米国がデフォルトになる可能性とは

まとめれば、米国は2021~22年までに、
(1)株価の30%下落
(2)金利の5%への上昇
があると、対外デフォルトして破産します。

デフォルトの寸前になると、米国が呼び掛ける第二のブラザ合意により、米ドルを1/2に切り下げることになるでしょう。

<対外負債はドル建て>

米国は基軸通貨国の特権として、対外負債はドル建てですが、海外株などの対外資産は現地通貨です。たとえば、日本株は30%の150兆円、ヘッジファンドがもっていますが、それは円建てです。

<対外資産は現地通貨建て:円建て、ユーロ建て、元建て>

ドル建ての対外負債は、ドルの1/2への切り下げにより、半分の20兆ドルの価値に下がります。一方で、26.4兆ドルの現地通貨建ての対外資産は、そのままです。1/2へのドル切り下げ(ドル安)を行うと、米国は一夜で、6.4兆ドルという世界最大の対外債権国に浮上するのです。

ドル切り下げのとき、ドル基軸体制も、順次、終焉に向かうでしょう。新たな国際通貨は、中国が提案しているIMFの通貨、SDRのようなものになるでしょう。

<中国の、国際通貨の提案は、IMFのSDRのようなもの>

中国の提案が通りやすいのは、中国がもっとも多くの米国債(3.1兆ドル)を買って、保有しているからです。債権者は債務者より強い。

1/2へのドル切り下げで、金額は同じ3.1兆ドルでも、価値は1.6兆ドルに下がります。損を甘んじて受ける債権者の立場は強くなります。日本も米国に対する債権者ですが、米国に支配されていて従属することでしか発言力はありません。

<日本の立場>

プラザ合意のとき、NYプラザホテルの会議に出席していた、竹下大蔵大臣は「友人がドル高で困っているから、助ける」と国会同答弁していました。このときも、日本はドル建て対外資産の価値低下で損をしています。

<日本の損害は260兆円>

次回のドル切り下げのときの、日本(外貨準備をもつ政府、米国の株、国債、外貨預金をもつ金融機関やファンド、直接投資した対外資産をもつ企業、外貨預金をもつ世帯)の損は巨大です。

対外資産1,040兆円のうち、65%はドル建てでしょうから、損は「1,040×65%×50%=260兆円」です。ドル切り下げは、米国の金融危機を、日本に移転させる効果をもちます。ドル債を買ってドル基軸体制を支えてきた日本の、自己責任になるでしょう。

2021年から2022年に、このリスクが発現するかもしれません。米国の対外負債は、米国の経常収支は、構造的な赤字ですから、返すことはなく、毎年、確実に累積します。

米中貿易戦争や、これからの日米貿易協議によって減らせる赤字は、米国を黒字に転化させるには、程遠いものです。

米国の経常収支の赤字(2018年は1兆ドル以上)が、米国の対外債務の増加になるのは、以下の、国際金融のメカニズムによってです。

(1)米国への輸出企業と、投資からの所得がある企業は、米国の企業からドルを受けとる。
(2)国内の仕入れ代金と給料の支払いのため、日本企業は受け取ったドルを銀行で円に交換する。(注)これが、ドル売り/円買いです。
(3)銀行に貯まったドルは、財務省国庫短期証券を発行した円で、買い上げる。(注)財務省による、ドル買い/円売り。
(4)財務省に、ドルが溜まる。これが、対外資産の一部でもある外貨準備です。
(5)海外の債券を買う企業は、銀行で円をドルに交換する。(円売り/ドル買い)
(6)そのドルで、米国の不動産に直接投資をし、工場をつくる。
(7)または、米国株、米国債、社債を買う。
※注:この(6)と(7)が対外投資であり、米国にとっては対外債務になります。

経常収支が構造的に赤字の米ドルを、他の通貨より価値が変わらない基軸通貨として認め、支えてきた世界は、米国の対外債務の増加から危機に向かっています。いずれ、しかし、必ず起こることを想定していたユーロ19か国は、ドイツを先頭にしてドル圏かから2000年に逃げていたのです。ドル切り下げの被害がもっとも大きな国は日本、2位が中国、3位が産油国です。

本号はここまでとします。次は、経済メディアでも取り上げられ、ドルに次いで世界に大きな影響を及ぼすリスクとして浮上してきた、中国の債務の問題と予想です。

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