オリヴェイラ監督は「好みであることは隠さない」システムを中断期間にテスト

 浦和レッズは30日のJ1第5節、首位のFC東京を迎えたホームゲームを1-1で引き分けた。この試合で浦和は昨年6月以来の4バック導入に踏み切ったが、オズワルド・オリヴェイラ監督はその理由を二つに分けて語っている。

 浦和は今季、シーズン前にDF山中亮輔、DF鈴木大輔、FW杉本健勇といった日本代表経験者に加え、ポルトガルの名門ポルトからブラジル人MFエヴェルトンを獲得している。彼らの共通点は4バックのチームでプレーした経験を持つことで、元よりオリヴェイラ監督が「好みであることは隠さない」と話していたシステムをシーズンの初めから導入するのではないかという予想もあった。

 しかし、それとは裏腹に沖縄県で行われた2回のトレーニングキャンプでは一貫して3バックで進め、公式戦が始まってからも7試合連続で3バックを継続していた。しかし、このタイミングでオリヴェイラ監督は4バックに変更している。その理由の一端は、「キャンプでは武藤と青木がおらず、新加入した選手たちのこともよく理解していませんでした。変化を加えるためには、私が手元に持つ素材をより良く知ろうと思いました」と、理由の一つ目が昨季の最終盤で負傷して出遅れたFW武藤雄樹とMF青木拓矢の復帰と、新戦力の捉え方だと話した。

 その見極めが済み、3月17日リーグ第4節セレッソ大阪戦の後に代表活動期間が生まれたことで「今回の中断期間を利用して、練習試合の中でテストしました。このせっかくある時間を、4バックの練習に投資しました。これが上手くいかなければ、3バックに戻すだけという状況でした」と、25日に非公開で行われた順天堂大学とのトレーニングマッチを契機に踏み切ったのだと話す。

システム変更の理由は攻撃の機能性 「今後さらに良い方向に向かうと思っています」

 そしてオリヴェイラ監督は、セレッソ大阪戦までの公式戦7試合で3勝2分2敗と、成績そのものは極端に悪いとは言えないなかで変更を加えた理由は、攻撃の機能性にあると明かした。

「今までの戦いを見ると、得点を奪うにはアグレッシブさが少し足りないと感じていました。私たちは中盤の選手の枚数を増やしたので技術が高まり、ポゼッション率も高まったと思います。柏木、長澤、武藤がいることでボールが落ち着くことに疑いはありません。その中にエヴェルトンもフィットしてきているので、今後さらに良い方向に向かうと思っています」

 昨季の時点では「質の高いセンターバックが多いことがチームの支えになっている」と3バック採用の理由を話していたが、オリヴェイラ監督の戦略では次のステップに進むべき時期が来たという判断になったようだ。3バックはすでに確立されたものであり、「試合によって考える部分が出るので、これが今後のベースになるかは分かりません」と、状況と対戦相手による使い分けも示唆した。

 シーズン前に「チームを変えるのではなく、増やすと捉えたい」と話していた指揮官にとって、4バック導入に踏み切った首位とのゲームで「今季のベストゲーム」と表現する試合ができたことは、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)とリーグ戦の同時制覇という野望を掲げるシーズンを戦ううえで、手持ちのカードを一気に増やすことになったと言えそうだ。(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)

浦和のオリヴェイラ監督【写真:轡田哲朗】