(筆坂 秀世:元参議院議員、政治評論家

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 注目を集めたのは、大阪府知事と大阪市長ダブル選挙、あとはせいぜい北海道知事選だけ。それ以外は、さしたる盛り上がりを見せなかった統一地方選挙の前半戦が終わった。

 その何よりの証明が、低い投票率である。おそらく前回より増えているのは、大阪知事選と市長選ぐらいのものだろう。正式発表ではないが、11道府県知事選の平均は、4年前に続いて50%を下回る可能性が高い。もちろん過去最低である。41道府県議選も同様の傾向にあり、4年前の45.05%を下回りそうである。政令市長選、市議選も同様である。

 無投票当選の多さも過去最多である。全国で612人が無投票で当選した。無投票当選者の割合が最も高かったのが岐阜県で、定員46のうち48%に当たる22人が無投票当選だった。

 もはや多くの有権者にとって、関心の埒外にあるのが地方自治体の選挙、ということなのかもしれない。それも分かる気がする。私は埼玉県川越市に住んでいる。定員が4人で5人が立候補していたが、誰一人会ったことも、話を聞いたことも、政見を聞いたこともない。現職が4年間どんな活動をしてきたかも、まったく知らない。これでは関心の持ちようがないのである。

 川越市の場合は、35.53%の投票率だった。約65%が選挙に不参加なのである。これで果たして当選者は“正当な代表”と言えるのだろうか。選挙が形骸化していると言わざるを得ないだろう。

無所属当選者が増加した背景

 もう1つ、今度の選挙の特徴は、無所属当選者が多いことである。今回選挙が行われた41道府県議選で、実に34道県で無所属の当選者が増加している。長野県では21人から26人に増えて第一党の自民党を追い抜いた。兵庫県も26人から27人に増え、第一党の自民党と並んでいる。

 無所属といっても保守系が多いのではあろうが、確実に政党離れが進んでいるように思えてならない。

 それには理由がある。自民党は、この間「安倍一強体制」と言われるもとで、明らかに慢心している。塚田一郎前国土交通副大臣の忖度発言などは、その最たるものである。受け狙いの発言だったのだろうが、慢心していると、こういう愚か者が出てくるものなのだ。

 もう1つは、野党の側の責任である。この数年間でどれほど野党間の離合集散があり、どれほど新しい党名の政党が誕生してきたか。民主党民進党になり、それが希望の党と立憲民主党、無所属に分裂し、さらに希望の党が国民民主党に分裂してきた。都民ファーストの会の消滅も時間の問題だろう。

 このどの政党も、政党のアイデンティティを示す、まともな党綱領を持っていない。綱領と名の付いたものはあるが、とても綱領と呼べる代物ではない。

 こんな政党に魅力を感じることなどあり得ない。政党離れが進んでいるとすれば、それは政党の側にこそ責任がある。

どう総括?大阪で大失態の共産党

 注目の大阪知事、市長選挙では、「大阪維新の会」の候補が圧勝した(知事選は前市長の吉村洋文氏が当選、市長選は松井一郎氏が当選)。共産党ダメージは大きい。何しろ天敵とも言うべき自民党公明党府本部が推薦する候補を自主支援したからだ。

 志位委員長は、維新が仕掛けた「ダブル選挙」を党利党略選挙だと批判し、「『都構想』阻止、『カジノストップ』という大義を掲げ、『維新政治』に終止符を打つ」と表明してきた。

 ところが共産党が支持した小西禎一元副知事が大阪都構想にこそ反対してはいるが、カジノ構想には反対していない。「カジノストップは大義」と志位氏が述べていたのに、簡単にそれをかなぐり捨てて小西候補の支持に回ったのだ。これこそ党利党略そのものだ。しかも結果は惨敗である。

 自民党推薦で大阪市長選挙に立候補した柳本顕氏についても、共産党大阪府委員会は「『都』構想に終止符を打つため参院選自民党公認候補を辞め、無所属で立候補したことにも留意し、自主的に支援する」としてきた。要は「反維新なら何でもあり」ということでしかない。

 共産党は、「都構想ストップ、維新政治を終わらせる」ということを最大の旗印に掲げてきた。山下芳生副委員長・参院議員などは、4月3日堺市での演説で、「知事、市長入れ替えダブル選挙」について、「こういうことでしか活路を見出すことができない。維新政治の行き詰まりの現れで、追い詰められているのは維新だ」などと威勢良く批判していた。

 府民の願いに反してきたのは、自民党公明党共産党の側だったというのが、選挙の示すところである。

 他方では、「安倍政治に審判を」と言いながら、その自民党と力を合わせるという禁じ手を使ってしまった責任は大きい。大阪のダブル選挙で示された審判は、共産党に向けられたものでもある。大阪市議選で9議席から4議席に激減したのは、市民の強烈な怒りが共産党に向けられた結果である。

共産党のおかしな地方選「政策」

 今年(2019年1月18日日本共産党の「暮らしに希望を 力あわせ政治を変えよう」というタイトルの「統一地方選挙政策アピール」が発表されたが、私は大きな違和感を持った。

 その第1の柱が、「安倍政治に審判くだし、新しい政治を切り開く選挙に」ということだったからだ。その中には、「こんな内閣は一日も早く終わらせようではありませんか。日本共産党の躍進は、安倍政治への最大の痛打です。そして、安倍政治に代わる新しい政治への選択となります」とある。

 共産党が主観的にどう思うかは勝手だが、それぞれの首長選挙や道府県議選挙、市区町村議選挙で「安倍政権への評価」が主要な争点になることなどあり得ない。例えば、ある村の議員選挙で「安倍政治への審判を」などと訴えれば、「真面目にやる気があるのか」とあきれ果てられることになるだろう。

 第2の柱にも驚く。「消費税増税ノーの声を示す選挙に」とあるからだ。もちろん何を訴えるのかは、政党や候補者の自由である。だがはっきりしていることは、消費税をどうするかは、あくまでも国政の課題である。地方選挙でどういう結果が出ようとも、それが消費税増税についての有権者の意思を示したことになはならない。

 そして第3の柱が、「『戦争する国づくり』を許しません」である。この項目では、大軍拡反対などが掲げられている。これも国政の課題である。

 もちろん地方政治についての提案もなされてはいる。しかし、このアピールを見る限り、統一地方選をあまりにも党略的に位置づけていると言わざるを得ない。

消費税増税ノー」という共産党の主張も、もっともらしいがおかしい。共産党はそもそも消費税の導入そのものに反対してきた。消費税が導入された翌年には共産党主導で「消費税をなくす会」まで結成している。

 共産党は税率3%の消費税が導入された際、猛烈に反対した。5%に引き上げられた際も国民の暮らしが破壊されるとして猛反対した。8%に引き上げられた際も同様だった。だったら掲げるべき政策は、「増税ノー」ではなく、「消費税廃止」か、今なら最低限でも「5%に戻せ」でなければおかしいのではないか。

 だが、そうは言わないのである。本気ではない。建前なのだ。導入も、その後の2回の増税も、「仕方がない」と是認してきたのだ。導入も増税も止める力はなかった。この政党に、「増税ノー」の審判を、と言われても素直には聞けない。

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大阪ダブル選挙の投票結果を受けて会見をする、大阪維新の会代表・松井一郎(左)と、吉村洋文政調会長(右)。大阪維新の会本部にて(2019年4月7日、写真:アフロ)