映画「スタンド・バイ・ミー」「ミザリー」などを手がけたロブ・ライナー監督が「記者たち 衝撃と畏怖の真実」のPRで初来日しました。同作は、2002年の米軍のイラク侵攻が始まろうとしていた時、米国中の記者が大統領を支持する報道を続ける中、ナイト・リッダー社ワシントン支局の記者、ジョナサン・ランデー(ウッディ・ハレルソンさん)とウォーレン・ストロベル(ジェームズ・マースデンさん)は、大統領の発言に疑念を抱き…真実に追った記者たちの奮闘を描いた実録ドラマです。

 オトナンサー編集部では、ライナー監督にインタビューを実施。映画化への思いを約15年間維持できた理由、モデルとなった記者たちとの話し合いなどについて聞きました。

記者たちと真のコミュニケーション

Q.約15年間、この題材で撮りたいと思われていたそうですが気持ちを維持できた理由は。

ライナー監督(以下敬称略)「ベトナム戦争はうそが基盤だったにもかかわらず、戦争が始まってしまいました。イラク戦争の時も同じことが起きていて、その頃から映画にしなければと思っていましたが、どういう切り口で撮るべきか見えていませんでした。

数年たち、ジョンソン大統領ホワイトハウス報道官のドキュメンタリーを見ました。その時に、ナイト・リッダーの存在を知りました。彼らの物語は誰も知りませんでしたし、一般市民に真実が届いていないと、政府や政権が好きなようにできてしまうということを感じました。ナイト・リッダーの記者の働きに目から鱗が落ちました」

Q.モデルとなった元ナイト・リッダーの記者たちとどんな話をされましたか。

ライナー「脚本を作る際、改稿するたびに読んでもらってコメントをもらいました。現場の撮影にも毎日来てくれ、『これは正しい』『こんなことはしません』とその場で言ってくれました。まさに真のコラボレーションでした」

Q.私たちは、どのような意識でニュースを見るべきでしょうか。

ライナー「インターネットの持つ力は想像以上に大きくなっており、誤った情報やうそを簡単に広げられます。フェイクニュースではなく、誠実なニュースであるか見極めるのは難しいです。全員が知恵を合わせ、良い方向にインターネットなどの力を使うことを考えなければなりません。誇りを持ったジャーナリストが新しいニュースの機関を作り、そこで情報を発信するとか…ただ、収益性は悪いと思います。収益性を望むとクリック数で測られてしまうからです」

Q.実際の出来事を映画化する際、気をつけていることは。

ライナー「一般の方が歴史を知ろうとする際、テレビや映画で知ることが増えています。歴史的な事件を描くときは、正確に描く責任を感じています。イラク戦争の直前の米国がどうだったのか、この映画で写していることは真実です。作り手としては、白熱したやり取りやドラマティックなことをしたいですが、忠実に描こうとするとできないこともあります」

Q.「スタンド・バイ・ミー」がご自身に一番近いとおっしゃっていました。詳しく教えてください。

ライナー「父は有名な役者で比べられることが多かったです。『スタンド・バイ・ミー』で初めて自分のパーソナリティー、感受性に一番近い純粋に自分らしい作品を撮ることができました。初めて自分らしいものが撮れて、見た人たちから認められたことで、一人の人間として認められました。30代だったのですが、『スタンド・バイ・ミー』のように、子どもから大人になる通過儀礼でした」

Q.日本はいかがですか。

ライナー「『スタンド・バイ・ミー』の公開以降、ずっと来たかったのでようやく念願がかないました。米国の次に『スタンド・バイ・ミー』を大事にしている国だと感じていて、何か通じる部分があるのではと興味がありました。取材前に来日して堪能していました。日本食はとてもおいしいです」

 映画「記者たち 衝撃と畏怖の真実」は3月29日TOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開。

オトナンサー編集部

ロブ・ライナー監督