オーダースーツって、「なんだか敷居が高そう」だし、「値段が高そう」だし、よく分からないことが多い……。そんなイメージを払拭してくれたのが、スーツのカスタムオーダーサービスを展開する「FABRIC TOKYO(ファブリック トウキョウ)」。実際に新しいスーツを作ってみて、これまでスーツのことをあんまり好きになれなかったのは、自分のサイズだけでなく“価値観”にもフィットするスーツを着てこなかったからなんだって気がついた。いま知りたいのはファッションのトレンドではなく、洋服の本質の部分だ。

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「FABRIC TOKYO」は、リアル店舗とインターネットを融合させることで、まったく新しいオーダースーツ体験を提供している2014年創業のベンチャー企業。2019年3月現在、都内を中心に計8店舗を構えており、街中で目にした人もいることだろう。

面倒なイメージもあるオーダースーツだけど、「FABRIC TOKYO」の利用方法はいたってシンプル。まずは「FABRIC TOKYO」公式サイトから来店の予約をして、実際に店舗に足を運んで採寸する。あとはスマホやパソコンでじっくりカスタムして、好きなタイミングで注文するだけ。これまでのオーダースーツと大きく違うのは、入口と出口が“インターネット”だということだ。

そうは言っても分からないことはあるし、まだまだ不安な点もある。そこで今回は「FABRIC TOKYO 銀座店」にお邪魔して、実際にスーツのカスタムオーダーサービスを試してみることにした。

予約した時間に店舗へ到着すると、出迎えてくれたのは「FABRIC TOKYO 銀座店」コーディネーターの石井龍さん。オーダースーツというと、正統派の老紳士が待ち構えているのでは……なんて勝手なイメージがあったけれど、石井さんは爽やかな洒落オトコ。オーダースーツ初心者の筆者には安心感が生まれて、良い意味でハードルが下がった瞬間だった。

ちょっとした立ち話で盛り上がったところで、早速オーダースーツ作りを開始する。マイページを作成するために、氏名などの基本情報から身長・体重などの情報を入力すれば準備完了。なお採寸後には、肩幅や袖丈、ウエストなどの詳細なデータが登録される。

スーツのカスタムオーダーが面倒に感じる理由は、生地の種類が多すぎることにもあるだろう。もちろん様々なバリエーションから選べるのはありがたいけれど、豊富な知識や強いこだわりがあるわけではない人にとっては、それだけでひと苦労。

その点「FABRIC TOKYO」には、カスタマイズできる生地が壁一面に並べられた「Fabric Wall」が設置されている。一目で生地が見渡せるから、直観的に選べるというメリットがある。生地選びというちょっと面倒な作業を、楽しい体験に変えてくれるはずだ。

もっとも重要な採寸は大きく分けて、2回行われる。最初に約15分間で全身のサイズを測った後、自分のサイズに合ったジャケット、パンツに着替える。その後、約30分間かけて細かな調整をしていくという流れだ。

コバヤシさんは肩幅がしっかりしている一方で、なで肩、そして巻き肩でもあります。なかなか既製のスーツが合いにくそうなので、こちらも作り甲斐があります!」

コーディネーターの石井さんは、自分でも気が付いていなかった体形の特徴を見抜き、採寸を進めていく。巻き肩を考慮してショルダーラインを少し前に詰めるなど、オーダースーツならではのカスタムも提案していただいた。

「FABRIC TOKYO」は、「Fit Your Life」というコンセプトを掲げている。これは身体のサイズに“フィット”するのはもちろん、着る人のライフスタイルや価値観にも“フィット”するスーツを作るという思いから。

筆者は普段からルーズなパンツを好んで履いており、その旨を伝えたところ「一般的には膝下からテーパードをかけるのが流行っていますが、コバヤシさんの雰囲気には太いパンツが似合いそうですね」とのこと。ファッションの正解やトレンドだけを提案するのではなく、ユーザー個人の価値観をヒアリングしたうえで提案してくれたことに「Fit Your Life」を体現していると感じた。

一通り採寸が終わったら、あとはスマホやタブレットでカスタムするだけ。ここで帰宅して後からゆっくり選んでもいいけれど、今回はプロに意見をいただきながら作っていくことにした。

「どのようなシチュエーションで着用されますか? もし特に希望がないなら、この部分はスタンダードなタイプにしておきましょう」

分からないことだらけの初心者にも分かりやすく、各オプションの説明とアドバイスをいただく。ジャケットボタンやラペル、ベントなど10ヵ所以上がカスタムできるから、自宅でお酒を飲みながら、こだわりのチョイスをしていくのも楽しいかも。

トータル約1時間でオーダー終了。日本製のオーダースーツが3万7800円から作れるので、はじめての人でも気軽に試せるのが魅力のひとつだ。しかし値段以上に伝えたいのは、今回のオーダー体験がとても充実した時間だったということ。身体のサイズや特徴、さらに価値観や好みをしっかりと把握していただき、その上で自分にフィットする一着を作るというのは、これまでに出会ったことのない経験だった。昔からスーツがあまり好きではなかった筆者だが、いまは早くスーツが着たいという不思議な感情に襲われている。到着までは約1か月間かかるので、はやる気持ちを抑えて気長に待とう。

なお今回のスーツは、作り手全員の顔が見えるモノ作り「FALKLAND TO TOKYO」プロジェクトの生地を選んだ。アルゼンチンからインドへ、そして日本の愛知県から青森県千葉県へ渡るストーリーとは……。次回の記事では、本プロジェクトの概要や背景をお伝えしよう。

関連サイト
FABRIC TOKYO

textコバヤシユウタ(編集部)

photo 千葉 顕弥
(d.365

掲載:M-ON! Press