近年大きな注目を集めている「eスポーツ」。その高校日本一を決める「第1回 全国高校eスポーツ選手権」の決勝大会が、3月23日・24日の2日間にわたり、幕張メッセで開催されました。『リーグ・オブ・レジェンド』部門で栄えある初代チャンピオンに輝いたのは、東京学芸大学附属国際中等教育学校「ISS GAMING」の皆さんです。高校生ながらプロチームに所属するキャプテンの後閑敬斗君(2年)をはじめ、決勝大会に出場された皆さんにお話を伺いました。

高校生チームが熱戦を繰り広げる「全国高校eスポーツ選手権」とは?

eスポーツとは、コンピューターゲームを使って複数のプレイヤー同士で対戦する競技のこと。海外では大規模な大会が数多く開催され、日本でも徐々に注目が高まっています。今回が初の開催となる「全国高校eスポーツ選手権」では、『ロケットリーグ』部門と『リーグ・オブ・レジェンド』部門の2種目で、高校生たちが熱い戦いを繰り広げました。

同じ高校に通う生徒同士でチームを結成し、『ロケットリーグ』部門には60チーム、『リーグ・オブ・レジェンド』部門には93チームがエントリー。オンライン予選を勝ち抜いた各部門4チームずつが、オフラインの決勝大会に進出しました。

決勝大会2日目に行われた『リーグ・オブ・レジェンドLeague of Legends、以下LoL)』は、5対5のチーム戦。プレイヤーは「チャンピオン」と呼ばれるキャラクターを操作し、チームの仲間と協力しながら敵チームの本拠地に攻め込みます。各チームの戦略やチームワーク、集団戦の駆け引きなども見どころの一つ。ステージの大きなモニターに映し出される激闘に、会場からも大きな声援が飛んでいました。

緊張よりもワクワク感の大きかった決勝大会

―― 決勝大会に向けて緊張やプレッシャーはありましたか?

森:前夜は少し眠れませんでしたが、そこまで緊張はしていませんでした。

後閑:ステージ上でプレイするのがとても楽しみだったので、緊張よりも興奮の方が大きかったです。

横田:決勝大会の朝は自分の心臓の音が聞こえるくらい緊張していました。でも実際にゲームが始まると、プレイのことだけを考えて集中することができました。

羽豆:大会の一週間くらい前までは「僕が失敗してしまったらチームを負けに導いてしまうかもしれない」と不安になることもありました。でも大会が近づくにつれて、緊張よりも早くプレイしたいというワクワク感が強くなってきました。

上倉:実際にゲームが始まると画面の中の世界にのめり込むような感じで、会場の雰囲気にのまれることもなくプレイできたと思います。


―― 決勝戦のインターバルには、チーム内でどのような戦略を練りましたか?

後閑:決勝戦は3ゲーム2本先取で優勝者が決まる形式だったのですが、僕たちは1ゲーム目で負けてしまいました。でもそれは僕たちの実力が相手に比べて劣っていたからではなく、ミスをしてしまい、そこを相手チームに突かれたことが敗因だったと思います。ミスをする前まではゲームを有利に展開できていましたし、普段通りのプレイができれば大丈夫だと思っていたので、2試合目が始まる前のインターバルでも特に焦りはありませんでした。「ミスさえしなければ絶対に勝てる」と2ゲーム目以降は冷静に落ち着いてプレイし、しっかりと勝ち切ることができました。

勝利のために大切なのは、堅実で丁寧なプレイ

―― 大会に向けてどのような準備をされましたか?

後閑:試合では堅実かつ丁寧にプレイしていかなければ勝つことができません。練習のときから「堅実に丁寧に」ということを第一に心がけていました。僕たちのチームは3年生のメンバーが多く、受験勉強などもあったためチーム練習はほとんどしていません。個々のメンバーがそれぞれ時間のあるときにしっかりと練習を重ねてきました。

―― この大会によって高校生活に変化はありましたか?

森:大会に向けて大学生のチームなどと練習試合をしましたが、ゲームに負けた日は自分のミスが頭の中を巡って忘れられないくらいでした。生活の中でLoLのことを考える時間も以前よりずっと長くなりました。

後閑:今回の大会が開催されるという話を聞いたのが、ちょうど僕がプロとしてデビューした少し後のことでした。高校生のLoL日本一を決める大会と聞いて、「大会での経験がプロとしての活動にもプラスになるのでは」と思って参加を決めたんです。でも、ふたを開けてみると周りの選手たちがみんな真面目に、LoLを競技として本気で取り組んでいて。そんな姿に触れて僕もすごくやる気が出ました。

横田:大会をきっかけにして、学校でゲームについてみんなで話したり、作戦を練ったりする機会が増えました。それまでは学校でゲームに関する活動をすることはなかったので、新しい経験になりました。

羽豆:大会終了後にSNSを見たら、普段あまり接することのない友人たちが応援してくれたり優勝を祝ってくれていたりしました。いろいろな人と仲良くなれるきっかけになったと思います。

上倉:チームのメンバーとたくさん話し合ったり、他の大学の方と練習試合をしたりして、ゲームを通じてコミュニケーションの輪が広がりました。

大会を通じて、eスポーツがより広がってほしい

―― eスポーツへの注目度について、どのような印象をお持ちですか?

後閑:僕もプロ選手になるまでは、このLoLをプレイすることも娯楽の一つとしか考えていませんでした。でも徐々に実力がつき、プロとして活動するようになってからは、ただのゲームではなく“競技”として捉えるようになりました。

横田:「eスポーツ」と呼ぶことによって、「ゲーム大会」とは全く別の印象を与えることができると思います。だから僕は「eスポーツ」という言葉がすごく好きです。

羽豆:日本と海外ではゲーム文化も異なり、eスポーツが日本で受け入れられるにはまだ時間がかかるのかもしれません。広く受け入れてもらうためにも、たくさんの人がもっとeスポーツに触れてくれたら、と思います。

上倉:今回のeスポーツ選手権のような大会が開催されることによって、eスポーツをやったことがない人に経験者が「やってみようよ」と気軽に声をかけたり、友達同士でゲームを楽しんでみたり、そんなネットワークが広がっていくといいなと思います。



優勝チームの東京学芸大学附属国際中等教育学校「ISS GAMING」には、優勝賞品として韓国eスポーツ体験旅行がプレゼントされます。メンバーからは「韓国でプロリーグの試合を生観戦したい!」という声もあがっていました。この全国高校eスポーツ選手権は、来年も第2回の開催が決まっています。これからも、高校生eスポーツ選手たちの活躍に注目していきたいですね。


profile東京学芸大学附属国際中等教育学校「ISS GAMING」
後閑(2年)、檜垣(2年)、森(2年)、桑原(2年)、村山(2年)、横田(3年)、渥美(3年)、中島(3年)、上倉(3年)、羽豆(3年)