iPhoneが売れなくなったのは、
「高すぎる」から

2019年は、アップルショックで年が明けた。1月2日アップル2019年度第一四半期の業績予想を下方修正する発表を行った。890億ドルから930億ドルという当初予想を840億ドルに引き下げた。その理由は、アップルにとってすでに大きな市場となっている中国、香港、台湾での中華圏の景気減速により、販売台数が伸び悩んだというものだった。

この発表により米国株式市場は、IT株を中心に下落。日本でもその影響で、円相場が一時104円台まで急騰、1月4日日経平均が一時600円以上下げるという状況になった。

一部には「米中貿易摩擦の影響で、中国で米国製品を買い控える傾向が起きている」という報道もあるが、中国メディアはそのような傾向を報道していない。多くの中国人が指摘をする理由は実に単純で「高すぎる」ということにつきる。

中国販売サイトで価格を調べてみると、iPhone XSが8699元から、iPhone XS Maxが9599元からになっている。一方で、ファーウェイMate20Proは5999元、vivo NEXが4298元、OPPO Find Xが4999元、シャオミー8が2699元と価格帯がまったく違っている。さらに、シンプルな機能のスマートフォンであれば1000元を切る価格でも購入できることを考えると、iPhoneは「異常に高い」と感じる人が多いのも無理はない。

中国では、以前からスマートフォン本体を購入し、それから携帯電話キャリアと契約してSIMカードを購入という機種と通話料の分離が行われている。一時期、日本のような2年縛りのコミコミプランもあったが、あまり定着していない。そのため、あまりに高価な機種はどうしても避けられる傾向にある。

また、すでに一部地域で5Gのアンテナが立ち始めている。iPhoneが5Gに対応するのは2020年と報道されているため、今、iPhoneの新機種を購入してしまうと、2年弱でまた新しい機種に買い直したくなる。そのような理由で、iPhoneの買い控えが起きているとも言われる。

中国でもいまだに多いアップルファン

では、中国市場でアップルの人気は下落しているのだろうか。そんなことはない。中国も日本と同じようにアップルファンはいまだに多い。

Tik Tokなどを運営しているバイトダンスの統計センターは、「逆周期」という報告書を公開している。バイトダンスは、中国でポピュラーニュースアプリ「今日頭条」も運営していて、このユーザー情報からさまざまな統計を取っている。

(バイトダンス運営のニュースアプリ「今日頭条」で、2018年の各スマホブランドの記事掲載数。アップル関連のニュース記事は多く、中国の消費者はアップルに強い興味を持っていることがうかがわれる(バイトダンス統計センター「逆周期」より作成))

この2018年の統計をまとめた報告書によると、スマートフォンの需要は頭打ちとなり「逆周期」に入っているという。その中でも注目をされるのが、vivoOPPOといった中国ブランドの躍進だ。現在、中国のスマホ市場の利用シェアファーウェイvivoOPPOシャオミーと続き、アップルは5位まで下がっている。

面白いのは、2018年機種変更をした人のデータだ。アップルユーザー2018年中に機種変更をした人が最も多いのはiPhone 6ユーザーだった。2014年発売の機種で、5年近くになり、さすがに新しい機種に買い換えたくなるのだろう。

(2018年iPhoneから、またはiPhone機種変更した人の機種変更元機種。iPhone 6から機種変更をした人が最も多い。さすがに5年前の機種なので限界を感じているのだと思われる(バイトダンス統計センター「逆周期」より作成))

中古市場の発達で
旧機種から旧機種へ買い替え、
高いアップルへの忠誠度

では、このような人たちがどの機種に買い換えているかというと、圧倒的に多いのがひとつ前の世代のiPhone X、さらにiPhone 8 Plusと続き、iPhone 6sも結構いる。新機種に買い換えた人はiPhone XS Maxの2.7%とごくわずかでしかない。iPhoneからアップル以外に乗り換える人もいて、ファーウェイP20に買い換えた人も1.97%いる。iPhone XS Maxは、もう少しでファーウェイに追い越されそうになっている。

つまり、旧機種から旧機種への買い替えが起きているのだ。スマホ販売サイトでもいまだに旧機種の販売も続いているし、中国は中古市場がよく発達している。

(2018年iPhoneから、またはiPhone機種変更した人の機種変更先機種。ひとつ前の機種のiPhone Xへの乗り換えが最も多かった。最新機種のiPhone XS Maxは、ファーウェイP20への乗り換えをわずかに上回る程度でしかない。つまり、旧機種から旧機種への乗り換えが行われている(バイトダンス統計センター「逆周期」より作成)

スマホブランドで、同じブランドから同じブランドに買い換える「残留率」を比較すると、アップルは57.58%で、ファーウェイやvioを圧倒している。相変わらず、中国市場のアップルへの忠誠度は高い。iPhoneユーザーならお分かりいただけると思うが、一度iPhoneを使ってしまうと、Android乗り換える気持ちが薄れてくる。確かにAndroidのように細かいカスタマイズはできないが、必要にして十分であり、操作がシンプルであることが快適に感じるようになる。さらに、MacBookとの連携も優れていて、MacBookiPadも併用していると、iPhoneから離れられなくなる。

(各ブランドで、2018年に同じブランド機種変更をした「残留率」。アップルの残留率は頭抜けて高く、強い忠誠心を持っていることがわかる(バイトダンス統計センター「逆周期」より作成))

1月下旬、アップルは中国市場でのiPhoneの価格改定を実施した。ローエンドのiPhone XRでは450元下げ、そのほかの機種でも400元前後価格を下げた。それでもまだ高いが、これが刺激となって、各販売サイトでは倍増に近い売れ行きになっている。

「アップル人気が下がった」のではなく
「高すぎる新機種が避けられた」

この好調がどこまで続くかは不透明だが、「アップル人気が下がった」のではなく「高すぎる新機種が避けられた」のが実情だということことがわかる。

アップルから見れば、アップル人気が下がったわけではないのに、中古市場に客を取られて、売り上げが下がっていたことになる。

となると、中国でアップルが取るべき策は明らかだ。新機種の価格を下げて消費を刺激すること。中古市場に客を奪われないように、iPhone X以前の新古機種販売のテコ入れ。そして、誰もが期待しているのが廉価版「iPhone SE2」の販売だ。このような策をタイミングよく取ることができれば、アップル人気が下がっているわけではないので、巻き返しを図ることは十分にできるだろう。

スマートフォンは、優れた機種を
長い間、大切に愛用する時代に

この中国の状況は人ごとではない。日本でも総務省が通信料と端末代金の完全分離を要請していて、スマホの世界に大きな影響を与えることになる。MVNOを含めたキャリアの通信料金を比較しやすくなり、競争が進み、通信料金の低廉化に繋がることが期待されている。しかし、一方で、端末本体は一括またはローンで別途購入する必要があり、買い替え期間が延びることが予想される。つまりは、新機種が売れづらい状況が生まれることになる。

中国のように中古市場が立ち上がって、旧機種から旧機種へ乗り換える人も出てくるかもしれない。いずれにせよ、新機種が発表されると、アップルストアに行列をして先を争って買い求めるという時代は終わったということだ。スマートフォンは、優れた機種を長い間、大切に愛用する時代になる。

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