「眠れない夜が2週間以上もつづく」「体力的にもきついし、気分も落ち込み、うつのような状態になる」。人知れずこんな悩みを抱えている人は少なくありません。前回につづき、睡眠導入剤・睡眠薬の使い方、注意点を宇多川久美子先生にレクチャーしてもらいました。

睡眠導入剤にも副作用はある

睡眠薬と聞くとなんとなくこわい……というイメージをお持ちの方は多いと思います。でも具体的に何が?というと漠然としていませんか?

作用時間の短いタイプ(3〜4時間の超短時間型/5〜6時間の短時間型)の睡眠薬には、薬の急激な作用によって一時的に記憶が飛ぶという「健忘」症状が見られます。それによって自分の意思によらない行動を引き起こしてしまうおそれがあります。いわゆる「異常行動」です。

作用時間の長いタイプ(12〜24時間の中間型/24時間以上の長時間型)の睡眠薬には、その作用時間の長さから、毎日服用すると少しずつ体に薬成分がたまっていきます。これによって副作用としては、日中も眠い、だるい、ふらつきのような症状が見られます。

また、どんな薬にも言えることですが、薬には必ず「耐性」というものがあります。体が薬になれてきて、服用しつづけることで、だんだんと効かなくなっていきます。すると、効かなくなる→薬の量が増える→また効かなくなる→また薬の量を増やす、というスパイラルに陥ってしまうのです。睡眠薬だけに限りませんが、特に睡眠薬では注意しなければいけない点です。

日本では“とりあえず”処方される

睡眠薬はなんとなくこわいと思いつつ、服用している日本人はとても多いですね。そのひとつの理由は、わりと簡単に睡眠薬が処方されるためだと思います。日本では、内科でも皮膚科でもどこでも、極端な話、眼科でも医師免許さえ持っていれば睡眠薬を処方することができます。ですから,日本では“とりあえず”処方されてしまう睡眠薬が多いのです。

たとえば、かぜを引いてかかりつけの内科のお医者さんにかかったとき。患者さんが「喉の痛みが取れないんですよね〜。最近忙しくって、朝起きても疲れてるし、ちょっと眠れない感じで……」なんて話をしていると、お医者さんから「ではかぜ薬と、とりあえず眠れるお薬を出しておきましょう」というふうに、わりとすんなり睡眠薬が処方されることがあります。

もちろんきちんした経験と知識のもとで処方してくれるならいいのですが、専門外の薬について、その特徴、性質を十分知悉し、過去の事例なども把握した上で処方できるか、といえばそれは疑問です。

こわいのは、そうした専門外の医師から処方された睡眠薬を「軽いもの」と誤解して、漫然と服用しつづけてしまうことです。どんな睡眠薬でも1か月も2か月も服用しつづけていいものではありません。現実には、もう何年も飲みつづけているよ、という人がいるのですが、それはやはり誤った処方、服用です。

睡眠薬を使うときに絶対守ってほしいこと

何回か睡眠薬のお話をしてきました。私はどんな睡眠薬も、その効果の半分はプラセボ、つまり「薬を飲んだから眠れる」という自己暗示力によるものだと思っています。薬はみなそうですが、持っていると安心というお守り的な意味ももちます。

睡眠薬を服用する前に生活習慣を見直してみる、起きる時間を決める、夜更かししない、といった工夫は必要だと思います。それでもどうしても睡眠薬が必要になる人もいるでしょう。私は不眠症状をやわらげるために睡眠薬を使うのは悪くないと思います。つらい症状をそのままにして、症状を悪化させるより薬を上手に使ったほうがいいでしょう。

その際、注意してほしいことは次の2つです。

 (1)服用のタイミングは寝る直前:睡眠薬の効果が現れるのは服用後10〜30分が目安です。また、服用の回数や期間は必ず、医師からの指示を守りましょう。

 (2)お酒と一緒に飲まない:薬の用法に書かれているはずです。特に睡眠薬アルコールはいっしょにしてはだめ!

アルコールには催眠効果があります。眠れないからお酒を飲む人が少なくありません。眠れない→お酒の量が増えるとなると、さらに体に悪いですよね。中途覚醒の原因にもなります。また、睡眠薬アルコール、両方の催眠効果で翌朝まで眠気やふらつきが残ったり、もの忘れが生じたり、副作用が起きるおそれもあります。

寝つきが悪いのでお酒を飲んで寝ている……という人も注意してくださいね。またベッドに入って寝落ちするまでゲームしてる……というのも要注意です。一時的不眠の人も、慢性で悩んでいらっしゃる人も、生活習慣やベッドまわりの環境などの見直しは忘れずに。不眠を治すのは薬ではありません。不眠の原因を解消していくことなのですから。

どんな薬にも共通しますが、飲みつづけることで効果は弱くなっていきます。服用は医師とよく相談して。

賢人のまとめ

不眠のつらい症状を悪化させないために睡眠導入剤・睡眠薬を利用するのは悪いことではありません。ただし、睡眠薬にかぎりませんが、薬は対症療法でしかありません。薬を服用しながら、不眠の原因をひとつでも減らしていくことが大切です。

プロフィール

薬の賢人 宇多川久美子

薬剤師、栄養学博士。(一社)国際感食協会理事長。明治薬科大学を卒業後、薬剤師として総合病院に勤務。46歳のときデューク更家の弟子に入り、ウォーキングマスター。今は、オリジナルの「ハッピーウォーク」の主宰、栄養学と運動生理学の知識を取り入れた五感で食べる「感食」、オリジナルエクササイズ「ベジタサイズ」などを通じて薬に頼らない生き方を提案中。「食を断つことが最大の治療」と考え、ファスティング断食合宿も定期開催。著書に『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)『それでも「コレステロール薬」を飲みますか?』(河出書房新社)など。LINEお友達限定で、絶対に知っておきたい薬のリスク情報配信中。

 
関連画像