
3月23日、茨城県・つくば市で行われた『つくばScienceEdge』。この大会の中では、高校生が科学に関するアイデアを発表するプレゼンテーションが実施され、受賞チーム3組が選ばれました。 そのうちの一つ、探求指向賞に選ばれたのは、熊本県立天草高等学校 科学部の皆さん。今回はプレゼンした2年生 山下君に、受賞されたお気持ちや研究する中で大変だったことなどについて伺いました。
過去のデータをもとに未来の海水面上昇を予測
天草高校の2人が研究したのは、50年後の熊本県・天草地方の海水面上昇についてです。まず未来を予測するために、過去から現在の推移を調べ、その数値をもとに50年後の海水面を予測。水域の環境を珪藻分析(*1)・陸域の環境を花粉分析(*2)で調べることで、より詳細な分析が行われました。
結果として50年後には12.3cm~34.7cmほど海水面が上昇するだろうということが分かり、多くの砂浜が消失してしまうこと、大雨による土砂災害の多発が予測されることを発表しました。
探求指向賞を受賞した本研究について、代表者の山下君にインタビューしました。
*1 珪藻(けいそう)分析:世界中の海や川や湖に生育している、植物プランクトンを使った分析。珪藻は死んで海底に堆積したものは化石化するため、珪藻化石を使って堆積物が積もった年代や、過去の水温・水深・塩分濃度などを調べることができる。
*2:花粉分析:堆積物を分解し、花粉を取り出す方法のこと。花粉を分析することで、周辺の植生の変遷を復元し、温度変化を計算することができる。
地道に続けた珪藻・花粉分析が評価されて安心した
―― 受賞された感想を教えてください。
発表した感触としては自信があったのですが、質疑応答などで上手く回答できなかったので、その点で自信が無くなってしまっていました。
まさか受賞できるとは思っていなかったので、率直にうれしかったです。
―― 今回受賞された要因について、ご自身ではどのようにお考えですか?
自分たちが見せたかったのは、未来予測の部分でした。そのために地道に珪藻や花粉分析を頑張ってきたので、そういう部分が専門家の方々から評価してもらえたのかなと思いました。自分たちの研究や考え方が合っていたんだと安心することもできました。
―― 受賞を目指して、何か工夫したことはありましたか?
自分たちの研究は、現在起こっている地球温暖化などを題材として取り上げています。先日も長崎市の中心部で海水があふれて浸水してしまう災害が起こりました。発表の中にはできるだけ新しい内容を取り入れたかったので、長崎のことを入れるなど、前日ギリギリまでプレゼン内容を検討しました。
―― この研究はどのくらいの期間行ってきたんですか?
全体の研究としては一昨年の6月くらいから本格的に動き始めました。高校1年生の6月からですね。
地元・天草の力になれる研究を

―― 今回のテーマを選んだ理由を教えてください。
自分たちの住んでいる天草地方は小さな島が点在していて、地形も特徴的。学校の授業でも、天草地方のことを学んでいます。そんな天草地方も、将来温暖化による海面上昇の影響を受けるのではないかと思い、自分たちの研究が何か役に立たないかと考えてテーマ設定をしました。
―― 研究の中で努力した点について教えてください。
自分は珪藻をひたすら研究する役割でした。去年は先輩と2人で研究していたのですが、先輩が部活を引退されてから1年くらい1人で珪藻に関するデータをまとめていたので、とても大変でした。
自分たちの部活は、ある程度自分たちで研究を進めるというスタンスでやっています。分からないことや質問があれば先生に聞きに行きますが、先生も全ての答えを提示するのではなく、ある程度の方針を見せてくれるところまでの指導になります。そのため、今回一緒に研究・プレゼンをした古田さんと2人で何度もディスカッションしながら研究を突き詰めていきました。
具体的には去年の12月まで珪藻と花粉のデータを集めて、データから見られた違和感などについてディスカッション。納得するまでひたすら考察し続けるという作業をしました。
―― 今後の進路について、現在考えていることはありますか?
自分の中では、パソコンで絵を描いたりデザインしたりすることが好きなので、そういう方向へ進みたいと思っています。今回の大会でも、ポスターやスライドレイアウトやデザインを主に考えていました。
天草地方のことを細かく丁寧に探求されているということで、探求指向賞を受賞されたお二人。「天草をモデルにしたこの研究成果をまとめて、ぜひ日本全土に生かす研究にしてほしい」と専門家の先生よりコメントをいただいていました。
天草の美しい景色と歴史を残していくためにも、今回の研究を生かしていけるといいですね。
【profile】
熊本県立天草高等学校(2年)
【写真提供】
つくばscienceEdge2019実行委員会
【参考】
毎日新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190321-00000086-mai-soci

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