筋トレ好きの人は、鶏のささみや胸肉ばかり食べている──そんなイメージがあるかもしれません。実際そういう人は多いのですが、それはちょっと古い情報なんです。今、筋肉をつけたい人たちが食べているのは、ズバリ「牛肉」です。

 なぜ牛肉を食べているのかというと、お目当ては「クレアチン」という成分。食事から摂取されたクレアチンは、人間の筋肉の中にエネルギー源として貯蔵されます。特に短距離走や重量挙げなどの瞬発系のスポーツで、大きなパワーを瞬間的に発揮しなくてはならない時に欠かせない成分なのです。だから、アスリートの世界では、このクレアチンをサプリメントとして積極的に摂る人が多くいます。

 このクレアチン、実は、それだけでなく、筋肉の発達、肥大にも効果的であることがわかっています。

 実は、私も最近、サプリメントクレアチンを摂りはじめ、その効果のすごさを実感しています。具体的にいえば、筋トレで高重量のプレートを持って、スクワットやベンチプレスでセットを重ねると、いつもなら途中から出力が落ちて持ち上げられなくなるのですが、このサプリを飲み始めてみると、出力がなかなか落ちにくくなったのです。

 バテることなくトレーニングが続けられるため、より筋肥大が期待できる、ということです。そんなわけで、この「クレアチン」が多く含まれているのが牛肉なんですね。だからトレーニーの人たちは、牛肉を積極的に食べているわけです。

 ただし、体を絞りたい人にとっては、「やっぱりささみの方が、低カロリーで良いんじゃないの?」と思う方も多いのではないでしょうか。

 では本当にそうなのか検証してみましょう。

鶏のささみと牛肉の成分比較

 上の表を見ると、確かに鶏のささみは一番低カロリーです。しかもたんぱく質は多く、脂質が少ない。でも、よく見ると牛ヒレ肉は、鶏のささみとさほど変わらないことがわかります。

 そして、ここから肝心なのは、この表には載っていない「プリン体」のこと。プリン体といえば「痛風の原因」というイメージの方も多いかも知れませんが、プリン体は実は、さまざまな食べ物に含まれる“旨み成分”です。また、人のカラダの中で、生成されたり、分解されたりします。

 分解されると尿酸になり、尿と一緒に体の外に排出されますが、プリン体を多く摂り過ぎて、なおかつアルコールなどによって尿酸が多く作られ過ぎると、排出が追い付かなくなります。結果、体内に蓄積された尿酸が悪さをして「痛風」になるんです。

 ちなみに「プリン体」が多い食べ物は、100gあたり200~300mg以上のプリン体を含んでいるもので、レバー類、白子、魚介類のエビ、イカ、カツオイワシ、カキや、干し椎茸などあげられます(プリン体の量に関しては公益財団法人痛風財団のHPを参照してください:http://www.tufu.or.jp/gout/gout4/447.html

レバーはとくにプリン体が多いので食べ過ぎには要注意
レバーはとくにプリン体が多いので食べ過ぎには要注意

 そして、意外にプリン体が高めなのが、鶏肉で、中でも鶏のささみは100gあたり153.9mgもあるんです。

 私の知り合いにはボディメイクをする方がたくさんいますが、我流のボディメイクをやっている人で、痛風になってしまった方を何人か見てきました。その方たちの共通点として、【1】飲酒習慣があり、【2】ささみや鶏ムネ肉を大量に摂取していたことです。

 ですから、低カロリー高たんぱくだからといって、極端に鶏のささみばかりを食べ過ぎるのは注意しなくてはいけないんです。

 一方、牛のヒレ肉のプリン体は100g中98.4gと少なめ。さらに、筋肉作りに役立つ「クレアチン」を多く含むので、正しいボディメイクを行っている人たちは、とくに牛ヒレを好んで食べているんです。

「牛ヒレ肉」は値段が高いんじゃないの? という人もいるでしょう。確かに「和牛」のヒレ肉は高いです。しかし、先ほどの表を見てもわかるように、和牛はヒレ肉でも脂質もカロリーもサーロイン並に高め。

 筆者のイチオシは、「アメリカンビーフ」の牛ヒレ肉。和牛よりずっと脂質が低く、しかも安い。ボディメイクしたい方は、筋トレをしつつアメリカンビーフのヒレ肉を積極的に食べてみてください。

(取材・文◎土原亜子)

●お話を聞いた方

宮本健太郎

宮本健太郎

エベレストフィットネス』代表。日本体育大学卒 第一種高等学校教諭(保健体育)。全米ストレングス&コンディショニングスペシャリストNSCA認定パーソナルトレーナー。大学生時代よりプロボクシングでの競技生活をスタート。競技引退後は某有名ボクシングジムのチーフトレーナーとして後進の育成に従事し、2011年から2018年3月までこの職を勤めトレーナーとしてのスキルを磨く。今季夏より独立し、ボクシング&フィットネスのジム『エベレストフィットネス東高円寺』を経営。
https://everest-fitness.jp

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