形が歪んでいることやその様子を意味する「いびつ」。

この言葉を漢字で書くと、「飯櫃」あるいは、「歪」となります。漢字が示しているように、もともと炊きあがったご飯を釜から移し替えるための容器「飯櫃」(いいびつ)のことで、丁寧にいうと「おひつ」(お櫃)となります。「櫃」とは、二のついた木製の容器のことで、今でいう「ジャー」のようなやくわりをしていました。

昔の「おひつ」は完全な円形ではなく、楕円形になっていたことから、転じて歪んでいるものを指す言葉になったと考えられています。

ちなみに、千葉県芝山町には戦国時代、この飯櫃に由来する「飯櫃城」という城があり、同地国人・山室氏の居城になっていました。

もう一つの漢字である「歪」ですが、この字は「ゆがみ」(歪み)と「ひずみ」(歪み)と書くこともできます。

「ゆがみ」も「ひずみ」も、両方とも「本来の形が変形していびつになること」を指す言葉ですが、「ゆがみ」が主に使われるのは、本来の形が直線や平面であったものが、何らかの作用によって変形する場合です。

また、「ゆがみ」は、「心がゆがむ」「性格がゆがむ」など、比喩表現として心や性格に使われる場合があります。このように「ゆがみ」が主に使われるのは、ある物の形がゆがんだ結果として生じたズレを言い表す場合です。

一方、「ひずみ」という言葉は、「変形によって生じたズレ」そのものを指しています。物理学の分野などでは、ある物体が外から力を受けたり温度変化によって生じる形や体積の変化のことを「ゆがみ」とは言わず「ひずみ」と言います。

また、「ひずみ」は音声にも用いられ「ラジオやテレビのスピーカーの音声がひずむ」などといいますが、このような表現も「ゆがみ」にはない「ひずみ」独自の使い方です。

「いびつ」「ゆがみ」「ひずみ」、それぞれの使い分けができるようになりましたか?

参考資料:『三省堂国語辞典 第七版』三省堂

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