社長もオタク、社員もオタク、お客さんもオタクというオタク特化の不動産会社おたくのやどかり”をご存じだろうか。

 オタク友達から「引っ越しでめちゃくちゃお金を取られた」「不動産会社の対応が最悪だった」という声を受けて、平田知彬氏(平田社長)が設立したオタク向け不動産会社おたくのやどかり”

 会社の公式サイトでは不動産業界の闇をコミカルタッチに暴露する傍ら、日々オタクの引っ越しのサポートを行い、これまで引っ越しを手掛けたオタクの数は1000人を超えるとのこと(2019年3月時点)。

おたくのやどかり公式サイトはコチラ

 ニコニコニュースオリジナルでは、去年の6月に平田社長にインタビューを行い、「オタクは本当に不動産会社にぼったくられているのか」をはじめ、業界の裏話やオタクの物件探しエピソードをうかがった。

・「オタクは引っ越しでぼったくられている」オタク特化の不動産会社代表が語る業界の裏側

 今回は、前回のインタビューより約10ヵ月が経ち、新鮮なオタクの引っ越しエピソードも溜まったころだと思い、おたくのやどかり社長の平田知彬氏と執行役員のやしろあずき氏へインタビューを実施。現代におけるオタクの引っ越し事情から引っ越しで失敗しないためのコツをお聞きした。

平田社長(右)とやしろあずき氏(左)。

■平田社長@hirata020
おたくのやどかり社長。ゲームが好きすぎて仕事終わりに毎日ゲームセンターへ通うほどのゲーマー。自身のツイッターを社員に監視されている。最近仕事が忙しすぎて髪の毛の色が大変なことになっているのが密かな悩み。

やしろあずき@yashi09
人気漫画家かつ、おたくのやどかり†執行役員†。マンガ連載の仕事をきっかけに平田社長と知り合い仲を深める。自身の引っ越しもおたくのやどかり。不動産会社によくいるウェイ系が苦手。

取材・文:竹中プレジデント

オタクのタイプ別物件のこだわりポイント

──前回のインタビューでは、実況者は防音だったりコスプレイヤーは収納だったり、オタクのタイプによって重要視する物件の条件が違うというお話を聞かせていただいたんですが、今回はさらに掘り下げてお話をうかがえればと思っています。

平田社長:
 了解です。ただ、あくまで引っ越しのお手伝いをしてきてのお客さんの声だったり傾向だったりを見て、こんな感じかなって思っているものなので、これが絶対ではないのはご注意ください。

やしろあずき
 オタクとひと口に言っても、いまやジャンルの幅がかなり広がっていろいろなオタクがいますもんね。

平田社長:
 オタクの中でもとくに、ゲーマー、実況者(配信者)、コスプレイヤー、クリエイターの方々はかなり特徴的です。 やしろさんも特徴的でしたよ。

やしろあずき
 そんなにこだわったところありましたっけ?

平田社長:
 ありましたありました。

──では、やしろさんもいらっしゃいますし、まずクリエイターの方から教えてください。

平田社長:
 承知しました。重要視したい条件の中でもその度合いに差があるものもあるので、優先度SとAのふたつにランク分けして紹介していきたいと思います。

クリエイター

優先度S:広さ、防音
優先度A:―

平田社長:
 クリエイターさんだとなにより広さですね。自宅が仕事場みたいなものですし、家ですごす時間も長いので。

やしろあずき
 あー確かに。基本的に家から出ない仕事なので住む場所にお金をかけたい気持ちは僕もありました。

平田社長:
 後は防音もマストです。実況者の場合は自分が発信する音を防ぐために防音が大事なんですが、クリエイターの方は逆に外から音が来ないために防音が必要なんです。

 たとえば漫画家の阿東里枝さんの引っ越しをお手伝いしたときは、「音で集中できないので静かなとろこがいい」という希望があって、周囲が静かな地域の物件を探しました。

──やしろさん的に物件を探す際にこだわったポイントはありました?

やしろあずき
 取材や打ち合わせで都心に向かうことが多かったので駅から近い物件です。もともと駅からものすごく離れた場所に住んでいたので。

平田社長:
 そうそう。後はタワーマンションというのも希望されていて。

やしろあずき
 夢としてタワーマンションには人生で一度は住んでみたいという気持ちもあって。これは平田さんからの受け売りでもあるんですが、がんばって仕事して収入に見合った場所に住むと、もっと仕事をがんばろうとやる気に繋がるんですよ。

平田社長:
 僕の持論なんですが、クリエイターの方のように自分の腕一本で食べていく方々は家賃の高いところに住んで仕事をがんばるというのが大事だと思うんです。この家賃に見合うにはどういう活動をしたらいいだろうっていう発想になって、いい仕事に繋がるケースも実際に多いんです。

