ブレグジット(英国のEU離脱)、米中通商協議といった大きなイベントが控えている中で、4月は「10連休」というかつて経験のない大型連休が控えている。10連休の前後にも、為替市場のみならず株式市場や債券市場で大きなボラティリティ(変動幅)が警戒されるなか、新元号の新たな時代も幕開けする。10連休が控える4月相場にどう対応していけばいいのか・・・。外為オンラインアナリストの佐藤正和さん(写真)に、4月の相場の行方をうかがった。

 ――4月のイベントの中で、最も大きなポイントになるのは何でしょうか?

 米中通商協議なども大きなテーマですが、やはり3月29日に期限を迎えた英国のEU離脱と考えていいでしょう。メイ英首相がブレグジットを実現すれば自身は辞任する方針を表明するなど、背水の陣で英国議会の賛成を得ようとしましたが、29日の議会で離脱案はまたも否決されてしまいました。今のところ議会の承認を得られる見通しは立っていないと言っていいでしょう。

 EU総会で、自動的にEU離脱の期限が引き伸ばされましたが、それもわずか2週間後の4月12日まで。ブレグジットが4月相場の大きな課題になることは間違いないでしょう。とりわけ、英国ポンド相場の乱高下には注意したいものです。

 4月中に合意なきEU離脱が実現してしまう可能性は低いと思いますが、市場はまだ合意なきブレグジットを完全には織り込んでいないために、想定外のボラティリティがあるかもしれません。ブレグジットに関しては目が離せないといっていいでしょう。

 ブレグジット以外のイベントとして忘れてならないのは米中通商協議ですが、日本の新元号への移行に伴ってゴールデンウィークが10連休になることにも要注意です。かつて経験したことのない10日間の連休は、日本の投資家が市場に参加できないことを意味しており、何らかの形でボラティリティの大きなマーケットになる可能性があります。

 ――米中通商協議では新しい動きがあった、と報道されていますが・・・?

 米中通商協議で「全ての分野で進展があった」とロイターが報道しましたが、いずれにしてもトランプ米大統領習近平国家主席が直接会って、様々な課題を直接話し合うことになると思います。最終的な合意に辿りつくためには、両者が直接会って話し合うしかないと考えていいでしょう。

 強制技術移転、サイバー攻撃を通じた技術窃盗、知的財産権、サービス、為替、農業、非関税障壁の6分野で覚書が準備されていると報じられています。これらが全ての面で解決できるかどうかは不透明ですが、米中通商協議の行方が4月には大きな山になると考えていいでしょう。

 ――10連休の影響はどんな形で出るのでしょうか?

 ブレグジットや米中通商協議といった大きなイベントが続く中で、日本のマーケットが10日間休むことになるわけです。今年の1月3日に起きたような、瞬間的な相場変動である「フラッシュクラッシュ」が再び起こる可能性も考えておくべきでしょう。

 4月27日からの10日間は、海外で何かが起きても、日本の投資家はそうした動きに対応できない状況が続くことになります。10連休中はむろんのこと、その前後も警戒が必要です。とりわけ、10連休前の1週間は仕掛け的な動きが起こり、想定外の動きがあるかもしれません。

 10連休中には米国の雇用統計5月3日)などもあり、想定外の結果が出る可能性もあります。あるいは予測不能なトランプ大統領の言動によって、市場が大きく揺れる可能性もあります。幸い4月中に「FOMC(連邦公開市場委員会)」はありませんが、ある程度ポジションが抑えるなど対応しておく必要があると思います。

 ――最近になって、また長短金利の逆転現象が起き、株価が大きく下がりましたが・・・?

 様々なイベントに加えて注目しておきたいのが米国金利の動向です。米国の長短金利が逆転して「逆イールド」が発生して、ニューヨークダウ平均株価は600ドル以上の下げを記録しましたが、この動きをどう見るかに注目しておきたいところです。

 今回、逆イールド現象が起きたのは10年物国債の利回りと3ヶ月物の政府短期証券の利回りですが、 本来逆イールドで警戒すべきは10年物と2年物の利回りが逆転した場合です。逆イールド現象は、その1~2年後に景気後退に陥るシグナルと見られており、株式市場もそれを警戒したわけです。

 今回は3カ月物だったため1日の下落で済みましたが、今後の金利動向によっては金融市場に大きな影響を与えるかもしれません。ちなみに、3月のFOMCではっきりしたことは年内の利上げの可能性は少なくなったこと、そしてバランスシートの縮小は9月までには終了することなどが明らかになってきています。

 最近になって、FOMCの幹部の中には金利引き上げどころか、金利引き下げを示唆する理事が現れています。ハト派色が強まる中で、円高に触れる可能性も高まりつつあると考えていいでしょう。カナダでも逆イールドが発生しており、しばらくは世界の債券の金利にも要注目です。
  
 ――4月の予想レンジを教えてください。

 ブレグジットの行方が気になるところですが、金利の行方を左右する4月5日の米国雇用統計にも注視しておくことが大切です。いずれにしても、10連休との相乗効果で大きな変動幅になる可能性には警戒すべきでしょう。4月の予想レンジは次の通り・・・。

●ドル円・・1ドル=109円-111円50銭
●ユーロ円・・1ユーロ=121円-127
●ユーロドル・・1ユーロ=1.1150ドル-1.1450ドル
●ポンド円・・1ポンド=142円-149円
●豪ドル円・・1豪ドル=77円-80円

 ――10連休の対応を含めて4月相場の注意点を教えてください。

 10連休の対応としては、ポジションを抑え目にして連休を迎えるか、資金を増やして大きな変動に対応できる体制をとっておくことです。大きな変動幅と言っても、瞬間的に動く方向は「超円高」になる可能性が高く、逆の「円安」方向にはなかなか振れません。

 ドルを売って外貨を買うポジションに振れることがあっても、外貨を売ってドルを買う方向にはなかなか仕掛けづらいものがあるようです。それでも、ニュースはまめにチェックして、連休中とはいえ心の準備をしておいた方がいいかもしれません(文責:モーニングスター社)。

日本発「10連休リスク」に警戒を! 外為オンライン佐藤正和氏