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「小さいころから目が悪くてメガネをかけていたもんで、ボールがよく見えなかったの。チームに入ると仲間たちに迷惑をかけるから、野球は夏休みとかに友達とキャッチボールをした程度です」

そう語るのは、俳優の六角精児(56)。舞台『十二番目の天使』(東京・日比谷シアタークリエ/4月4日まで。以降、新潟、石川、茨城、香川、福岡、福井、愛知、兵庫にて4月29日まで)は、家族を亡くした男・ジョンと秘密を抱えた少年・ティモシーの、愛と希望の物語。仕事で成功するも最愛の妻子を交通事故で失ってしまうジョン。絶望のどん底の彼を、六角が演じる幼なじみのビルは地元のリトルリーグの監督に推す。

「心の浄化作用がある話なんです。ビルはアメリカの片田舎で、あまりほかの世界を知らずに生きてきた平凡なやつだと思う。大して出世もしてないんじゃないかな」(六角・以下同)

そのビルがジョンにリトルリーグの監督を勧めた裏には、少年たちの指導に打ち込むことが家族を亡くした絶望から立ち上がる助けとなってほしいとの思惑が。

そしてジョンは、12番目のメンバーになるティモシーと出会う。体が小さく運動神経も鈍いが諦めずに練習に打ち込むティモシーは、ジョンの生きる励みに。六角にも、励みとなっていることがある。

「家族がちゃんと暮らせるように働くこと。わかりやすく言えば、住宅ローンを払い終えるまでは懸命に働こう、と。そう、住宅ローンが生きるモチベーション(笑)」

では、ティモシーのように、六角が諦めたくないことは?

「いつか友達と車でシカゴからニューオーリンズまでを旅して、好きなカントリーミュージックのルーツに触れたい。現地の空や風景を体験せずには、カントリーを語れないよね」

本作の見どころを六角はこう話す。

ジョンとティモシーの会話は胸を打ちますよ。人が誰かからエネルギーをもらえるのは、生きているその人の姿を見たり言葉を聞いたりしてこそ。ジョンがティモシーから力をもらっていて、かたやティモシーはそのジョンをとても慕って力をもらってる。そういう力の共有って、実際のところ、なかなかないけれど、その純粋な形がこの舞台にはありますよ」

この公演が無事に終わったら、今度は音楽活動に精を出すそうだ。

「音楽についてはゆっくりでいいから、少しずつ歩んでいきたいな」