開幕からの好スタートは2年連続も…昨年の後半戦はリーグ17位と大ブレーキ

 J1リーグの第6節、FC東京はホームで清水エスパルスに2-1と逆転勝利を収めた。ここまで未勝利の清水が相手なので、想定外の苦戦だったかもしれない。

 主導権は握り続けた。だが後半開始2分に先制を許し、もし同27分に与えた決定機で北川航也に決められていれば、決着しても不思議はなかった。長谷川健太監督は、昨年も古巣相手のホームゲームで完敗していたから、チームの空気が怪しくなった可能性もある。しかし終わってみれば、追いつき、さらに逆転勝利につなげたことで、今後の展開に光を灯す重要な収穫を手にしていた。

 今シーズン序盤のJ1は、まるで昨年のデジャヴだ。6節を終えサンフレッチェ広島が首位に飛び出し、それをFC東京が追う。しかし昨年は両チームともに、後半戦で大失速を経験した。特にFC東京は、後半戦に限れば17位。駅伝なら大ブレーキである。長谷川監督は「30歳前後の選手が増えてきたので、若くてイキのいい選手に出てきて欲しいと考えていましたが、突き抜ける若手を出せなかった」と振り返った。とりわけ後半戦は得点数が最下位に落ち込み、「永井謙佑の故障が大きかった」と語った。

 当然今年のテーマは、攻撃面で新戦力を取り込み、シーズンを乗り切るバリエーションを構築することだった。幸いシーズン開幕から急成長の久保建英がスタメンに食い込み、逆にチームを牽引するようになった。指揮官も「この年代の急成長には本当に驚かされる」と漏らすほどの、嬉しい誤算だった。一方で上積みとして期待していたのが、新外国籍選手の韓国代表ナ・サンホとジャエルである。

 そして長谷川監督は、攻勢に試合を進めながら1失点が重い展開となった清水戦で、後半15分に2人を同時にピッチに送り出した。前節の浦和レッズ戦(1-1)では、勝利目前の後半アディショナルタイムに同点弾を食らったが、そこは「ホームなので仕掛けの姿勢を貫きたい」と割り切った。ボランチの高萩洋次郎を下げ、ナ・サンホを左MFに組み込み、東慶悟が中央へ移動。永井に代わりジャエルが入った。

清水戦の“想定外の敗戦危機”から、新たな可能性を引き出すチャンスを得る

「ナ・サンホは代表戦でチームを離れていたが、ポテンシャルに賭けたいと思った。ジャエルは練習からコンディションが良かった」(長谷川監督)

 結局、ナ・サンホは同点ゴールを生み、ジャエルは決勝点をアシストする。ただし、それ以上にナ・サンホの攻守にわたるアグレッシブな姿勢が貴重なアクセントになり、東を中央に配した攻撃強化のオプションも機能することが確認できた。

 昨年後半はマンネリが否めず、チームの鮮度が落ちて相手の分析を容易にした。しかし今年は新戦力が代謝を促し、必然的に戦術の幅を広げている。想定外のピンチは、可能性を引き出すチャンスへと変わった。(加部 究 / Kiwamu Kabe)

チームを牽引するMF久保建英(右)【写真:Getty Images】