足立区で生まれ育ったあらぽん(ANZEN漫才)が足立区リアルをつづっていく新連載!


ごめんね佐野

足立区モンスターハンター編は少しお休みして、今回はドッキリのお話。中学くらいになると誰かの家に泊まる“お泊まり会”が増えた気がする。何を話すでもなく、ただ暇をみんなで共有して「なんかねーかな、暇だな」が口癖だった。

そんなお泊まり会で、誰かが前日に放送されていたドッキリ番組の話題を出してきた。

「あんなのひっかからないっしょ」
「いや案外騙されるかもよ」

そんな議論をしていると誰かが言った。

「ひっかかるか試してみたらどう?」
「佐野とかちょうどいいラインじゃない?」

佐野は真面目グループでも不真面目グループでもなくどちらのグループでも行き来できる立ち位置にいて、他校との交遊関係もあり情報ももっている存在。そしてみんなから重宝された最大の理由は、AVの所持率ナンバーワンというところ。

そんな佐野がドッキリの候補に選ばれた。

「どんなドッキリにする?」
「拉致られたから助けてドッキリどう?」
「なにそれ」

内容は単純だ。チンピラ役が電話をかけて「友達を助けたかったら神社に来い」と呼び出し、「デッテレ~」とネタばらしするというもの。

ここで重要なのはチンピラ役だ。話し合いの結果、荒木青年がチンピラ役になる。理由はこれも単純。当時声変わりしていて低音ボイスになっていたから。そして早朝4時にドッキリスタートした。

佐野に電話をかけると朝4時にも関わらずすぐに電話にでた。

佐野「もしもし、誰?」
あら「は? 誰じゃねーだろ」

このとき電話は非通知でかけていて、ハンズフリーでみんなに聞こえるようにしていた。

佐野「非通知だからわからないんだけど」
あら「お前誰にタメ口きいてんの? なめてんの?」

荒木青年の先輩演技に佐野が動揺しはじめる。

佐野「すみません。どなたですか?」
あら「うるせーよ、てか大内って知ってる?」
佐野「はい。知ってます」
あら「喧嘩売ってきたからいま捕まえてるんだけど、お前に許可とればぶっ飛ばしていいって言うからこいつぶっ飛ばしていい?」
佐野「え? どういうことですか。急すぎてわからないんですけど」
あら「こいつに番長誰だって聞いたらお前の名前出したから、とりあえずあとでお前も○○中も潰すわ」
佐野「ちょっとまってください。番長僕じゃないです」
あら「は? じゃ誰だよ」
佐野「ほかに強いやついます」
あら「誰だよ」
佐野「荒木です」
あら 電話を切る

