日本人GKが伸び悩むなか韓国代表クラスの守護神が多くプレー J1の9クラブに在籍

 9、7、2。なんの数字かというとGKの話。全18クラブで構成されるJ1リーグに、韓国人GKがいるクラブは半分の9つもある。日本人GKのみが7つで、韓国人以外の外国籍GKのいるクラブが2つだ。

 J1には韓国代表クラスのGKがずらりと並ぶ。キム・スンギュ(ヴィッセル神戸)、ク・ソンユン(北海道コンサドーレ札幌)、チョン・ソンリョン(川崎フロンターレ)、クォン・スンテ(鹿島アントラーズ)、キム・ジンヒョン(セレッソ大阪)がプレーしている。横浜F・マリノスの朴一圭は日本育ちだが、韓国籍GKとしてカウントした。ほかにキム・ミノ(サガン鳥栖)、ムン・キョンゴン(大分トリニータ)、ゴ・ドンミン(松本山雅FC)で計9人。

 それにしても多い。ちなみに韓国以外の外国籍GKはランゲラック(名古屋グランパス)とカミンスキー(ジュビロ磐田)。外国人GKの中で韓国籍は圧倒的に多い。2009年からC大阪で活躍するキム・ジンヒョンらの影響もあるが、Kリーグ1999年から外国人GKの所属、出場を禁止したルールが大きいようだ。韓国は自国GKの育成に成功した一方で、同様のルールがある中国には移籍できず、ヨーロッパへの移籍はかなりハードルが高い。それで優秀なGKが、日本に流れ込んできたという経緯がある。

 GKの補強は即効性がある。優れたGKは失点になるはずのシュートを防いでくれる。個人の力でチーム力を上げてくれる。だから外国人GKの補強は日本に限らず、ヨーロッパの強豪クラブの多くも外国人GKだ。

 だからといって自国のGKが育たないわけでもなく、例えば1990年代ポルトガルは外国人GKが目立っていたが、ビトール・バイーアやキム・シルバリカルド・ペレイラといった名手も生み出していて、ポルトガル代表のGKが弱点という事態にはなっていなかった。

 かつてGK王国だったイングランドも、今ではビッグクラブのGKは軒並み外国人選手になった。しかし2018年ロシアワールドカップでは、若手のジョーダン・ピックフォードエバートン)が活躍している。外国人GKが増えると必然的に自国GKの層が薄くなるとはいえ、代表チームのGKに相応しい選手がいなくなることもないようだ。

控えGKに外国人枠を使うのは贅沢だが…

 韓国代表の正GKであるキム・スンギュがいるにもかかわらず、神戸のゴールは第4節の清水エスパルス戦(1-1)から前川黛也が守るようになった。アンドレス・イニエスタ、セルジ・サンペール、ダビド・ビジャルーカス・ポドルスキダンクレーを起用すると外国人出場枠の5枠を使い切ってしまうからだ。前川は足下の技術が高く、神戸のプレースタイルに合っているということもあるだろう。横浜FM、鳥栖、松本、大分も韓国人GKはいるが日本人がレギュラーだ。控えGKに外国人枠を使うのは贅沢な感じもするが、登録が無制限になった影響はあるだろう。

 隣国とはいえ、1つの国が特定ポジションの供給源になっているJリーグは、世界的にも珍しいケースだと思う。今後もこの傾向は続くのか、GK以外のポジションでも似たような現象が起きるのか、逆に日本人選手がどこかの国のリーグで数多くプレーするようになるのか。

 すでにブンデスリーガには日本人選手が多いが、それには奥寺康彦から始まった日独のつながりという歴史があった。Jリーグの各クラブがインターナショナルな関係を築かなければならない時代はすでに到来していると見るべきだろう。(西部謙司 / Kenji Nishibe)

(左から)キム・ジンヒョン、キム・スンギュ、クォン・スンテ、チョン・ソンリョン【写真:Getty Images & Football ZONE web & 荒川祐史】