やしろあずき
 僕自身も実際に引っ越してからめちゃくちゃ仕事が増えました。

平田社長:
 ただ、条件に関してやしろさんは若干特殊ケースです。基本的にイラストレーターや漫画家の方は場所にこだわらないんです。都心から遠くても原稿は書けますし田舎のほうが家賃も安いので。

実況者

優先度S:防音、回線
優先度A:防犯

平田社長:
 実況者さんはダントツで防音と回線です。とくに実況者は大声出したり叫んだりする方も多いので防音は大事。

まんが:おたく不動産社長と巡る業界の闇第14話「絶対抑えたい『オタクの引っ越しポイント』」

──防音は納得です。ちょっと気になったのがこの回線って選びようがあるんですか?

平田社長:
 選べるには選べるんですが普通の不動産会社で探すのはかなり難しいと思います……。「ネット回線のいい物件」と言ってるのに〇〇(悪いと評判の回線)物件を「ここはネット使えるからオススメです」って紹介されて、怒ってうちに来た方もちらほらいるので。

やしろあずき
 あるある。FPSや格ゲーやっている方のこだわりを知らないので「ゲーム? 普通に大丈夫です!」って言うんですよ。

──文化として知らないんでしょうね。

平田社長:
 高速回線だとNURO光があるんですがこれがまた入れるのが難しいんです。

──どんな理由が?

やしろあずき
 入れるためには壁に穴を開けなくちゃいけないんですよ。

平田社長:
 そうです。ただ、高層マンションだと壁に穴が開けられないのがほとんどで、逆に入れられる物件を見ていくとアパートタイプなので今度は防音面でおすすめできなくて、噛み合ってないんです。

 その物件自体がSSレアキャラみたいなものです。ここがおたくのやどかりが他社とは圧倒的に違うところで、NURO光を入れられるところをうちでは探すことができます。

──それってほかの会社ではできないことなんですか?

平田社長:
 やろうと思えばできます。が、基本的にかなり手間です。さらに独自のコネクションも必要なので……。

──NURO光を入れるのってそんなに大変なんですね。

平田社長:
 そうなんです。もしNURO光の入っている物件が難しくても、うちではFPSや格ゲーを快適にプレイできる回線の物件をご紹介できます。このあたりはおたくのやどかりの強みですね。

ゲーマー

優先度S:防音、回線
優先度A:場所

平田社長:
 続いてゲーマー、ここではプロゲーマーを指していますが、基本的に実況者と同じです。

まんが:おたく不動産社長と巡る業界の闇第14話「絶対抑えたい『オタクの引っ越しポイント』」

やしろあずき
 違う部分としてはランクAの場所ですね。実況者だとここは防犯でした。

平田社長:
 実況者ってネタにされやすいので自宅に凸られやすいんですが、プロゲーマーの方はそこまで意識しなくて大丈夫。逆にプロゲーマーはイベントや大会で外に出ることが多いので場所が大事になってきます。

──間取りとか景色とかで特定する特定班いますからね。恐ろしい……。

やしろあずき
 僕もネットでネタにされることは多いのでセキュリティ面はしっかりしたところを選びました。前の家は特定されたので(笑)。

──ち、ちなみにカラーコーンって本当に……?

まんが:おたく不動産社長と巡る業界の闇第11話「失敗すると地獄!?引っ越し後のトラブルについて」

やしろあずき
 ガチです。

平田社長:
 家に行ったらめっちゃあった。

やしろあずき
 いまの時代、SNSに自宅の写真をあげると、間取りや窓からの景色で住所が特定されるのはある程度仕方ない部分なので、特定された場合も考えて防犯面は大事です。部屋にさえ来られなかったらなんとか(笑)。

──(笑)。

コスプレイヤー

優先度S:広さ(収納)、年数
優先度A:防音、防犯

平田社長:
 コスプレイヤーさんだと広さ、ただクリエイターの方とは違って収納スペースの多さが大事です。

まんが:おたく不動産社長と巡る業界の闇第14話「絶対抑えたい『オタクの引っ越しポイント』」

やしろあずき
 衣装がたくさんありますからね。

平田社長:
 はい。後は純粋に女性の方が多いので、築年数が浅くてキレイな物件が大事かなと僕は思っています。防犯も同じです。

──この防音っていうのは?

平田社長:
 自分で衣装を作るためにミシンを使うんですよ。このミシンの音がめちゃくちゃうるさいので。後、パフォーマーの方はパフォーマンスの練習もするのでそのスペースがほしいと。

 なので、コスプレイヤーの方は生活スペースとは別にひとつ専用の部屋を作れるような間取りの物件を希望する方も多いんです。