みんなが笑い転げる。

「すぐ売ったじゃん」
スーパー裏切るじゃん」
「これは神社決定ですね」

そしてまた佐野に電話する。

あら「なに電話切ってんだよ」
佐野「切ってないです。ピッチPHS)だから電波悪いんです」
あら 電波を切る

みんなが笑い転げる。

「070とか聞いてねーよ」
「1回我慢しよう」

再び電話をかける。

あら「だから切るなっていってんだろ、お前なめてんだろ?」
佐野「なめてないです、ピッチなんで電波悪いんです」

みんなが笑いをこらえる。

佐野「もしもしもしもーし」
あら「聞こえてるよ、うるせーな」
佐野「あのほんとに大内います?」

急に疑い出した佐野のひと言に一同静まる。

あら「いるよ」
佐野「電話かわってもらえますか?」
あら「いいよ」

思わぬ展開に大内が焦りながら電話をとる。それと同時に置いてあったティッシュの箱に「コンビニで絡まれた!夜に!」と書いてカンペも出した。

大内「もしもし、ごめん巻き込んで。なんかコンビニで目があったら追っかけてきて捕まった」
佐野「大丈夫? どこにいんの? いとこに電話するよ」

佐野には年の離れたヤンチャないとこがいた。いとこというフレーズが出た瞬間、現場の緊張感が増した。とっさに荒木青年が大内から電話を奪う。

あら「なに仲間呼ぼうとしてんだよ、ハンズフリーだから全部聞こえてんだよ」
佐野「僕じゃなくていとこと話してもらえませんか?」
あら「なんでだよ関係ねーだろ」

佐野に押されぎみになるが無理矢理呼び出す。

あら「こいつ助けたかったらお前ひとりで来い」
佐野「行ったらなにもしないですか?」
あら「しねーよ」
佐野「なんかしたらいとこ呼びますよ」
あら「しねーよ」

いま思うとなぜこんな会話が成立していたのかが不思議だが、佐野の呼び出しに成功。

佐野「どこいけばいいですか?」
あら「氷川神社来い、ついたら連絡しろ」
佐野「わかりました」

それからしばらくしても佐野から連絡が来ないので電話をかけてみた。
あら「お前どこいんだよ」
佐野「ついてます。非通知で電話番号わからないっす」

全員が笑いをこらえる。

佐野「もしもしもしもーし」
あら「聞こえてるよ」
佐野「どこにいますか?」
あら「田中稲荷だよ」
佐野「え? 氷川って言いませんでした?」
あら「言ってねーよ田中稲荷来いよ」
佐野「わかりました」

そして電話を切ってから数分後、再び電話をかける。

あら「どこ?」
佐野「いま田中稲荷つきました。どこにいますか?」
あら「お前がおせーから興野神社向かってるわ」
佐野「そんな時間たってないですよ。なんで神社なんですか?」
あら「うるせーよ。興野にいるから浜崎あゆみシーズンズ持って来い」
佐野「え? 持ってないです」
あら「聴きたいから持って来なかったらこいつもお前もぶっ飛ばすから。なかったら買うか誰かに借りてこい」
佐野「まだお店やってないですよ」
あら「なんとかろじゃーな」

なぜ急に浜崎あゆみシーズンズかというと、佐野があまりにも信じるのでオチをどうしようかということになり、このとき家に泊めてくれていた萩本が学年で有名な浜崎あゆみファンでCDを全部持っていたため、萩本宅に助けを求めに来たところで「デッテレ~」とネタばらしするという流れになったからだ。

電話を切ると計算どおりすぐに萩本に電話が来た。

萩本「もしもし
佐野「いま平気? ごめん朝早くに」
萩本「どうしたの?」
佐野「浜崎あゆみシーズンズまだきいてる?」
萩本「きいてるよ。なんで?」
佐野「1日だけ貸してくれない?」
萩本「いいよ」
佐野「急なんだけどいま取りにいっていい?」
萩本「いいよ、じゃ待ってるね。親寝てるからピンポンじゃなくて窓叩いて」

萩本の部屋は通り沿いの1階にあったので夜などは窓を叩いて呼び出していた。しばらくすると窓からノックする音が聞こえた。窓から見えない壁ギリギリにみんな隠れて話を聞いた。

萩本「おはよう、どうしたの?」
佐野「なんか大内が絡まれていまから助けにいく」
萩本「どういうこと?」
佐野「夜に絡まれていまも捕まっててシーズンズと交換でってなってる」
萩本「なんだそれ、自分で買えよな」
佐野「ごめん最悪弁償するからCD借りていい?」
萩本「ごめんCDいま貸しててMDしかないんだけどいい?」
佐野「まじ? 厳しいかも」
萩本「探してて思い出した」
佐野「何曲目?」
萩本「もってくのかよ」
佐野「とりあえず
萩本「でも興野神社に大内いないと思うよ」
佐野「なんで?」
萩本「だってみんなここにいるから!」

全員で窓から顔を出す。

「デッテレ~」

佐野「え?嘘? あの電話誰?」
あら「俺だよ」
佐野「わかんねーわ」

と、怒るよりも安堵した様子の佐野に罪悪感が生まれ、その日にみんなで彼にご飯をご馳走して許してもらった。

検証結果、ドッキリはひっかかる!

を成功させたが、その半年後、実際に自分たちが拉致られるとは思ってもいない荒木青年と萩本青年だった……。(後半へ続く)

レア物ティッシュ

あらぽん

1985年10月13日生まれ、東京都足立区出身。幼馴染みやぞん2009年11月にANZEN漫才を結成。みやぞんの特技であるギター、そしてあらぽんのラップを組み合わせた音ネタで活動するようになり、『足立区の歌』などのネタで注目を集める。『とんねるずのみなさんのおかげでした』『世界の果てまでイッテQ!』などでみやぞんの激烈天然キャラが爆発して話題となり、今や大注目コンビのひとつとなっている。

ANZEN漫才・あらぽんの『アダチニスト〜足立区ストーリーズ〜』第21回:足立区拉致ドッキリ(前編)