刑務所同性愛関係となり、養子縁組をした受刑者同士の手紙のやり取りを認めないのは違法だとして、男性らが国に慰謝料などを求めた訴訟の控訴審で、東京高裁(垣内正裁判長)は4月10日、養子縁組は有効だと示したうえで、刑務所の処分を違法とし、男性らの請求を認めた。原告代理人によると、同性愛者間の養子縁組を認めた裁判例は初めて。

1審の東京地裁(林俊之裁判長)は2017年7月、男性らの請求を棄却していた。1審判決が出る前に急病で亡くなった原告の1人(Aさん)のかわりをAさんの両親が受け継いだ。

この日、もう1人の原告男性は東京・霞が関の司法記者クラブで会見し、「(Aさんに)勝ったよと伝えたい。生きてこのときを迎えさせたかった」と涙ぐんだ。

●「ともに助け合い、支え合っていこう」果たされなかった約束

代理人の海渡雄一弁護士らの説明によると、男性とAさんは2014年、刑務所の特別改善指導教育でグループワークを受ける中で親密になった。「(出所後は)ともに助け合い、支え合っていこう」と誓って、2015年5月に養子縁組を結んだという。

社会に出てからAさんと支え合うーー。その約束は果たされることはなく、手紙のやり取りも許されなかった。

Aさんが亡くなった後、男性は寝食もままならなくなってしまったという。そんな中、ある刑務官が「俺たちの体制が間違っていたんだな」と漏らしたそうだ。

「刑務官の中には『人』として見てくれた職員もいました。旧監獄法から現在の法(刑事収容施設法)に切り替わってから、刑務所の待遇はよくなったと言われがちです。しかし、変わったのはうわべだけで中身はまったく変わっていません」と男性は語った。

同性愛関係にある人同士でも養子縁組は「有効」

男性とAさん同性愛関係にあることがわかってから、男性はAさんとは別の刑務所に移送された。2人は手紙のやり取りをしながら支え合おうと話していたが、2015年6月、男性がAさんに信書の発信を申し出ると刑務所が禁止した。

受刑者とその親族との信書のやりとりは禁止できないと法律で規定されている(刑事収容施設法128条)。2人は養子縁組をしていたのに、なぜ「親族」にあたらないのか。

1審は、この養子縁組が、本当に養親と養子の設定を欲したものではなく、刑務所収容中のやりとりの手段を確保するためだけのものだとして、無効と判断した。

しかし、控訴審で、東京高裁の垣内裁判長は、同性愛関係を続ける目的で、同居して生活したり、精神的に支え合ったりするなどの場合は養子縁組が認められると判断した。

●「差別・偏見のない国になってほしい」

今回の判決の意義は、受刑者の権利という側面だけではなく、裁判所が同性愛関係にある人同士の養子縁組を有効だと判断した点にもある。

海渡弁護士によると、同性愛者間の養子縁組を認めた裁判例はこれまでないという。「すべてのLGBTの人たちにもこういう形で家族関係を築くことができたということを示すことができた画期的な判決です」(海渡弁護士)。

男性は「今回の判決をきっかけに、幸せな社会生活を送れるような差別・偏見のない国になってほしいと願っています」と訴えた。

(弁護士ドットコムニュース)

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