こうなると真相解明はなかなか難しい。平成最後のセンバツ大会を揺るがした、サイン盗み問題。両校監督の言い分が真っ向から食い違う水掛け論となってしまっている。

 問題の試合は28日の2回戦。大会ナンバーワン投手と名高い奥川恭伸擁する石川県代表・星稜が、千葉県代表・習志野に敗れた。

言った…、言わない…


 試合後に、星稜の林和成監督が習志野サイン盗みを主張。習志野の控え室へ向かい、小林徹監督らへ抗議した。林監督は抗議行為自体は高野連に謝罪したが、その際に「星稜さんもやっているでしょ」と小林監督に言われたと主張。対する小林監督はその発言も、サイン盗み自体も否定している。

 サイン盗みの是非ではなく、「言った」「言わない」という次元の低い争いに。世間もサイン盗みどうこうの前に、「球児がかわいそう」と情けない大人たちの姿を哀れむ声が多い。

 大会規則には「走者やベースコーチなどが、捕手のサインを見て打者にコースや球種を伝える行為を禁止する。もしこのような疑いがあるとき、審判員はタイムをかけ、当該選手と攻撃側ベンチに注意をし、やめさせる」と明記されている。もっとも罰則規定はない。

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WBCで松坂-城島バッテリーがキューバ対策として

 野球界において、サイン盗みはいわば「暗黙の了解」の一部として扱われてきた。近年で言えば、露骨なサイン盗みは罰則や批判の対象となる。一方で、いかに相手や周囲の監視の目をかいくぐり、サインを盗むかを競い合ってきた歴史もある。

 サイン盗みを嫌う選手もいる。例えば外角スライダーのサインに踏み込んで、内角球が来れば非常に危険だ。相手バッテリーは「サインが読まれている」と感じたら、とっさにサインを変更したり、逆の球種を投げるよう変化もしてくる。

 特に言葉も文化も異なる国際大会においては、サイン盗みを規制すること自体が難しく、やり放題ともいえる。それを逆手に取ったのが2009年のWBCだった。2次ラウンドで対戦したキューバに対し、松坂大輔城島健司バッテリーは、構えとわざと逆のコースへ投げる「逆球」のサインをつくった。

 キューバ代表は国際大会で当時無類の強さを発揮していたが、その支えの一つがサイン盗みだった。走者が出れば捕手の構えをのぞき込み、ベンチへ伝達。それをベンチコーチが大声で打者へ指示する、というのが当たり前の光景ではあった。

 「逆球」サインが功を奏し、松坂は6回5安打無失点い相手打線を封じ、2連覇へと侍ジャパンを導いた。

ある程度サイン盗みされる前提の下で、対策を講じていく事が求められる

 古くはセンターから望遠鏡でのぞく古典的な手法から、近年ではベンチ内の関係者がつけたアップルウォッチへ映像や情報を伝達するなど、古今東西で昔から化かし合いは続いている。

 2017年にはメジャーリーグレッドソックスが、アップルウォッチを使ったサイン盗みのため処分された。サイン盗み自体は禁止されていないが、試合中の電子機器による情報伝達が規則違反に当たるとして罰金処分を科された。

 野球というスポーツの特性上、サイン盗みを根絶することは難しい。あとはいかにサインを盗まれにくくするか、あるいは盗まれているのなら、それを逆手に取った戦法を考えられないか。

 フェアプレー精神は甲子園にはふさわしく、ファンの支持も得られるだろう。それでもサイン盗みはなくならないと断言できる。

 大手を振って容認するのも難しいが、ある程度サイン盗みされる前提の下で、対策を講じていくことが指導者にも求められているのではないか。

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

センバツで問題再燃、「サイン盗み問題」の歴史と対策とは?