希)…体が弱く、秋田に戻って結婚。仙葉優子に。

高島雄大(井之脇海)…乙女寮の歌の先生。幸子の恋人(のちに結婚)。音楽家をめざし、ウイーンに留学する。綿引とは思想は違うが、屋台でラーメンを食べる仲に。

松下明(奥田洋平)…向島電機、工場の主任。倒産後は電気修理の仕事をしている。
森和夫(陰山泰)…乙女寮の料理人。のちにレストランでみね子と再会する。
(木俣冬)

ひよっこ2」
制作統括:菓子浩
演出:黒崎博 堀内裕介
音楽:宮川彬良
主題歌:桑田佳祐(「若い広場」)
タイトルミニチュア制作:田中達也
タイトル映像制作:森江康太