3月中旬から下旬にかけて訪問した何社かの社員食堂が、いつになく閑散としていました。理由を聞くと、年度中の有給休暇の残りを一気に取得している社員が多いから、と異口同音の答えが返ってきました。4月の働き方改革関連法施行を前に、有給休暇取得を奨励したり、実質的に義務付けたりしていたのです。「働き方改革」を意識した動きが着実に広がっています。

時間切れの会議や、見せかけの合意に陥っていないか

 働き方改革推進の観点から、よく受ける質問に、「会議時間を短縮して、かつ、会議の合意度を高めたい」というものがあります。勤務時間が減少し、人は増えず、時間当たりや1人当たりの業務量が増大する中、会議の改善に目を向ける企業が多くなってきました。

 そうした企業で、普段行われている会議の状況を聞いてみると、「情報提供だけの会議」「指示命令を聞くだけの会議」「業績確認だけの会議」など、必ずしも会議を実施しなくても達成できる目的で会議を招集していることが多いことが分かってきました。「合意形成する」ということに会議の目的を絞ると、会議の招集件数が格段に減少します。

 合意形成の会議についても、従来は時間無制限で会議をすることがざらに行われていました。しかし、今日では、勤務時間に限りがあることが認識されてきたため、一定時間内に合意形成することの重要度が増しています。

 筆者は20年来、リーダーシップスキルに関わる演習や企業サポートを実施する中で、一定時間内に合意形成するためのスキルを伝授してきました。いまだに「一発で合意形成する手法」は開発できていませんが、「同じ手順を3回繰り返すと、たいがい合意形成できる手法」は開発することができ、多くの企業で活用していただくようになりました。

 その方法が「4つの質問による合意形成手法」です。

4つの質問で実現する合意形成手法

 そもそも、会議が時間切れになってしまうのは、無秩序に議論を応酬させてしまうからです。たいていの場合、賛成派と反対派が応酬し合い、紛糾してしまいます。それを繰り返すと会議そのものへの諦めの気持ちが生じて、会議で多くの参加者がものを言わない「見せかけの合意」に陥ってしまいます。秩序立てて、深刻な課題から順に、優先順位をつけて議論していけば、時間内に合意形成できる確度が格段に高まるのです。そのために「4つの質問による合意形成手法」が役に立ちます。

 例えば、方針説明者が、ある方針を説明したとします。会議の進行役は、まず、「洗い上げ質問」をします。「ただいまの方針について、気になることあったら遠慮なく出してください」「反対意見も歓迎です」「よいご意見ですね、さらにありませんか」というように、異論や懸念を洗い上げていきます。1時間で合意形成する予定の会議なら、10分もあれば、たいていの異論や懸念は出尽くします。

 大事なポイントは、「洗い上げ質問」の段階では異論や懸念を洗い上げるだけで、出された異論や懸念に対して、方針説明者も進行役も他の参加者も、決して反論しないということです。出てきた異論や懸念にその都度反論するから、いくら時間があっても足りなくなるのです。

 異論や懸念が出尽くしたと思ったら、進行役は「掘り下げ質問」に移行します。「ただいま出された異論や懸念の中で、どれが最も深刻ですか」「どれから先に議論したいですか」というように、出された異論や懸念に、深刻度順に優先順位を付けていくのが「掘り下げ質問」です。

 そして、最も深刻な問題が「その方針で行うには、人手不足」ということであれば、「人手の問題が多少でも解消されれば、賛成ですか」、最も深刻な問題が「その方針では、多忙でスケジュールが組めない」ということであれば、「スケジュールを引き直したら、少なくとも反対しませんか」というように、ある前提を置いて方向性を示唆するのが「示唆質問」です。最も深刻な異論や懸念から順に「示唆質問」をしていくと、3つ目くらいのところで、それ以上議論しなくてもよいだろうという状況に至ります。

 示唆質問によって、主立った異論や懸念が解消されたら、最後に「まとめの質問」として、その方針を実施することでよいかを全参加者に問い、合意を得ればよいのです。

 つまり、異論や懸念を洗い上げて、掘り下げて、深刻なものから順に解消していくだけで、合意形成できてしまうのです。働き方改革による生産性向上のために試していただければと思います。

モチベーションファクター代表取締役 山口博

長引きがちな会議、短時間で終わらせるには?