昨年4月、およそ10年ぶりに開催された南北首脳会談の記念イベントとして、北朝鮮の首都・平壌では韓国芸術団の公演が行われ、金正恩委員長と李雪主(リ・ソルチュ)夫人が鑑賞した。夫人がK-POPアイドルら出演者に直接歓迎のあいさつをしたことも話題になった。

 それから7カ月後の秋には、その様子を収めたDVDが北の市場に出回るようになった。価格は3万北朝鮮ウォン(約390円)から5万北朝鮮ウォン(約650円)で売られていた。公演のすべてが収録されているものの、正恩夫妻の登場シーンカットされている。

 このDVDが政府の許可を受けて製作されたものか、ヤミ製品かについては不明だが、北朝鮮は、韓流やK-POPを「退廃的で色情的かつ醜悪な内容を反映した絵、写真、図書、歌、映画など」とし、取り締まりの対象にし、たびたび行われる風紀取り締まりキャンペーンでも必ずやり玉に挙げていた。DVDの流通は、韓流が解禁されたのかと思われたのだが、やはりそうではなかった。

 昨年12月、首都・平壌市の郊外で行われた公開裁判では「外部映像物販売」の容疑者に死刑判決が下された。それからは韓国芸術団DVDの販売や視聴に対する取り締まりが始まったという。

 「正恩氏の意向かどうかは分かりません。というのも末端の保衛部(秘密警察)の係官は、韓流の取り締まりを手ごろな小遣い稼ぎの手段としているからです。それも韓流だけではなく、許可されている中国映画でも『吹替版なら問題ないが、字幕版はダメだ』と難癖を付け、有無を言わさずパソコンを没収し、パソコンの購入金額の3分の1の罰金を要求するのです。住民は『外国人セリフ朝鮮語の音声になっているのと字幕になっているのと何が違うんだ』と、当局のダブルスタンダードに閉口しているのです」(北朝鮮ウオッチャー)

 パソコンDVDを見る層はいわゆる小金持ちだ。こうした北朝鮮の取り締まりは、文化退廃を懸念する正恩氏への忖度で行われているわけでなく、上司からの上納金要求に、末端の係官はやむなくヘリクツをこねて市民から収奪しているのである。

 こうした当局の横暴に抗議ができない北朝鮮市民が哀れだ。