新日本プロレス初となるマディソン・スクエア・ガーデン会(MSGアメリカニューヨーク、日本時間7日)まで、1週間を切った。日本の団体が世界最大のプロレス団体WWEホームMSGで興行を行うというのは、5年前までは考えられなかったこと。80年代90年代からのファンにとっては、今でも考えられないぐらいだろう。しかし今のファンからは「アメリカでやるならいつも通り、両国(国技館)でやってほしかった」という声が少なくない。

 新日本は毎年4月に両国でビッグマッチを開催しており、「4月の両国は“何か”が起こる」と人気が高かった。このように今のファンには「MSG」というワード自体がイマイチピンと来ていないようだ。

 前シリーズニュージャパンカップ2019』では、棚橋弘至が2回戦で田口隆祐をドラゴンスープレックスで勝利を収める場面があった。

 試合後、棚橋は「決まり手は、ドラゴンスープレックス。マディソン・スクエア・ガーデンの歴史を勉強して、藤波辰爾選手が初めてドラゴンスープレックスを出した場所。それから何十年経って、ドラゴンスープレックスで帰るのも粋だなと。“カムバックサーモン”ってあるじゃないですか。海に出た鮭が戻ってくる。“カムバックドラゴン”!」とコメントしている。

 新日本のOB、藤波辰爾1978年1月23日MSGで、カルロス・ホセ・エストラーダが保持するWWWF(WWE)ジュニアヘビー級王座に挑戦。初披露のドラゴンスープレックスで王座を奪取し、その後スター街道を歩み始めた。棚橋はこれを意識したと明かしたのだ。ちなみにこの試合は、来年1月に引退を表明している獣神サンダー・ライガープロレスラーを志すきっかけになった試合でもある。

 MSGとはどんな会場なのか?新日本が初進出する感想も含めて藤波に聞いてみた。

 「新日本MSGでやるというのは大きい。日本の歴史を塗り替えていく。新日本が世界にMSGから発信する。あそこに立つのは夢ですからね。(後輩たちが)それを経験できるのは素晴らしいこと」

 藤波が新日本を離れてから13年の月日が経つが、現在でも「新日本の試合はテレビで見ている」そう。新日本MSGに進出するという話になると、まるで自分のことのようにうれしそうな表情を見せていた。

 藤波は「あそこで何を感じるか。レスラーとしての質が問われるところ。『何だ、東京ドームの方が大きいじゃない』と思うか?何かを感じるか?そこは問われると思う。MSGというのはマンハッタンのど真ん中にあって、歌手のレディー・ガガMSGに立つのが夢だったと話していた。アメリカの真ん中に自分が立ってるんだと、すごく感じるものがあったし、あの経験があったからWWE殿堂入りもできた」と振り返る。

 「俺はニューヨークジェイ・スタジアムでもやってるから、初めて東京ドームでやった時にも特に驚かなかったんだけど、やっぱMSGは特別なところ」と強調。「チケットも売れたというし、新日本の選手も大きな自信と経験になるんじゃないかな。伝統ある会場だから、何かを感じてくれたらいいよね」そう藤波は選手に呼びかけた。

 藤波は軽量級部門のパイオニアとして活躍。NWA世界ヘビー級王座を獲得したことなどが評価され、2015年WWE殿堂入りを果たしている。26日には自身が主宰する団体ドラディションの後楽園ホール大会で、新日本からライガーを招聘し、越中詩郎トリオを結成するなど、今でも健在だ。藤波は新日本の後輩たちに「何かを感じてほしい」「自信と経験になる」と熱いエールを送った。

 MSGスターダムにのし上がった藤波の言葉には説得力がある。新日本の選手が、MSGで何を感じるのか?それは日本に“凱旋”した時に分かるはずだ。新日本MSG大会はリアルタイムで世界配信される他、7日の朝8時30分からCSのテレ朝チャンネル2で生中継される。

取材・文・写真 / どら増田

藤波辰爾