新年度の「担任発表」。幼稚園でも保育園でも小学校でも、担任の先生は、大切なわが子が日中の長い時間を共に過ごす相手であり、子どもの人生に大きな影響を与える人です。春を迎え、晴れて新しい学年に進級したものの、担任発表を見てガッカリしている親御さんもいるのではないでしょうか。

“はずれ”も見方を変えてみると…

 筆者は、2014年に「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)を執筆したとき、見知らぬ教員からネット上などでバッシングを受けました。確かに「はずれ先生」というフレーズは、失礼でひどい言葉ではありますが、実際に教員の“当たりはずれ”はあるもので、4月になるとママ友同士の茶飲み話で「今度の担任は“はずれ”だった」「今年は“当たり”だった」といった会話が飛び交っているのが実情です。

 では、「はずれ先生」とは、具体的にどんな先生でしょうか。「はずれ先生」という言葉からイメージされやすいのは、主に次の4点ではないかと思われます。

・連絡帳の文章が短い
・新人
・えこひいきをする
・宿題を多く出す

 しかし、筆者が教育現場にいた経験からすると、親が「はずれ先生」と思っているだけで、子どもにとっては「当たり先生」である場合もあります。次の例を参考に、見方を変えてみましょう。

【きめ細かく連絡帳を書いてくれない先生】

 園での送迎時の保護者対応にたけていたり、きれいな文字で長い文章を書いたりする先生は、保護者からの人気が出る傾向は確かにあります。しかし、実際のところ「“親受け”の良い先生=子どもにとって最高」かどうかは分からないのです。もしかしたら、連絡帳をきめ細かく書く暇がないくらい、子どもと関わることの方に優先的に時間を使っている人なのかもしれません。

 逆に、あまりにも文章が長いと「20人分書くのに、保育時間中、どこで時間を削っていたんだろう」と思ってしまいます。連絡帳の「給食後、大便をしました」などの乱れた短い文章だけで「はずれ先生」と決めつけないようにしましょう。

【新人の若い先生】

 ベテランの先生の中には、経験が邪魔をして自分の教育観にとらわれ、新しい考えを取り入れる姿勢に欠けていたり、夕飯のメニューなど別のことを考えながら授業ができる“おかしな技”を持っていたりする人もいます。

 それに対し、学校を出たばかりの新人は、何事にも一生懸命に取り組んでくれます。初めての経験なので、予習・復習をしっかりして子どもたちの前に立ちます。保育者や教師になって初めて担当する子どもは、担任の一生の記憶に残るものです。

【えこひいきする先生】

 例えば「○○君のことは叱らないのに、私が同じことをしたら先生は叱る。えこひいきしている」と子どもが家で訴えてきたとしましょう。

 子どもは、生まれ持った気質、成育歴などが皆それぞれ異なります。そんな中で、担任は問題行動を起こす子どもに対して「じっと座っていられる時間は、授業時間の半分でよしとする」など、ハードルを低くして叱る基準を変えているのかもしれません。

 えこひいきをしているように見えても、その先生は宿題の量も与える問題も、しつけなどの課題も、子どもによって変えられる「指導力のある先生」の可能性があります。

【宿題を多く出す先生】

 塾の宿題もあるので、学校から山盛りの宿題を出されると嫌ですよね。しかし、宿題とは、学校で習ってきたことを再学習し、学力を定着させるための大切なものです。

 宿題を出す先生には「丸付けや採点をする」という大変な仕事が待っています。宿題を多く出す先生は、そうした労力を惜しまない先生だと思いましょう。塾の勉強もあり、睡眠時間も削られてしまう場合は、担任に相談しましょう。

【その他の先生】

 そのほか、「気が利かない」先生は、結果として過保護や過干渉にならず、子どもが自立すると考えましょう。また、「怒ってばかりいて、厳しい」先生は、しつけをしっかりしてくれる人といえます。逆に、いわゆる“お友達先生”で威厳がない場合は、「フレンドリーな親しみやすい先生」だと思いましょう。

 親の意見をなかなか聞いてくれない先生もいますが、それは、しっかりしたポリシーを持って指導をしており、ぶれない人だとも考えられます。

「はずれ先生」にあたったときのNG行為

 先生だって人間です。指導力が優れている教師もいれば、そうでもない人もいるのが現実です。もし、望んでいない担任にあたったら、親としてどう振る舞えばよいのでしょうか。親が「やってはいけない」NG行為は次の通りです。

【叩きのめす】

 担任の人格まで否定し、相手が立ち直れないくらい叩きのめす行為です。これでスッキリするのは親だけ。翌日から、担任はその親の子どもに対し、決して「かわいい子」とは思えないでしょう。損をするのは子どもです。人間関係を壊す行為はやめましょう。

【担任を飛び越えて主任、校長、教育委員会に言う】

 何かが起こったとき、相手から直接言われるのではなく、その場にいなかった強い権限を持つ人から「『あなたの○○なところが嫌だ』とクレームが出ているので注意しましょう」と言われたら、誰でも「なぜ、最初に自分に言ってくれなかったんだ」と思い、不愉快になるでしょう。同様に、当事者の保護者から何も言われていないのに、いきなり上司・上層部から指摘されたら、先生は不愉快に感じます。

 言いたいことがあるときは、まず直接担任に伝えましょう。担任を飛び越えて校長や教育委員会に訴えるのは、虐待など解決できない問題が起こったときにしましょう。

【子どもの前で担任の悪口を言う】

 子どもにとって、親の意見は絶対的なものです。例えば「あの先生は、前の先生よりも指導力がない」と夫婦で会話しているのを耳にすれば、子どもは「そうなんだ。今度の先生は教え方が下手なんだ」と思います。

 そうなると、授業中も親の会話が頭にあり「先生の話をしっかり聞こう」「先生を敬おう」とならず、不信感を募らせてしまいます。小学校の場合、同じ先生から算数や国語、体育も習うので、やる気が起こらず、結果として学力が低下するケースもあります。さらには、子どもが親のまねをして、担任を小馬鹿にしたような態度を示すこともあるのです。

 親の気持ちは“以心伝心”で子どもの授業態度に表れます。こうなってしまうと、絶対に先生からかわいがられることはなく、良いことは一つもありません。

「はずれ先生」とうまく付き合おう

 親が「嫌だな」と思っていても、担任と子どもは明日も明後日も長い時間を共に過ごします。思い切って転校したとしても、そこで良い担任と巡り会えるかどうかは保証されていません。

 また、親は好ましくないと思っていても、子どもは先生のことが大好きかもしれません。担任はあくまでも“子どもの先生”です。親の思いと子どもの思いは、それぞれ異なるもの。子どもが先生とうまくいっていれば、それでよいのではないでしょうか。

子育て本著者・講演家 立石美津子

もし、担任が「はずれ先生」だったら…