韓国には、国家試験や大学受験のために缶詰状態で勉強をするための仮宿舎があることをご存知だろうか? およそ2~3畳の部屋に、机やベッドが備え付けられている「考試院(コシウォン」。第三次韓流ブームにのり、韓国へ語学留学に行く日本の若者も寝泊まりに利用することが多い。しかし昨今は経済悪化に伴い、日雇い労働者なども増えているという。果たして、そんなコシウォンの実態とは……?



◆韓国の仮宿舎“コシウォン”の実態



 韓国にはマンスリーマンションが無く、ワンルームは基本2年契約が条件で、日本円でおよそ50万円以上の保証金が必要だ。この保証金は、退去する際に借主に戻ってくるシステムだが、韓国の経済不況のあおりもあり、貸主が使い込み、返金されない問題も起きている。しかし、コシウォンは、保証金不要、契約も1か月から可能なところがほとんどだ。



 家賃は安いところで、日本円で約2万~3万円ほど。人気の地域や高級物件になると5万円以上といったところだ。部屋に窓やトイレ、シャワーが備え付けられていればマシな方。台所は共同で、ご飯やキムチが常備されている。施設によってはラーメンや卵などもサービスで食べることができる。



 また、光熱費インターネットの利用料も家賃にあらかじめ含まれているので、生活費を浮かせたい学生にとっては、最適な環境といえるだろう。そんなコシウォンの住み心地とはいったいどんなものなのか?



 韓国へ語学留学に訪れたマキさん(仮名・20代)。最近まで、トイレとシャワーが共同の家賃4万円のコシウォンに住んでいた。とにかく安くて、すぐ泊まれる場所を探していたので、学生街としても有名なソウルの新村(シンチョン)のコシウォンを選んだという。



中国人日本人の学生が多かったことと、隣の部屋の声がよく聞こえたのが印象に残っています。それから、友人を招くこともできないし、個室にエアコンが無いので、夏はとっても暑かったです。洗濯をしても部屋干しです……。だから、いつも生乾きでした」(マキさん)



 また、資格試験のために韓国の地方からソウルへ上京し、短期でコシウォンに住んでいた韓国人のダヒさん(仮名・20代)。ご飯とキムチに、共用の洗濯機で使用する洗剤も無料だったという。学生街にあるコシウォンだったため、物価が安いことがメリットだった。しかし、その狭さには辟易していたそう。



「シャワーとトイレは部屋にありましたが、便器に座ったら膝が壁にぶつかりそうなぐらい狭かったです。隣の部屋の声が聞こえるので、電話は屋上に行ってかけていました。それから私の身長が170cmあるので、ベッドがとても窮屈でした」(ダヒさん)



 彼女は、資格を取得してからすぐにコシウォンを後にした。退去予定も3~10日前に貸主に告げたという。



◆経済悪化に伴い日雇い労働者が増加



 このコシウォンを求めて、最近では受験勉強が目的ではない、貧困層の入居が問題視されている。高額の保証金を準備する必要が無いため、即入居を希望する日雇い労働者や病気の高齢者も多いのだ。



 韓国では「非住宅住まい」の人口がおよそ37万世帯に達し、このうちコシウォンには15万世帯が住んでいると推定されている。有名大学を卒業後、大企業公務員になることが「勝ち組」とされる学歴社会の韓国だが、経済低迷により若者の就職難が深刻化している。また、最低賃金を上げたことで失業率も増加した。



 昨年11月ソウルのコシウォンで火災が発生し、そこに住んでいた日本人の男性(50代)が逃げ遅れて亡くなった。死傷者のほとんどが日雇い労働者や近隣で働く露店商人で、年齢は40代~60代だった。建物は古く、スプリンクラーが設置されていなかったという。



 静かな勉強部屋と食事が提供され、低家賃で経済的なコシウォン。昨今は低所得労働者にとって最後の砦となりつつあるが、安全面などの問題は山積みだ。今後は住宅設備を整えることが急務となっているだろう。<取材・文/南沙織>





コシウォンの部屋。非常に狭い