■活動銀河核は、見る角度によって特徴が異なるが、それは周りにドーナツ状のトーラスが存在すためと言われている
■はくちょう座Aという電波銀河をVLAで調べた結果、トーラスの画像を得ることに成功
■トーラスが認められたことで、クエーサーやブレーザー、セイファート銀河などが同一の天体現象であることが示唆される
銀河の中央にある超大質量ブラックホールを取り囲む、巨大なドーナツ。7億6千万光年の彼方にあるこのドーナツが、直接観測されました。
カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)を使って、電波銀河の中央にある超大質量ブラックホールの周りにできる、チリで出来たドーナツ状の構造物(トーラス)の直接画像を初めて得ることに成功しました。
ドーナツ状構造は、40年近く前に、物理学者によって予言されていたものです。研究成果は、「Astrophysical Journal Letters」に投稿されています。
VLA Makes First Direct Image of Key Feature of Powerful Radio Galaxies – National Radio Astronomy Observatory https://public.nrao.edu/news/key-feature-powerful-radio-galaxies/
調べたのは、7億6千万光年にあるはくちょう座Aと呼ばれる銀河です。この銀河の中心にあるのが、太陽の25億倍もの質量を持つ超大質量ブラックホールです。周囲にある物質を強力な重力で引き込むのと同時に、光速近くにまで物質を加速してジェットを作り、壮観な「ローブ」と呼ばれる電波放射の輝きを生みます。
ブラックホールを動力源とする銀河中央の「中央エンジン」は、様々な波長の電磁波を放出します。銀河中央から放出されるジェットは、多くの銀河で見られる現象ですが、観測される特徴は様々です。
この多様性から、同じ現象にもクエーサー、ブレイザー、セイファート銀河といった異なる名前がつけられています。では、なぜ違う名前が付けられているのでしょうか。これには、銀河が観測される角度による違いであるとする「統合モデル」が提唱されています。
統合モデルは、中央ブラックホール、ブラックホールを取り巻く回転する物質円盤、そしてブラックホールの両極から放出されるジェットで形成されます。なぜ同じ構造物を異なる角度から見た場合に異なって見えるのかを説明するために、厚くてチリが多いドーナツ状の「トーラス」が中央付近に存在すると考えられていました。
トーラスがあることで、真横から見たときに、内部の特徴が覆い隠されてしまうため、異なって見えるようになるのです。天文学者たちは、これらの銀河の中央にある構造をまとめて、活動銀河核(AGN)と呼んでいます。
はくちょう座Aは、最も近くにある強力な電波銀河で、他の同種の銀河に比べると距離は10分の1程度です。VLAで高解像度の画像が得られたのはこの近さのおかげでしょう。トーラスもその中で見つかりました。他の遠くの電波銀河でトーラスを見つけるには感度が足りないので、現在計画されている次世代超大型干渉電波望遠鏡が必要となってくるでしょう。
VLAによるトーラスの直接観察によって、直径900光年の大きさのガスの存在が明らかになりました。これも、モデルで予言されていたとおりです。
2016年にははくちょう座Aの近くに明るい天体が見つかっています。これは、第2の超大質量ブラックホールが物質を飲み込んだ際に発されたものと考えられています。この2つ目のブラックホールが見つかったことで、はくちょう座Aでは2つの銀河の衝突が起きたことが示されています。
トーラスが存在するという直接の証拠が得られました。今後、ALMAを使って更に詳しく、このトーラスを観察することも考えられています。銀河の中心の謎がどんどん明らかになっていきますね。
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