現役時代の職業によって、定年後の経済力、生き方はどう変わるのだろうか。職業別に「リアルな老後」を紹介しよう。5人目は「沖縄赴任→移住」の佐藤俊彦さん(仮名)の場合――。(全5回)

※本稿は、「プレジデント」(2018年11月12日号)の掲載記事を再編集したものです。

■悠々自適で満足度「高」、最大の悩みは高騰する住居費

「きっかけは定年退職前の最後の赴任地が那覇支社だったから。それが6年前。以来、沖縄の生活に完全にハマってしまいましたね」

大手インフラ企業で3年前まで勤務していた佐藤俊彦さん。宮城県出身の佐藤さんは、定年退職後、ゆいレールのおもろまち駅から徒歩10分弱の場所にある那覇新都心の3LDKの賃貸マンションを契約。妻と2人で移住した。

現在は公的年金と企業年金を合わせた月30万円以外に収入はないというが、悠々自適の沖縄生活は満足度がかなり高いという。その理由は?

「生活費が安いんですよ。まず気候。3月から11月までは半袖で過ごせるので、値が張る冬服を買うことが少ない。加えて沖縄は自動車税が安い。県民の平均所得が低いからか外食しても3000円台で満足できる店が揃っています。東京ではありえない水準ですね」

佐藤さんは、沖縄に住んだことで趣味が一気に増えた。

「もともとゴルフが好きでしたが、それに加えて沖縄は自然と触れ合えるので趣味が増えました。マリンスポーツにトレッキング、さらに沖縄の文化に興味を持ち、三線(さんしん)も始めました」

また、沖縄には「模合(もあい)」という独自の金融文化があるという。

「模合は複数人が一定額の金を出し合い、メンバーが順番にプールされたお金をもらうという仕組みです。私も趣味のグループで模合を組み、毎月1万円を払っています」

積極的に沖縄に溶け込もうとすれば同世代の仲間はすぐにできるようだ。生活費も安く、沖縄移住はメリットだらけにも思えるが……。

「実は不動産価格がこの3年で2倍近く高騰しているんです。那覇市内の3LDKのマンションは4000万円近くにもなり、うちなー(地元の人)にはとても手が出せない価格。移住するならばマンションを買う選択肢はないと思ったほうがいいですね」

その背景にあるのは、インバウンド需要を狙ったホテル建設ラッシュによる地代の上昇だ。地元不動産業者いわく、このバブルはしばらく続くという。

また、懸念される基地の騒音は那覇市内にいれば「気にならない」と佐藤さん。だが、先日の知事選を例に出すまでもなく、時の政治に左右されやすいリスクもまた、沖縄移住にあたっては考慮に入れたほうがいいかも。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/yoshiurara)